第101話 VSゾルガン②
あれから何度もゾルガンは俺の方へ、指をあっちやこっちに向け続けている。
つまりあの引力的な技だ。
「ふむ、やはり当たらんな 」
ゾルガンは片手を顎に当てながらそう言った。
よし、まだあいつも慣れてないようだ。
今のうちに距離を詰めて仕留める!
俺はエーテルバフを纏った今出せる最高速度で、ゾルガンへ向かう。
ただ真っ直ぐにというわけでなく、指を向けられないようジグザグに進んだ。
そして、ゾルガンは目の前。
俺はやつの懐に飛び込んだ。
よし、この動きについてこれていないぞ。
このまま一撃決めるっ!
ドスッ――
無属性エーテルバフを纏った拳をゾルガンの腹部に叩き込む。
さすがの第二席も反応できずにモロに喰らい、真っ直ぐ遺跡の壁に突っ込んだ。
「…………………… 」
言葉も発さず、表情にも出さない。
だがたしかに効いているはずだ。
打撃を加えた部分からは、露出された肌に傷ついた皮膚が見えている。
青黒いアザのような痛々しい跡が広がっているが、逆に生身で攻撃を受けて尚その傷で済んでいることそのものがもう化け物である。
フルパワーで殴ったはず……。
いや、考えても仕方ない。
攻撃が通用する間に――っ!
そう思い、俺は引き続き攻撃を続けた。
ドスッ――
バシッ――
お互い打撃技を繰り出し、攻めた。
攻めて、攻めて、攻め続けた。
もちろん現状は俺が圧倒的優位を保っており、ゾルガンはなぜか目を瞑り、守りを固めている。
だがおかしい。
あいつは確実に傷を負っている。
体力だって削られているはずだ。
それでも尚、攻めてはこず、守りを続けている。
まるで端から攻める気がないかのように。
そう思った瞬間、ゾルガンはパッと目を見開き、
「なるほど。 そうか 」
そう一言放った途端に彼は俺の目の前から姿を消した。
……!?
どこに消えた……?
「ぐあ――――――っ!! 」
ゼフィールの叫び声が聞こえたため瞬時に振り向く。
そこには【 ダークネスソード 】を振り下ろしたゾルガンと右手から血しぶきを上げているゼフィールの姿。
そして下にはゼフィールの右手の肘から先が転がっている。
「お前が邪魔だったんだな 」
そう言ってゾルガンはもう一度剣を振りあげている。
ヤバイっ!
次は本当に仕留めるつもりだ。
ゼフィールは目の前のゾルガンを見て恐怖慄いており、動けない状態だ。
これがやつの呪いとやらなのか。
「春陽!! エレナのこと頼んだぞ! 」
そして諦めたかのように、俺の方に目を向けて最後の言葉のようなものを投げかけてきた。
「死ね 」
そんなゼフィールに対し、もちろんなんの情けもなく無表情にダークネスソードを振り下ろす。
シュッ――
「なぜだ…… 」
振り下ろした後、彼は剣を持っていたであろう手を見てポツリと呟いた。
さすがに振り下ろす瞬間に剣が消えていたのだから、びっくりするだろう。
その後彼が目を向けた先には斬り殺したはずのゼフィール。
ゼフィールも斬られたと思っていたのだろう、恐怖か安心か分からないが、地にへたりこんだ。
そして場全体が動揺している間に、ゾルガンへ近づき蹴り飛ばした。
「ぐっ……! 」
俺の蹴りにより、再び壁に突っ込んだゾルガンは一瞬表情を歪めたが、すぐに姿勢も表情も立て直す。
「なんとか間に合ったな 」
「お前、何をした? 」
「だからそれを教えちゃ俺たちが勝てなくなっちゃうって 」
「そうか 」
さっきも同じような会話をした気がする。
まぁ今回も神技を利用して、一時的にゾルガンの魔力供給を絶っただけなんだが。
どうやらあのダークネスソードは一瞬でも魔力供給がなくなれば消えるようだ。
これも全て今まで戦ってきた魔族がダークネスソードを手放した瞬間に消滅していたことを咄嗟に思い出したからこそできたことなんだけど。
「なら仕方ない。 魔人化を使うか 」
なんだそれ!?
って思う暇もなく、彼の身体に闇の魔力が集まり、それを纏い始める。
そしてそれはまるで悪魔のような姿を形作った。
「なんだ、その姿……? 」
「お前に話す義理はない 」
俺が何も教えなかったからゾルガンも対抗してきたのだろうか。
そうじゃないかもしれないが、自分のしたことがそのまま返ってきた気分である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます