ダンジョンに引きこもったぐうたらな妹たちが成長期すぎる

ひたかのみつ

第1話 ぐうたらで育ち盛りな妹:メアリ

 皆さん、育ち盛りな異世界の妹はお好きだろうか?


「お兄ちゃ…… ねぇお兄ちゃん!! もう~、この前教えてくれた風魔法で飛ばしちゃうよ! 」

 元気な声で起こしてくれる、魔法で脅してくる妹。

 素敵な一日が始まりそうではなかろうか?


 いらない? 妹より姉の方がいい?

 その意見も分かる。とてもよくわかる。姉もいいよね。

 なにせ俺も、この世界に転生するまで、知らなかったのだから。

 異世界の妹がどれだけ素晴らしく、どれだけ成長期なのかを。



 ある日、俺:祖田そだ隼人はやと(25歳)は姿そのままに、異世界に転生した。


「ここは、どこだ? 」


 目を開けるとそこはまるで、ゲームの中のような中世/西洋風の住宅の中だった。

 箪笥たんすもベッドも無垢むくの木材を基調とした素朴そぼくな内装で、窓辺にはレースのカーテンがかり、小さなテーブルの上には花柄はながらの花瓶、本、それからガラスの水差しとコップがセットで置いてあった。


 変わったことと言えば――

「お兄ちゃん? どうかしたの? 」

 転生直後、俺の周りには8が居たことぐらいだろう。


 どの妹も、個性的でとてもとても可愛らしく、記憶を無くした(ことになっている)俺にも、優しく接してくれた。

 前世では兄弟が居なかった俺は、その恩に報いようと、一生懸命世話を焼き、異世界の知識をもとに、魔法を教え込んだのだが……


「たった3か月でこんなに堕落だらくして、ぐうたらな妹たちになってしまうなんて」

「えぇ~なぁに? どうかしたの~? 」

「ダンジョン上層、かつてボスの部屋と呼ばれた大扉の空間が、完全にリビングだな…… 」

 ハヤトは、地上から持ち込んだ鞄を、の枕元に置きながら苦笑いした。


 一番年上の妹:メアリは19歳で、長く金色の髪が印象的だ。瞳は赤く透き通り、穏和で緩んだにこにこの笑顔をいつもしている。絵に描いたようなモデル体型で、胸はかなり大きい。健康優良児と言ったところで、ウエストは細いが、美しい脚線美を誇る太ももの肉付きはしっかりしている。

 そんなメアリがいつも横になって、スカートが太ももの上までめくれあがっているものだから、兄としてハヤトは少し心配になる。



 メアリの趣味はもこもこふわふわの家具集めだ。天井から棚の小物まで、彼女によって厳選されたパステルカラーの調度品で埋め尽くされている。


 メアリは、大人が横になっても十分余裕のある巨大なクッションに、仰向けになりながら、緩み切った表情でハヤトを見上げ

「お兄ちゃん、やっぱりこの部屋にして良かったよ。 広いし、地上に近いから情報もタイムラグ無く手に入るし」

「まるで普通に物件を選んだみたいな言い方を…… 」

「いやぁ、もともとダンジョンの中は一年を通して気温が安定しているうえに、適度な湿度もあるしさぁ。 ぜんぶお兄ちゃんが教えてくれたんだけどね」

とメアリはてのひらをゆらゆら振りながら喋る。


 ハヤトは鞄から雑誌や本を取り出し、かわりにメアリが討伐した魔物の魔石や牙を詰め込んでいく。

「メアリのために、中層に行くための階段を新設したのは、大変だったなぁ」

「それはありがとう~、きっとボスドラゴンも喜んでるよ~ 」

 メアリは、にぎにぎとクッションをいじりながら笑っている。

「自身からとれた超一級品の素材を、ただくつろぐ為のクッションにされても、ボスは喜んでくれるのだろうか…… 」

 火にも水にも雷にも負けない、最強のクッションである。




 ハヤトは、しばらく作業をして

「よし、荷物整理は完了! 」大きく背伸びをした。

「お~、やるねぇお兄ちゃん」

 メアリは相変わらずクッションでごろごろしていたが、読んでいた雑誌をぱたん、と閉じた。

「それじゃあ、メアリ、始めようか」

「おっけ~、今日こそは新魔法、完成させちゃうぞ~ 」

 育ち盛りで穏和おんわな妹、有名冒険者『メアリ』への魔法レッスンが今日も始まる。







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