5人の探偵

夏川文明

第1話 登壇

ステージには照明があたっていた。

レンガ模様がプリントされた室内セットの壁には、ヨーロッパ風の小さな洋館を描いた絵画がある。洋館の庭には桜の木々があって、家族らしき人々が夕食の準備をしている遠景が描かれていた。

いかにも安っぽい板で作られた演劇用のセットに、無防備なまま掛けられているくらいだから、名のある画家の作ではないだろう。

壁の前には同じく、アンティークには見えるものの、そう高価ではなさそうなカウチとテーブル、木箱もいくつか置かれている。

ステージを臨む千席以上の客席に人影はなかった。

ただ、最前列の真中の席に座る、古めかしいソフト帽をかぶった男のほかには。

彼は、ステージ上からのピンスポット・ライトに照らされていた。

彼は微動だにしない。死体だからである。

その死体を見下すステージの袖から、洗練された黒いスーツ姿の男が歩み出て来た。叶井三樹夫である。

壇上にやって来た叶井は、座席の死体の真向かいで立ち止まった。男が死んでいることが一目で判る程度には、叶井はキャリアを積んだ探偵だった。

「What the hell is that(こりゃなんだよ?)…」

20年、アメリカで暮らしてきた叶井にとって、特に独り言は英語のほうが自然だった。

だが、叶井の呟きに応じる日本語が聞こえた。

「すみません。依頼人の方ですか?」

叶井が声のほうに顔を向けると、ステージの反対側の袖から、やはり黒づくめのスーツに赤いネクタイの中年の男・山崎耕平が現れた。着ているスーツは叶井のそれとは違って、年季の入った古い背広のようだ。仮にも洗練された着こなしとは言い難い。

山崎は、叶井と同じく客席の男に目をやって、それから叶井に視線を向けた。

「依頼人ではなさそうだな。どちらさんで?」

無表情な山崎の質問に、叶井は両手を広げて肩をすくめる。

「日本人はこれだからな。まあ、おれも日本人だけど。アメリカじゃあ、というか国際的には、初対面の挨拶はまず自分から名乗って、こうやるんだよ。ハーイ、おれは叶井三樹夫。みんなはミックって呼んでる」

叶井は山崎に手を差し出した。

山崎は、奇異なものでも見るように叶井の握手を一瞥すると、少しの間を置いてから顎を引くだけの会釈を返し、無表情のまま自己紹介をした。

「私は、探偵の山崎耕平。元は要人警護の警察官・SP。当時からデカってあだ名で通ってる」

「見るからにデカっぽいよな」

「デカは赤いネクタイなんて締めない」

「オーケイ。そうか、あんたはSP出身だから、そのスタイルを貫いてるってわけか。いまは探偵業?日本の探偵は免許がなくても、届出だけで営業できるんだから楽でいいよな」

「そうでもない。武器も持てないし、アメリカのように報酬も高額じゃない」

「あはは。おれだって日本にいれば銃は持てない。しかし、この事件でオファーされた報酬はアメリカでもあり得ない金額だよ」

「こんな奇妙な殺人事件を解決しろって依頼だ。それに警察じゃなく、わざわざ探偵を呼ぶからには、だいぶ厄介な事情があるはずだ。カネでも積まなきゃ誰も引き受けないだろうよ」

客が見えない舞台に立って会話を続ける叶井と山崎は、リハーサル中の俳優のようだった。

一間あって、年嵩の山崎が意外そうに「ちょっと待った…あんたも探偵か?」と叶井に尋ねる。

叶井が肩をすくめる。

「まあね。おれは報酬に釣られて来たわけじゃないけどな」

「私もまだ引き受けるとは言っていない。依頼人がここで正式に詳細を伝えるというから来たんだ、もっぱら好奇心でな。しかし、ほかにも同業者が来るとは聞いていなかったが…」

