砦の獣人美少女たち
「ミャウ! こんなとこにいたのかよ!?」
「ずいぶん探したのですよ? ミャウさん」
「自分勝手な行動がすぎるのです〜」
「ボクを置いてくなんてひどいじゃん!」
「で……この男、誰さ」
唐突に猫耳少女の周りに現れる獣耳の少女たち。
耳、しっぽ、毛色、タイプの違う美少女たちが立ち並ぶ。
みな、一様に目の前の男を警戒してるようだった。
集まっていた猫たちは散らすように逃げていた。
どんだけいるんだ!?
十、二十、三十、四十、もっといそうだ。
「この人が食べ物をくれたんだ。すっごい幸せ。でもできればもっと食べたいにゃ〜」
「なんだって!?」
「なんですって!?」
「なに〜!?」
「ほんと!?」
「それは事実か?」
「ほんとにゃ!」
「ほほう……いますぐ食い物を用意しろ。持ってこないと、骨も残らんと思え」
瞬時に一郎の背後に立つ少女。
鋭く伸びた爪が一本、つぷりと一郎の首筋に触れる。
「は、ははは、はい! すぐに買ってきます!」
怯えたハムスターのごとく苑内から駆け出す一郎。
セビンイレビンに駆け込むとカゴ十個分におにぎりやサンドイッチ、缶詰などなどを詰め込んで、ホットスナックをすべて注文、キャッシュカードで支払う。
我に帰れば青ざめること間違いなしの金額だ。
一郎の収入はとても自慢できるものではないが、命を取られるよりはマシと思うしかない。
「買ってきましたー!」
苑内の出入り口、少女たちの耳には届かないだろう距離から叫ぶ一郎。
あれ? あんなにいた娘たちがいない。
「きみ一人だけ? 他の子たちは?」
「黄身じゃないよ。あたしの名前はミャウ。みんなは待ってられないって先に戻っちゃったにゃ」
きみ、と聞かれて卵の黄身と勘違いするあたり、なかなかの天然娘なのかもしれない。
「じゃ、じゃあ、これは?」
両手に持ったたくさんの袋を持ち上げる。
「持ってきてくれる?」
「え? それってあの中に入るってこと……」
つまり城壁の内側だ。
「もちろん!」
「うそ……」
ボトボトと手から袋が滑り落ちる。
一郎はミャウに連れられて城砦の中、食堂と思われる場所にいた。
ここに来るまでの間、何人もの獣娘を見た。
鼻歌を歌いながら掃除や洗濯をするもの。
とんでもない身体能力で戦闘訓練している者に観戦している者。
古びた太鼓を叩くものとリズムに合わせて踊る者。
まるでヨガのようなおかしなポーズでおしゃべりをする者。
屋根に寝そべっている者などなど。
法螺貝笛が鳴った途端、たくさんの獣娘たちが食卓についていた。
みな、一様によだれを垂らすような顔をしている。
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