第8話 異界

 僕たちが住む世界――現世


 怪異と呼ばれるモノが住む世界――異界。


 ニつの世界は似て非なる世界。

 近いようで遠く、遠いようで近い。

 コインの表裏。

 隣界。


 決して相容れないが、互いに影響し合う未知にして、未開。


 しかし、時折現世から異界に迷い込む――或いは、連れて行かれる――そんな事例は古今東西散文されている。


 僕らの世界――現世。

 果たして僕らはソレどれくらい知っていると言えるだろうか?

 産まれてから死ぬまで、八十猶予年。

 どうすれば世界の全てを知れる?

 勉強して、すごい学者になれば?

 世界一周すれば?

 友達100人作れば?

 

 僕らが知る世界は視覚情報に頼った世界だ。

 しかし、僕らの視機能は容易く物事を見誤る。

 僕らは見たいものしか見ず、見たくないものは、認識すらできない。



 僕は異界を体験した見たことがある。


 暗くて仄かに白い不思議な空間。

 道と呼べる路はなく、しかし手を引かれるまま歩を勧めていく。

 遠くで大勢の気配がする。

 手はそちらに向かっていく。

 皆が呼んでいる気がした。

 待ち焦がれている。

 切望されている。

 ただ望まれるまま前へ奥へ


 フワフワした高揚感と、安らぎ。

 夢遊病者のようにフラフラと進む。


 皆の処へ。

 次第にざわめきが大きくなる。

 あと数歩もしない内に手が届く。


 その時、手がニヤっ笑った気がした。


 気が付いた時は家の前だった。

 どうやって戻ってきたのか。

 あの手はあの後どうしたのか。

 何も分からなかった。

 

 戻ってきた僕は片目を無くしていた。

 痛くはない。ただ血の涙を目があった空洞から流し続けた。

 

 すぐに病院に連れて行かれたが、目がないこと以外は異常なし。

 空洞の部分も現代の技術を持ってすら不可能なほど綺麗に瞳が抉り出されていたため、医者が首を捻っていた。


 他の異常がないことが異常な状況に、検査入院という項目でその後3ヶ月間病院に拘束されてしまった。


 以上が、僕が姿を消してから、半年後起こったことだ。

 

 

 


 



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