「拙者も聞いてはござらん!」―と、そこに別の声が割り込んだ。「ほかにふたりも探偵がいるとは!」

叶井と山崎が、声のするほうを見た。

客席の一番後ろ、劇場のドアを開けて、若い男がステージに向かって歩いてきた。

男は作務衣に洋風のマフラーをまとい、腰の帯には木刀を差している。

「まさか、君も探偵なのか?」

山崎が呆れたような顔をして若い男に聞いた。

「拙者が探偵に見えぬと申されるか?」

「失礼ながら、その風体では探偵というよりも、剣道の師範だな」

「拙者は、代々武家の家に生まれた武道家でもある」

叶井は舞台の端に座って、若者に握手を求めた。

「ハイ、ミスター武道家。おれは叶井三樹夫。ミックと呼んでくれ」

「ミック殿。拙者、矢作と申す。通り名はジョー。名が丈士ゆえ。無礼と誤解されるが、武人ゆえ握手は御免被る」―そう言うと、ジョーは、ミックこと叶井に頭を下げて一礼した。

ミックも合わせて、ぎこちなく腰を折った。

「代々の武家とは、由緒があるね」

「古武術を継承してきた一族の、一番若い当主にござる」

「それで古い日本語を話すんだね。当主って、どういう意味?」

ジョーが答えるより先に、山崎が教える。

「一族の主ってことだ。なるほど、アメリカ育ちで漢字が弱いようだな」

「そう言うなって。逆に日本人は英語が苦手だろ?」

「敗戦国だからな」

「よしなって、そういう話は」と、ミックは侮蔑の色を浮かべた。

 ミックにその理由は判らないが、デカはどうやらアメリカや西洋文化に、少なくとも好意を抱いていないことは理解できた。

 気まずい間を埋めようとして、ジョーが努めて明るくデカに水を向けた。

「それで、そなたは?」

山崎が、やや苛立って答える。

「山崎耕平。元警察官の探偵だ。仲間内ではデカで通ってる」

「では、デカ殿とお呼びすれば…」

「…仲間内では、と言っただろ」

「貴殿、不愛想でござるな」

子供のように頬を膨らませたジョーを見て、ミックが笑う。

「まあ、個性として尊重してやろうぜ。仲間じゃなくても、どうやらおれたち、同じ事件を依頼された同業者のようだから、少なくとも互いに礼節はわきまえようじゃないか、デカさん」

「おれは根っからの一匹狼でな」

「警官上がりなら、オオカミじゃなくてイヌなんじゃないの?」

「おい、喧嘩する気ならいつでも買うぞ」

ミックの挑発に、デカが間合いを詰めた。

「各々方!まるで童じゃ!」

「あはは。デカさん、武道家に一本取られたね」

「…あんたもな」

ジョーは、ステージ上のミックとデカを一瞥すると、客席の死体に目を凝らした。

「然るに…ミック殿もデカ殿も、この御仁のことで依頼を受けたか?」

「たぶんね。3人も呼ぶなんて、依頼人はミステリーでも好きなのかな?」

「どうやら、3人やないみたいやけどな」

ミック、デカ、ジョーが同時に声のするステージ脇を見ると、4人目の男がステージ脇の劇場ドアから入って来るところだった。

金髪の4人目は、洒落た帽子を被った洋装の伊達男である。

「わしも探偵やねん、こうみえても」

「西欧の探偵でござるか?」と、ジョーが目を丸くする。

「あはは。そんなにオシャレだと、尾行は無理だね」

ミックが笑いながら手を叩いた。

「そういう現場の仕事はウチのスタッフがやりますよって。わしは、いうたら指揮官や。根木屋圭介、通称・ネギいいますねん。」

「ネギ君…じゃあ、君を入れて探偵が4人ってことか。どういうことだ」

デカが眉をひそめた難しい顔をした。

「いやいや、もうお一人いてるみたいやで。あっこで…ほら、ブースの中でなんやらパソコンやっとる人」

ネギの視線を追った先に、客席と舞台を見下ろすブースがあった。薄暗い電灯が照明や音響の装置を照らしている。

その小さなブースの中に、ノートパソコンを開いてキーボードを打っている若い男がいた。

「おーい!キミもこっちに来たらどうや!?」

ネギが大きな声で呼ぶと、フードの男は無言のままノートパソコンをたたんでブースを降りてきた。

ナイキのカイリーバックパックを肩に掛けたグレーのパーカーにスリムのブルー・ジーンズ。それがこの若者の普段着で、同時に部屋着でもあるのだろうと想像できる、飾り気のない着こなしで、深くかぶったパーカーのフードが、細面の顔に斜めの陰を落としていた。

