第22話 防衛戦① 開幕
「団体でぞろぞろと――、狙い撃ち易くて大変助かりますわ。」
何としてでも初の領土奪還を実現すべく、防衛専門とした人員以外は全て攻勢部隊へと回されていた。その為、限られた人員だけで王都へと続く要所に築かれた要塞の防衛に当たっていた星宮達であったが、そこへ飛行タイプの魔族を主力とした急襲部隊が接近してきていた。
塀の上へと登った防衛部隊の兵士と高校生たちはそれを絶望的な面持ちで見ていたが、星宮だけはいつもと変わらない柔和な笑みを浮かべたまま、前へと進み出る。そして、星宮が扇を持った手を大きく振ると、周りに無数の魔法陣が出現する。
「それでは、まずはご挨拶を……。開幕の花火は美しく、派手でないと見応えがありませんよね?堕ちなさい!」
無数の魔法陣から打ち出された光弾は、反応する間を与えずに魔王軍へと降り注ぐ。手脚を打ち貫かれた多くの魔族兵たちが高度を保てずに墜落していく。
「反応が遅い――ですわね。そんなことでは戦場を生き抜けませんよ?」
そのまま二射目、三射目が放たれ、更に魔王軍の被害が拡大する。
「……あら。流石にアウトレンジからの砲撃だけで殲滅、とはいかないようですわね。
まあ、それなりに数は減らせたのでよしとしましょうか。」
四射目まで来たところで、魔王軍側も光弾を防げるレベルの魔法障壁を前方に張りだす事に成功する。
周囲でそれを見守っていたもの達は、星宮の圧倒的な火力と魔力に驚きを隠せない。
「まさか……。これ程とは!」
ソルダリア王国に居るどの魔術師にも到底実現し得ないその光景に、防衛部隊の人員は恐れおののき、そして星宮に対する畏怖が深く刻みこまれる事となった。
また、同級生たちにも自分との力の差を自覚させる事となる。女帝とは生まれながらにして女帝。生まれの、そして才能の差は異世界に来ても決して縮まる事は無く、更に広がっていくものなのだと。
「川崎君、正親君、溝ノ口さん、春奈さん。貴方がたは本部前に陣取って防衛を。上手く連携して何とか守り切って下さい。」
「お任せを!」「任せろ!」「……はい。」「わ、わかったわ!」
「吉田さんは外れの尖塔に陣取って援護を。貴女の射程であれば問題なく届くはず。要所から離れているので、魔族軍からの攻撃は薄いはず。
ただ、数名だけでも護衛に就いて頂けますよう、お願い致します。」
「分かったわ。」
「騎士団長。ここには、最低限の戦力だけを残して、防衛の準備を。」
「承知致しました。ホシミヤ様はどうなさるおつもりで?」
「防御を抜けないと安心しているあの愚か者たちに、もう一段階上の攻撃を加えてから、防衛に回ります。
私に護衛は不要ですので、他へ回して頂いて結構ですわ。」
「は!承知致しました!宜しくお願い致します!」
流れるように指示を下す星宮に、本来なら全体の指揮をとらなくてはならない筈の騎士団長すらも素直に従って動く。
「さて、次の一撃は……。
そうですね。管理局の白い悪魔でも見倣ってみましょうか。」
そう言って星宮により生み出された極太の閃光は魔法障壁をも貫くと、そのまま多数の魔族たちを飲み込んでいった。
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