特殊部隊の襲撃

「ふ〜ん、逸材ねぇ」


「みんな! 緊急事態! わたしの察知スキルに反応だよ! 砦のまわりに武装兵がいっぱいいる!」

バサバサっと開け放たれていた大きい窓から入ってきた人影。

手に羽の生えた獣娘、いや鳥娘か……耳や羽毛の模様からするとミミズクの類のようだ。


「とうとうきたか! 迎えうつぞ! 野郎ども、戦闘準備! 配置につけ!」

リオの号令で雄叫びをあげる獣娘たち。


「戦闘!? ミャウ、どういうこと!?」

戦闘なんてものとは全く縁のない一郎は耳を疑っていた。

「実はさ、この国の兵隊らしいのと一悶着あったんだよね。でも大丈夫!」

「女の子を刃物で襲おうとしていた男を撃退したところ、犯人と間違われたのですわ」

慌ただしく行動する獣娘たちに続いて、ミャウもまたその身を踊らせる。


雲間に月満ちる夜空、限りなく静寂を保ちながら、銃器など特殊装備で武装した隊員たちが綿密に練られた作戦のもと行動を開始していた。


「各隊作戦行動配置状況を報告せよ」

「チームアルファ配置完了」

「チームデルタ配置完了」

「チームガンマ配置完了」

「チームイプシロン配置完了」

「チーム…………」


各部隊の配置状況が次々と確認されていく。


「全部隊配置確認完了」

「全部隊配置完了 作戦指示願う」

「報告確認完了、鎮圧作戦行動開始」

「全部隊作戦行動開始 作戦行動開始後、状況報告せよ」

ヘッドギアに装着された通信機で、現場と本部との間で滞りなく情報が交換される。


各部隊、隊員たちが銃器をかまえ足速に目標へと歩みを進める。

音もなく忍び寄る影。

その影が重なるたび、隊員が闇へと消えていく。

前を進むものは誰もその事実に気づかない。


「第一目標地点到着」

「報告確認、鎮圧作戦を実行せよ」

「了解、これより行動を開始する」


斥候を務める隊員が前方の状況を確認すると、後ろを振り返ることなくハンドサインで後方へと情報を送る。

銃器の安全装置を解除後、散開、目標に向けて進め、だ。

が、後方隊員の誰一人も一向に行動を開始する気配がない。


不安を覚え振り返り、後方を確認する隊員。

月明かりに照らされた静寂はその隊員を一層不安にさせた。

背後から重なる影。

面体越しの頬に、ふくよかで温かで幸せな感触を感じつつ、首筋に衝撃を受けると闇へと連れ去られていた。

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