ミックが軽く口笛を鳴らす。

「ヒュー!もしかして、彼も探偵かな?」

「せやろな」と、舞台に上がった帽子屋は、セットのソファに優雅に腰を下ろすと、座ったままで何度か体を弾ませた。

「あれ、安物やん。このソファ」

フードの男は、すぐにステージまでやって来た。

「…ここの通信環境を確保してた」―そう言うと、フードの男は舞台にある木箱に座って、再びノートパソコンを開いた。

「キミは?」―ネギが誰何すると、フードの男は「吉本清夏」と短く答えた。

「ヨシモト・キヨカ?キミの名前?この流れからゆうたら、君も探偵やねんな?」

「ああ」

「無口なんやねえ」

ステージの上には、5人の探偵が揃っていた。

「おい、もうこれ以上、出てこないだろうな」と、両手を広げてみせたミックが全員を見渡す。

「アメリカ帰りは軽薄だな。ホトケさんの前で不謹慎だ」

厳しい顔つきのデカが、客席に座り続けているソフト帽の死体の前に立つ。

座っている死体は、目の利く人が見れば、腕の立つテーラーが仕立てたと判る高級な、それでいてカジュアルな印象のアイボリー・カラーのスーツを身に着けていた。目深に被ったソフト帽はそれよりもやや濃い目の象牙色だ。

 年の頃は50代に見えるが、ソフト帽から覗く白髪混じりのもみ上げと、やはり白髪の入った口ひげ、それに鼻梁に乗った鼈甲縁の眼鏡が、初老の年輪を感じさせる。

 ミックこと叶井三樹夫。

デカこと山崎耕平。

ジョーこと矢作丈士。

ネギこと根木屋圭介。

そしてキヨカこと吉本清夏。

5人の探偵は、客席に座ったままの死体の男を取り囲むように見つめた。

 男は眠るように瞳を閉じたまま、両手はきちんと左右の膝に置かれている。やや俯き加減の顔色も、異変を感じられるほど悪いわけではない。ただ、普通の人が見ても生気がないことは判る。

