R.I.P

メイルストロム

Monologue

 興味のあるものしか、知ろうとしない、見ようともしない。それが私達人間です。


 だからこそ、ヒトは幸せに生きられるのでしょう……ええ、そうです。私だってその一人のですから。

 それ故にこの牧歌的な日々が、明日も変わらず続いていくと信じていたのです。日の出と共に目を覚まし、家畜の世話をして家族で食卓を囲う。そんなありふれた生活が、そこにあるものだと信じて疑わなかった。


 けれど、それこそがだったのです──

 私達が愛した平和な日常は、本来続くはずのないものでした。

 有史以来、人間が「平和な生活」を営めたのはたったの年間しかなかった。三千八百年もの歴史の中で、たったソレだけの間しか平和な期間──戦争のない期間を築けなかったのです。

 そしてあるモノは言っていました。

 人間界における「戦争」とは、自然界でいうところの「生存競争」と同義であると。故に「平和」な状態というのは、生物としてあり得ない状態だとも述べたのです。


 私は──……その意見が間違っているとは言いません。

 ですがただ一点、思うところがあるのです。

 自然界における生存競争とは、多種多様な生命が生き残るための競争。決して同種族間で殺し合う事ではない。だというのに、私達人間は人間同士で争い滅ぼし合ってきました。


 ──……争う理由はその時々によります。

 宗教的対立。異民族との対立。政権打倒。探せば他にも理由は出てきます。こんな些細な事がきっかけになったのかと、呆れてしまうようなものもあります。


 そして、私が知った戦争の理由はその

 まさかそんな理由で戦争を、内戦を引き起こしていたとは思いませんでした。きっと、戦場にいた誰もがそうなのです。争う理由、その原因がなんだったのかなんてものは、いとも簡単に忘れてしまうのですから。

 そうして気付いた時には全てが失われ、燃え残ったモノは復讐の火を灯すのです。燻る彼らは振り上げた拳の落とし所を見失い、際限のない争いへと堕ちていく。


 ──それ故に思うのです。


 もし私がこの事実を皆に伝えたら、一体かと。


 ──故 ラズリー・バンディングの手記より一部抜粋。











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