ふたりぼっち

@ashikusao1212

第1話

春が来た、新しい季節、新しい匂い。

新しいのに最後になる年、そういう物もある。

今年で高校3年を迎える友美は、大きく息を吸い込むと、脳いっぱいに教室の空気を溜め込む。

普通は胸に入れるものだが、そこは頭の中に循環させるつもりで一気に胸を通過させる。

教室に入ると親友でもある優子が笑顔で抱きついてきた。

「友美ー、また一緒のクラスで、卒業まで一緒だねー」

猫みたいに大きな目がクリクリっと動き女の私から見ても優子は可愛い。

同性なのに少しドキドキしてしまう。

優子とは子供の頃からいつも一緒だった。

家が近所ということもあり、2人で一緒に撮った写真は家族と撮った写真より多いかもしれない。

彼女とは、お揃いの服、所謂双子コーデというのもよくした。

同じ髪飾りをつけペアルックで街を歩く。

顔は全然違うが後ろから見ると双子だとよく勘違いされた。

身長も変わらない所がそれをより1層際立たせた。

幼少期は2人とも同じものを欲しがった。

友美が持っているものを欲しがるのではなく、何故か同タイミングで欲しくなってしまう。

例えば一緒にキャラクターショップに行くと、手に取ろうとしたものが同じで、手が重なってしまう。

よく同じ本を手に取ろうとして恋に落ちる、漫画やアニメのような事が頻繁に起こった。

私達は幼稚園、小中高と、ずっと同じクラスだった。

教師は、クラス変えなどの時は、揉め事が起こらないように、犬猿の仲の様な人間は別々のクラスにする。

だが、仲の良い生徒は一緒のクラスに入れることが多い。

その所為もあってか、私達はいつも同じ思い出を共有した。

お泊まり会なんてものは、常日頃から行っているので、林間学校等のイベントも普段と変わらない雰囲気で行うことが出来た。

むしろ私達の仲がよすぎて、他の生徒が立ち入れない、そんな状況も多々あった。

そして最後の高校生活、大学に行くか、何になるか、そろそろ決めておかないとまずいのだが、そこも何故か2人揃って決まっていなかった。

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