実はモデルであり声優であり絵師であり小説家でありVtuberの俺、配信切り忘れたらすべて同一人物だとバレたぁぁぁぁぁ!!!!!
佳奈星 (Kopfkino.)
第1話 配信事故(1/2)
まったく回らない頭。
それでも踏ん張って、腹から最後の声を出した。
「100回記念、お疲れ様でしたー!! これからも
マイクのノイズキャンセリングが息切れのホワイトノイズを排除してくれる。
あとは天才的な演技で、今日も視聴者が楽しいまま配信を終えようとする。
しかし、コメント欄を見て、さすがにヤバいなと思わされた。
[コメント欄]:
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄❖
>“おもろかった!”
>“五条先生おつかれ様~”
>“お疲れ様……てかほんとに疲れてない?”
>“ゆっくり休んでね”
>“次も楽しみにしてます”
❖____________________◢
――五条蘭。
俺がVtuberとして配信活動している名前だ。
キャラクターの立ち絵があって、リアルの俺の表情は見えないはず。
疲れを見せたつもりはなかったが、一部の視聴者には気付かれている様子が伺えた。
申し訳ないと思いながら、急いで配信終了ボタンを押した時のことだった。
[System Error:
Desktop was forcibly changed due to a glitch]
スクリーンに映るシステムウィンドウ。
急によくわからないメッセージが表示された。
店員に性能良いよと言われるがまま買った、UNIX系OSのPCなのだ。
こういうメッセージは今までにもよく出てきたが、残念ながら俺は英語に弱く、読めない。
動画配信は閉じている様子だし、そういうこともあるか――と、無視をすることにした。
「ふぅ……妹の勉強見てやらないと……な」
いつものように、俺は妹へチャットを送った。
[コメント欄]:
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄❖
>“あれ?”
>“五条先生妹いるんだー”
>“これって……配信切り忘れ?”
>“おいおいおいおい”
❖____________________◢
「おっと、これ外さないと……後の会議でバレる」
そう言って、PCに接続されていたマイクを外し、もう一つ置いてあったマイクへと変える。
俺のマイクには、ナチュラルボイスチェンジャーと呼ばれる、少しだけ声色を変えるものだ。
「念のため、カメラも――」
――万が一を防ぐためにと、カメラを外そうとしたその時だった。
部屋にコンコンとノックがかかる。
「お兄ちゃ~ん?」
「ああ、今開ける」
部屋の鍵を解除し、扉を開けると、そこには美少女がいた。
前髪が長く、地味な俺とはまるで違う。
天使のような妹……
「もぅ、いつも何こそこそしてんの!」
「ごめんごめん」
「まぁ私にも外せない用事あったし、許す!」
「良かった……ところで、外せない用事?」
「五条先生の配信見てたの!」
目を輝かせて言う妹に対し、俺はわざとらしく首をかしげて見せた。
……内心の高揚を抑えつけながら。
「もしかしてお兄ちゃん、知らないの?」
「いやぁ、ネットには疎くてさ……PCも変なの買っちゃったし」
「んもぅお兄ちゃんったら、おくれてるなぁ……」
[コメント欄]:
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄❖
>“き・り・忘・れ・事・故!!!”
>“ヤバいヤバい、早く気付いて~”
>“なんか声違くない? 五条先生っぽいけど”
>“え誰、このイケボ!? マヂムリ死ぬ”
>“妹キターーーーーー!”
>“名前乗ってるのやべぇだろ”
>“なんか妹ちゃん、五条先生ファン?”
>“五条先生、バリ隠してるしwww”
❖____________________◢
妹に対して、俺が五条蘭であることは内緒だ。
俺は、このオタクな妹のために活動している。
そして妹の推しとなるべきVtuberは偶像であるべきだと思うから。
そこに俺……
「こらこら、勉強も大事だからな?」
「配信終わって、すぐ閉じたもん」
「そっか。翠はえらいな」
「えへへ~」
かわいい。
今日もうちの妹は天使だった。
「じゃあ、一時間は勉強するからな?」
「はぁい。スマホ禁止つらいけど、頑張る!」
そうして……俺は妹の部屋へと着いていくことにした。
[コメント欄]:
◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄❖
>“めちゃくちゃ優しいお兄ちゃんじゃん”
>“ちょっと待ってこの声、二条ロンじゃない?”
>“平和な家族って感じだったね”
>“……
>“こんな声、確定だろ”
>“五条蘭=二条ロン!?”
>“祭りじゃ祭りじゃ……”
>“トレンド1位になってる!”
>“誰か本人に報せてあげてぇぇぇ!!!”
>“推しが推しだった、死ぬぅ……”
❖____________________◢
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