マダム・タッソーの蝋人形館にあっても違和感がないであろう奇妙な居住まいの男を、探偵たちの誰もが、これが死体であることを一目で気がついていた。

 そして、この死体のために自分たちが招集されたのであろうことも。

「死因はなんだと思う?」

最初に口火を切ったのはミックだった。

ネギは、指先でハットの縁を気障に押し上げると、死体の顔と手の甲を交互に見る。

「血痕は見当たらへんし、衣服の乱れもない。しやけど、皮膚がおかしいね。お顔も歪んでへんから心臓発作ともちゃうやろね。ゆうたら、毒殺ちゃうの?」

「I think so too.」

「…なんて?」

「あ、Sorry, おれもそう思うって」

「自分、英語のヒトなん?」

「いや、わりと長いことアメリカで働いてたんで、英語のほうがcomfortable(快適)で」

「…ま、ええわ。ほかの皆さんは?毒殺でええの?」

「申し訳ないが、眺めるだけでは検死にならんよ」

デカが、ポケットから半透明の白いラテックス製手袋を出すと、慣れた様子で両手にはめた。

「いつも持ってはりますの?」―興味津々にネギが尋ねる。

「警察官時代のクセでね。いまでも必要最低限の道具を携行してないと落ち着かない」

そう言うと、デカは死体の前で両手を合わせ、短く黙祷した。

 ミックが、デカの振る舞いに感心する。

「ワオ…さすが、礼節の国!アメリカの刑事にも見せてやりたいよ」

「死者への敬意だ。まして殺された可能性があるホトケさんなら、なおのこと」

デカは、慎重な手つきで死体のソフト帽を取った。帽子の内側に鼻を寄せて臭気を確かめる。ジョーが一瞬「うげっ」という顔をして、すぐに表情を引っ込めた。

 死体が座る隣の席に帽子を置くと、デカは次に死体の頭髪を触った。それから閉じた死体の唇を手袋の指でそっと開くと、いつの間にか手にしていたペンライトで口腔を照らした。

 ほかの4人の探偵たちは、厳粛な宗教祭儀の参列者のように、デカの仕事を静かに見つめている。

ただひとり、キヨカだけはステージの端に腰かけて、両ひざに乗せたノートパソコンを操作している。キーを叩く音だけが劇場に響いていた。

 デカは自分のアタッシュケースを開けると、小さなキットを取り出す。

「デカ殿!その奇天烈なものは?」

「DNAの採取キットだ。唾液から精度の高いDNAを採ることができる」

「仁術の道具にござるか!」

「誰でも買える。いまや…」―と、キヨカに目をやってからデカが続けた―「インターネットの通信販売で手に入る。ただ、サンプルからDNAを精製、抽出して調べるには専門の機関を使わないと無理だがね」

 デカはペンライトを口にくわえると、左手で死体の唇を開き、右手に持った採取キットのスポンジ・スティックで死体の口中をさらった。

「探偵ゆうより検視官やね」

 ネギの無駄口を横目に、デカは採取した死体の唾液をキットのロートに密封すると、アタッシュケースに戻した。

「ま、おれはなんでも屋だ。さて、こいつは常温でもサンプルを保存できるから、鑑定は後からでもいい。早いうちに手がかりは確保しておかないとな」

「ほんで、どこでそれを調べはんの?」

「詳しくは言えないが、警察関係のルートはある」

「え、違法ちゃいますの?バレたらその人、クビやんか」

「そう杓子定規でもない。諸君も警察の捜査に協力することはあるだろ?その代わりに、こっちもある程度は頼み事ができる。元はおれも警視庁の人間だし、持ちつ持たれつってとこだな」

 そう言いながらデカが手袋を外したときだった。劇場の扉を開けて入って来た男が声を上げた。

「警察は困るんです!」

 5人の探偵たちが一斉に、声のした客席の後ろに目を凝らした。

 男は座席通路を小走りに、探偵たちのもとにやって来た。

「警察にこの件が知れたら、私も殺されるんです!」

 くたびれたコットン・ジャケットの男は、額にうっすらと汗を浮かべ、焦燥と恐怖の入り混じった表情だ。

「あ…失礼致しました。私は、皆さんにご連絡を差し上げました、支配人の影山巧と申します」

「あんたか?会ったことがあるやつにしか教えない、おれの極秘メール・アドレスにいきなり依頼を申し込んで来たのは。どうやってメールを探し出したんだ?」

 ミックが、ポケットから出したチューインガムを一粒食むと、影山を軽く睨んだ。

 「申し訳ありません!そのへんの事情は追ってご説明したいと思いますが…とにかく、この件につきましては、警察はもちろんのこと、外部には一切極秘で進めるようにと指示されておりまして」

