第84話 いざナイトフォール

 皆準備ができ、庭に集合した。

 ここでミッドナイトを呼び出し、ナイトフォールへ向かう。


 そしてアリア様とはお別れだ。

 さすがに彼女も魔族から狙われている身。

 ここウォーターグレイスは特殊な霧に包まれており、狙われる心配はないみたいだ。


 ならここでティアも……と思ったが、やはりついて来るらしい。

 俺はノクティス様から力を引き継いだ。

 実質神ということになるため、攻撃も当たるはず。

 それなら以前、人が神と戦える秘策があると言っていたが、それも必要ないんじゃないかと思った。


 しかしティアは、

「その秘策は神と戦えるようになるだけじゃなくて、春陽の力の底上げにもなるんだよ? だからボクは行くんだっ! 」


 と、強く押し切られてしまった。


「皆さん、準備はいいですか? 」


「おう 」

「うん 」

「いけるよ 」


 各自了承したところで、ミアが詠唱しようとする。


「あ、ちょっと待って! ミアちゃんこっちきて! 」

 詠唱を止めたのはアリア様だ。


 何やら俺たち3人は残され、少し離れたところでコソコソと話をしている。

 聞き耳の魔法でもイメージするか、ノクティス様の神技を使えば聞こえるだろうが、プライバシーという言葉もあるし、ここは大人しく待っているとしようか。


 そして帰ってきたミアは少し複雑そうな顔をしていたが、すぐさっきまでの明るい表情へと戻った。

 アリア様もいつも通りだし、気にするほどのことでもないのだろうか。


「よし、気を取り直して詠唱します! 」


 (ったく詠唱しなくてもあなた呼び出せるのよ )


 その精霊は忽然とミアの目の前に現れた。


「あれ、それは信頼があってのことだってイフリートが……。ってことはミッドナイトも? 」


 というと、少し照れくさそうに

 (これは……あれよ、あのイフリートが信頼してるんだから、私もまぁあれよ! )


 全然説明になっていないが、2人に信頼関係が芽生えてきているということだろう。

 

 気づけばミッドナイトは目の前にいた。

 しかし以前のように闇の魔力を纏っておらず、殺気もなく穏やかな表情に見える。


 そしてまたカイルだけ視えてないらしい。

 しょうがない、いつまでもこんなんじゃ困るだろう。

 そう思い、こっそりと後ろから神技を使用した。

 精霊の魔力は普通のそれと違う、故に神と精霊使いにしか感知できない。

 であればそれを視えるのだと身体に知覚させれば良い。


 神技を使い終わった瞬間、カイルが

「うおおおおおっ!! 俺にも何か視えるぞぉぉぉ! 」


 あ〜余計うるさくなっちゃったかなぁ。

 ミッドナイトも(何いらないことしてくれちゃってるの……)って顔でこっち見てるし。


 (まぁそれは置いといて、ここに神が3人いるなんてね。 1人後継者も含めてだけど )


「ミッドナイト、そんなこと分かるの? 」


 (あなた、他の精霊に聞いてないの? 精霊と神は魔力が似ているの。 だからお互い把握できるのよ )


 なるほどな。

 だからイフリートは、俺がミアの潜在能力を引き上げたって知っていたのか。


 (それより、もうナイトフォールに移動するけどいい? アリア )


 えっ? アリア様と知り合いなのか?

 俺以外のみんなも寝耳に水、といった表情だ。


「えぇ! 向かってちょうだい! 」


「ちょっとアリア! 説明は?? 」

 ティアはすかさずアリア様に質問した。


 (はい、転移するよ )


 ふぃぃぃぃぃぃぃん――


 甲高い転移時の効果音と同時にアリア様が答える。

「え? 言ってなかったっけ? 私もミッドナイト召喚できるのよ 」


「「「「えーーーーーーーーっ! 」」」」


 彼女のあっけらかんとした返事と同時に、目の前の景色が変わっていった。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る