第97話 カイルVSドレア①
「闇魔法【 シャドウ 】」
再び同じ魔法か。
さっきと同じくらいの数。
みんな同じ顔をしているから本物がどれか分からなくなるな。
「そんな数……どうやって対処すればいいっ! あ、そういえば…… 」
ふと思い出した。
空間を通ったあと、あいつの魔法解けていたような……。
もしかしたら他の空間を介すると物体を維持できないとか?
理屈は分からんが。
「ふっふっふ! 時空間魔法【 ディメンション・エリア 】 さぁ、こいっ! 」
「なんだ? 誘ってるのか? 罠だろうが、影にはダメージはない! いけぇぇぇっ! 」
とはいえ、この仮説が間違っていれば命が危ういわけだが。
しかしだ、これくらいのピンチ越えられぬ程度じゃ春陽とは肩を並べることなんてできない。
彼の旅についてきた意味だってないのだ。
なんのために、ここまで一緒に旅をしてきた?
なんのために、力を与えてもらった?
全て春陽のためだろ?
彼と対等な友であり続けるため。
安心して背中を預けてもらえるような、そんな存在になりたいと思ったからだ。
そして彼が創り出した影達は、俺の周りに死角なく創りこまれた異次元空間(多分この近辺と繋がっている)に突っ込んでくるなり、姿を消していった。
その後、本来なら設定した近くの場所に同じ空間が現れて、出てくるはずだが姿を現さない。
つまり仮説が正しかった、そういうことだ。
「俺の魔法は次元を跨げば消えてしまうのか 」
ドレアは初めての経験だったようで、フムフムと自身にインプットをしている。
「そういうことだ! つまり君の攻撃は怖くないっ! 」
少し強がってみたが、彼はダークオーダーという組織の上位魔族らしい。
こんな簡単なわけがないのは俺でも分かっている。
「ならこれはどうだっ! 闇魔法【 シャドウ・シーム 】」
なんだ?
地に潜むあらゆる影が彼の一言で呼び覚まされたような。
俺がそう思ったのは、その影達は具現化し、地から浮き出ているからだ。
その形は全て大きな縫い針のように鋭利なもので、伸縮自在、現在は俺の身長の3倍以上になっている。
ざっとその数……う〜ん、分からんっ!
100?200?つまりそれだけ多いのだ。
「この数の影をお前は避けられるかな? アハハハハッ! 」
「ハハハ……。 どうだろうか 」
たしかに自信はない。
しかし速さが特徴のものを俺は持っている。
以前ならば避けられなかっただろうが、強化された今ならどうだ。
きっとできる……気がする。
「雷神級エーテルバフ発動! 」
俺は得意の雷魔法によるエーテルバフを発動した。
すると魔力により発生した雷エネルギーが身体中を纏う。
これにより身体能力は向上し、雷の性質を得ることができるのだ。
雷の性質とは、そう『速さ』。
「ほう、質の濃い雷エネルギー。 さすが魔族に刃向かうほどではあるな。 だが、この数は避けれまいっ! くらえ――っ! 」
向かってきた。
ドレアの合図で向かってきたのだ。
その数百はくだらない影の刃が。
さっきは俺の身長の倍程度だったが、さすが伸縮自在、いくらでも伸びて向かってくる。
前方からきたものは難なく避けた。
そして後方。
さすが伸縮神級のエーテルバフ、纏っている雷エネルギーが多大すぎるため、広範囲へと拡がっている。
そのおかげで後方からきたものは、自身の雷エネルギーに影が触れることで位置を把握し、避けることができた。
「へっ! どうだ! 避けて見せているぞ! 」
この通り、避けながらもやつに語りかけるくらいは余裕がある。
「いつまでその強がりがもつかなっ! 」
確かにこのまま避け続けるわけにはいかない。
どこかで隙をみてあいつに近づく方法を考えないと……。
「くそ――っ! どうする…… 」
心なしか避けるのもキツくなってきた。
ここは一度、時空間魔法を使って……いやその隙に串刺しになりそうだ。
しかし他に方法も思いつかんっ!
「そろそろ避けるのもキツいんじゃないか? アハハハッ! 」
やつめ、呑気に笑ってやがる。
ここは一か八かだっ!
「時空間魔法【 ディメンション・ウェイブ 】うぐっ! 」
「ひやぁっ! 刺さった刺さったっ! そのまま串刺しだ――っ! 」
グサグサッ――
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