ぬいぐるみ――フェレンゲルシュターデン

吾輩はフェレンゲルシュターデン。ぬいぐるみである。


どこぞの工場で生まれたようだがはっきりとは覚えておらぬ。薄暗いじめじめした所で段ボールに梱包されていた事だけは覚えておる。


人間に取り上げられた吾輩は、それからというもの人間と過ごすようになった。


人間とは吾輩に言わせれば、世界で一番獰悪な生き物だ。萌えと言っては吾輩を持ち上げ撫で回す。全く無礼極まりない。


特に人間のメスにはこの傾向が強くみられる。いったいなんなのか。


最初は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかったが、最近吾輩は、奴らがやはり恐ろしい生き物であると気がついた。


ある日てぃーびーなる箱の中に住まう人間どもが言っていた。


人間のメスは吾輩のように体躯の小さな生き物を捕らえては撫でまわし、続けざまに「かわいい」と唱えるその行為には、特別な意味があるのだと。


何でも彼ら曰く、人間のメスという種族は「ぬいぐるみをかわいがる私かわいい」というアピールでオスの関心を引くのだとか。もしくは自分の中のナルシズム的感情を満足させるとかなんとか。


他にも色々言っておったがまぁなんと嘆かわしい。吾輩は裏切られた時のような、色で例えるなら黒い感情にさいなまれた。アレに撫でまわされるうち、何だかフワフワした感じが気持ちよくて気を許してしまった吾輩は、それを知って愕然とした。


アレは吾輩に触れる時いつも笑顔だ。何がそんなに嬉しいのかと思っていたが、すべて合点がいった。


アレは吾輩を掌に載せスーと持ち上げたかと思うと、確かに決まって「かわいい」といっていた。


なんということか。箱の中の人間どもの言ったままではないか。まったくなんなのだ。なんだなんなのだなんだというのだ。


まったくもってけしからん! 今日も今日とてベッドに引きずり込まれた吾輩はいつものごとくうわっ! やめっ! なにをするくぁwせdrftgyふじこl

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る