第117話 古代魔法【 鎖 】

 アウロラ!?

 めちゃくちゃ久しぶりじゃないか。


 (あぁ、これまでのお前の戦い楽しませてもらっていた。 ずいぶん強くなったようだな )


 いや、アウロラほどじゃないよ。

 今戦っても負けるだろうし。


 (い〜や、分からんぞ? 今ならいい勝負するかもしれん。どうだ、ここはひと勝負しておくか? )


 いやいや、今はエレナをどうにかする方が優先だ。

 また今度な。


 (ふっ。 勝負は冗談だ。 鎖の創り方だったな? )


 アウロラ、冗談とか言うんだな。意外だ。


 まぁそうだ。

 もし暴走を繰り返すなら、彼女の引き継いだ力を鎖によって元に移し替えたい。


 (分かった。 創り方のイメージは我からお前に送る。 その反動で記憶に誤差が出るかもしれんが、気にするな )


 誤差?一体なんの話……!?


 俺の脳内に巡るのは、古代魔法の記憶。

 これは……たしか魔術対抗試験の時、ケビンを倒した魔法だ。

 そういえばあの戦いの後アウロラに記憶を消してもらったんだったな。


 (色々思い出したようだな。 その中の記憶に魔力を引き継ぐ鎖の魔法があるはずだ )


 俺はアウロラの言うとおり、イメージする。


 するとあの時使用した古代魔法の中のひとつに鎖を通じて魔力を引き渡す、そんな魔法があった。


 アウロラが言ってたのはこの魔法のことか。


 この魔法は鎖を繋いだものへ魔力を引き継がせる魔法だ。


 つまりジークに鎖を繋ぎ、魔力を戻すことができる。


「よし、ジーク! 」


 そう呼ぶと、彼は俺の元へ駆け寄ってきた。

 可愛いヤツめ。


「どうしたの? 」


「鎖の創り方が分かった! 」


「え!? あれ、古代魔法だよ? そんなのどうやって? 」


「あーそれはイメージしたんだよ! 」


「イメージ? 」


「まぁ……なんでも良いじゃないか! それよりジーク、お前に魔力を戻すけど大丈夫か? 」


「うん、そうだね。 エレナにはまだ早かったみたいだし 」


「それとジーク、エレナは俺の大事な仲間なんだ。 連れて帰ってもいいか? 」


「うーん、そうだね。 元々はゾルガンが独断で連れ帰ってきただけだし 」


「え、そうなのか!? 」


「うん、だから娘をそうやって大事にしてくれてるなら僕は大賛成だよ 」


 おい、ゾルガン何独断で下してんだよ。

 そのせいで俺達ここまで来ちゃったぞ。


 しかしジークは話の分かるとても良いやつだ。

 この戦いが無事に終わったら人間と魔族、仲良くやれないものだろうか。


「ありがとう! じゃあ魔法を使うぞ 」


「はい、どうぞ! 」


「古代魔法【チェーン】」


 俺がそう唱えると、突如空間に4箇所の歪みができ、そこから魔力によって創り出された鎖が現れた。

 それはゆっくりとジークの四肢へと繋がっていく。

 それから俺はその鎖の魔力とエレナの魔力を同期させた。

 この魔法はもちろん無抵抗なものに限るが、鎖の魔力と同期させることができる。

 それがこの魔法のすごいところだ。


 鎖に繋がれたジークはゆっくりと眠りにつき始めた。

 そしてエレナの体内に宿っていた莫大な魔力はゆっくりとジークへ戻っていっている。


 あっという間に作業は進んでいっているが、本来この魔法は時間がかかるらしい。

 しかしジークエレナ間の同期は2度目のため、こんなに早くことが進んでいるのだ。


 これが古代魔法【 鎖 】。

 そう魔力から情報を得た。


 そして完璧に魔力の移行が終わった印なのか、その鎖は破壊されジークが目を覚ました。


「ジーク! 」


 そう声をかけたと共に俺とナコは彼の元へ駆け寄った。


「やぁ、無事に魔力は移動できたみたいだね。 ただ前みたいに魔力を使えるのはもう少し先かな 」


 どうやら魔力の移動直後は魔法を使うことができないみたいだ。

 しかし疲れているようだし、ゆっくり休んでもらおう。


「そうか、ジークもゆっくり休んでくれ 」


「ありがとう。君はエレナの所へ向かったらどうだ? 」


 そうだ、エレナの無事も確認しなければ。


 (春陽、先にボクを元に戻してよ! )


 あ、ティアのこと忘れてた。

 

 (もうっ! 忘れないでよ! )


 ごめんな?

 確か元の形にイメージすればいいんだよな?


 (そうだよ )


 分かった。やってみる。


 イメージしてみると、俺の胸から輝いたエネルギーが外へ漏れ出して。それが少しずつ形を形成していく。

 それは形そのままのセレスティアを創り出し、やがて俺の身体からは輝きが失われた。


「やっと戻ってこれたよ! 」


「本当忘れててごめんな? 」


「本当だよっ! まぁそれは後でお説教するとして、春陽はエレナの元へ行ってあげて? 」


「あ、そうだ! ありがとう! 」


 俺はティアに背を向け、未だ気を失っているエレナの元へ向かっている

 ナコもそんな俺の後を追いかけてきた。


 もうエレナの元へ辿り着く、そんなとき――


 グサッ――


 俺の後ろから、何かが何かに突き刺さる音が響いた。


 俺とナコは急いで振り返ると、そこには聖属性エネルギーで創られたであろう剣が横たわっているジークに突き刺さっている。


 そしてその剣の柄部分に腰を落としているのは……神セレスティアだった。

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