第120話 ホーリーロウ
セレスティアが唱えた聖属性魔法【 ホーリーロウ ⠀】。
彼女の魔力全てが上空へ辿り着いて間もなく、変化が起き始めた。
すると、さっきまで雲に覆われて暗かった空の一部が開けて、光が差し込む。
いや……あれはそんな表現では飽き足らない。
光が降ってきたとでもいうべきか。
それは光線のように強く降ってきて、空から地面を突き刺して消えていった。
初めは1本、続いて2本目と降り注ぐ。
「どんどんあの数が増えていくぞ! 」
降ってくる光線を見ながらアーカシス様はそう口にした。
「どうしたらいいでしょうか!? 」
「仕方ない、まずはこの周囲だけでもっ! 神技【 魔力障壁⠀】」
アーカシス様は俺達がいる範囲にのみ魔力障壁を創り出した。
「アーカシス様、すごいです! 」
すごい。
アルカナに張り巡らせている魔力障壁はアーカシス様が創ったものだって言ってたもんな。
「いや、これは即興で創ったものだ。 アルカナのものとはまた違うぞ。 もって1時間くらいだろう 」
「いえ、助かります! 」
1時間もあれば何か策が浮かぶかもしれないな。
ただ今のところは俺もどうしたらいいか全く検討がついていない。
まず、考えなきゃいけないのはセレスティアを止める方法だ。
しかし彼女の今の強さは尋常じゃない。
俺も彼女とは戦いたくないため、できればティアが納得できる方法が1番だけど……。
「仕方ない……。 ミア、あれを出してくれ! 」
「はい、アーカシス様! 」
そう言って彼女が手に握っているのは、さっきアーカシス様が手に持っていたあの立方体だ。
「ミア……それは? 」
俺がそう聞くと、
「あーこれはですね、ナイトフォールへ行く前にアリア様から頂いたものです 」
「つまりその中にアリア様が? 」
「はい! この箱と対象者の距離が物理的に離れると封印されるそうです 」
そういえば、ナイトフォールに転移する前、アリア様にミアだけ呼ばれてたな。
あれはこの箱を渡すためだったのか。
しかしそうなると、セレスティアの裏切りをアリア様は事前に知っていたということになるが……?
「つまりアリア様はこうなることが分かっていたってことか? 」
「いーや、違う。 僕が勝手にしたことだ。 アリアにはただ春陽くん達がきたらこの箱をセレスティア以外の仲間に渡してくれとだけ伝えてある 」
この会話にアーカシス様は割り込んできた。
にしてもアリア様、勝手に封印されたのか、可哀想に。
「よし、ミア! その箱を僕に渡してくれ! 」
「は、はい……わかりました! 」
アーカシス様は受け取ったその箱に自分の魔力を注ぎ込んでいる。
そしてポイッと地面に投げ捨てた。
それからその立方体の箱は1面ずつ展開していき、完全に開けた状態となる。
それが開け切った瞬間、
ピカッ――
この暗いシャドウバレーに一際輝く光を発したあと、その場所にひょこっと現れたのはナイトフォールで会った美人神様……アリア様だった。
「え〜? ちょっとここどこよ? 」
彼女は登場して早々、あちらこちら見渡している。
そりゃそうだ、突然こんなところに連れてこられたのだから。
「細かい説明は後だ! アリア、春陽くんに一時的でいい、神技を引き継いでやってくれ! 」
「え!? 私の? ……いいけど、まじ? 」
そう言ってアリア様はこっちをジト目で見るなりその大きな胸元を隠す素振りをしている。
え、そんなやらしいことなんですか?
「あぁマジだ。 そうしないと俺達は助からない。 だから急げ! あとはお前が了承するだけだ 」
「はぁ……。仕方ないわね。 ちゃんと受け止めなさいよ 」
彼女は俺の傍にやってきた。
「受け止める? 一体何を……? 」
「じゃあ春陽くん、頼むわよ 」
そう言って俺に抱きついてこようとしている。
「おおっ!? 」
「「ええ――――っ!? 」」
俺だけでなく後ろからミア、カイルの叫び声を聞こえてくる。
そしてアリア様と触れ合う瞬間、彼女は魔力となり俺の体内へ入ってきた。
あ、これティアが入ってきた感覚と同じだ。
(春陽くん、さぁ事情を説明して? 私、まだよく分からないんだけど )
アリア様、わかりました。
それから俺は彼女に今までの経緯を伝えた。
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