「探偵が依頼される仕事ゆうたら、だいたい秘密やけど。その指示ってなんですの?あんたはんが依頼人とちゃいますの?」

「メールにも書かせて頂きましたが、正しくは、私は依頼人から代理人を命じられた者でして…」

「おれに届いたのは、これだけど」

キヨカが、膝の上のノートパソコンをくるりと回した。ディスプレイには、キヨカの受信したメールが拡大表示されている。


『名探偵・吉本清夏様

 突然のメール送信をお許し下さい。

 私は演劇の劇場支配人で影山と申します。

この度は、ある重要な事件の解決をお願い致したく、ご連絡を差し上げました。

 誠に勝手ながら、着手金をアメリカ・ドル

建てで100万ドルを銀行口座に送金させて

頂きましたので、ご確認下さい。

 本件は、正確には私からの依頼というより、

ある依頼人のご意向で私が代理でご連絡をさ

せて頂いております。

 ご不審に思われることも承知の上で、なにぶんにも内密に処理しなければならない重大な案件ですので、例外的な依頼をお許し下さい。

もしも、本件依頼を受けて頂けるのでしたら、メール最後尾に記載致しました日時に、私の劇場までお越し下さい。

本件の機密性を保持する意味でも詳しい事

情につきましては、その場でお話させて頂ければ幸いです。

 とり急ぎまして、用件まで。

 劇場・シアターセブン 支配人 影山巧』


「おれのところに届いたメールと同じだよ。吉本様のところが、叶井三樹夫様だったけどね」

「拙者の元には便りが届き申した。金子の小包と一緒に」

「なに?キンス?君、パソコンないの?」

「機械は好まぬ」

 パソコンを覗き込んでいたミックが、表示されたメールを人差し指でトンと叩き、次いでその指を影山に向けた。

「わしんとこもおんなじや。ほんで銀行に確かめたら、ほんまに100万ドル振り込まれとったわけや。とにかく、ここに来いひんことには、話が見えへん思うて、バカンス中のシチリア島から駆けつけたっちゅうわけや。ほんで影山はん?あんたも殺されるって、どういうことや?」

「はい。ご足労頂きまして、申し訳ありません。このメールの文面自体も、私に命令をした依頼人から送られたものでした。これを皆さんに送信しろと、皆さんのメール・アドレスも添付されていたのです。今日の集合時間も、その依頼人からの指示で…」

「ところで」と、デカが影山の言葉を遮った。

「あなたは、この死体の男をご存知なのかな?」

「とんでもない!こんな偉い人!しかも、今朝になって突然、ここに…」

「偉い人?」

「ひょっとしたら…!」

デカが怪訝な表情を見せる前に、キヨカが静かに呟いた。

「八代誠一に似てないか?」

「どうやら、その様でございます」

 影山が頷き、ミック、ネギがあらためて死体を注視した。

「…八代誠一って、あの有名なIT企業の創業者?」

「せや!一代でアメリカでも成功した国際的なIT長者やろ?ちょっと顔がわかれへんけど」

「He is the BIG SHOT (大物だぜ)!」 

「拙者は存ぜぬ」

「せやろな。正味な話、八代いう人は、メディアに登場しいひん謎めいた実業家で知られとったしな。なんてゆうたかな?この人の会社…」

「テック・ディメンション・アライアンス…」と、キヨカがノートパソコンの向こう側で呟いた。

「…彼は、現在、公表されている個人資産だけで2000億円を下らないと言われるIT企業の成功者だよ。これまでメディアに公開された彼の素顔は写真一枚、これだけだ…」

 キヨカが、再び自分のパソコンを反転させ、検索情報から拾った画像を一同に見せた。

八代誠一が米国の情報関連企業の最高経営責任者らと、なにかの契約を締結したときの調印式での1コマだった。

 ミックが画像に見入る。

「確かに、八代誠一に間違いないように見えるけど、口ひげはないね。こっちの死体にはある。これはいつ撮られた写真だろう」

「…データでは、2001年になっている。15年前だ」

「ちょっと待って。ほんならなにか?あの世界的IT富豪の八代誠一が、東京の芝居小屋の客席に、突然、死体になって座ってはるわけ?ほんで、わしらにどうないせえっちゅうねん」

「八代誠一を殺害した犯人を割り出して頂きたいのです―」

 その声は、唐突に舞台上に響いた。

携帯電話のスピーカーフォンを通したような、その場の誰かの肉声ではないことは明らかだった。

 5人の探偵たちは、全員同時に声の発信源を見つけた。声は舞台上のセットに飾られた、洋館を描いた一枚の絵画からだった。

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