第81話 マナ・フュージョン

(反撃はいいんだがご主人よぉ )


 イフリートが何か言いたげにしている。

「どうしたの? 」と聞くと、


 (いやぁ……俺あいつに勝ったことないんだよな。 もちろん考えはあるが )


 ええっ!

 珍しく好戦的なイフリートが初めから弱気である。

 そのことから分かること。

 ミッドナイトはめちゃくちゃ強い。


 (そうだよねぇ。イフリートあの頃から弱いもんねぇ。 キャハッ! )


 急に上機嫌に笑い始めた……怖い。

 あの人の情緒が分からない。


 (だがミッドナイト、いい気になるのはいいけど、今の俺とお前には決定的な差がある! )


 (ふ〜ん、何が言いたいわけ? )


 (お前もわかってんだろ? 主人がいるかいないかだ )


 (ふっ……くっだらない! その女に何ができるの? マナフュージョンでもしない限りは……ってまさかその女……! )


 (あぁマナフュージョンの適合者、それもたった今そうなったみたいだ )


 マナフュージョン?

 そんな言葉お母さんからも教えてもらってない。


「イフリート、何それ? 私知らないよ? 」


 (まぁ、今日は見ておけ )


 イフリートがそういった意味すら分からない。

 ただあんなに強いミッドナイトが怯えている。


 あれ、気づけばイフリートがいない……いや違う、彼は私の体の中だ。

 自分の精霊の魔力は把握している。

 それがなぜか私の体内から感じている、こんなの初めて。


 (ミア、感じているか? 今俺はお前の中にいる。 つまり精霊と一心同体となる、これがマナフュージョンだ )


「うん、わかるよ、何だか力が溢れてくる 」


 (これも全てお前の仲間、春陽……だったか、あいつのおかげだ。 どうやったのか分からないが、ミアの潜在的な力を引き出したようだな、後でお礼を言っておいてくれ )


「そっか、春陽……結局今回も私を助けてくれたんだね 」


 (ミアどうした? お前の懐あたりに感じたことない熱さを感じるぞ? 心なしか、顔も赤いようだ )


「ふぇぇっ!? な、何もないよ! さっどうやってこの力を使えばいいの? 」


 (ん? よく分からんがまぁいい、今回は俺が身体の主導権をもらうぞ )


「え、うん、わかった 」


 それからは私自身の身体が勝手に動くという謎の現象が起こった。

 まぁイフリートが動かしてくれてるんだけど変な感覚。

 そして自分の身体中から何だか赤くて熱い魔力が放出されている。

 しかも私宙に浮いてるし。

 周りからはどんな姿に見えているんだろうか。


 (イ、イフリートのやつ本当にマナフュージョンしやがった。 クソクソクソッ! )


 ただ目の前のミッドナイトが焦っていることは分かる。

 それと彼女が私を見て(ドラゴン…… )って言ってたし、周りからはそう見えているのかな?


 (さぁミッドナイト、決着だ! )


 (やめろ! こっちにくるな! )


 彼女はさっき私が捕まった闇、を放ってきた。

 え、イフリート避けないの!?って思ったけど、今私が纏っている赤い魔力が全て焼き尽くしたのだ。

 この身体強すぎじゃない?


 (ミッドナイトよぉ、もうわかってんだろ? 今のうちにご主人と契約したら、痛い目見なくてすむぞ? )


 何だかうちのイフリートが怖いこと言っている。

 完全にガラの悪い人だ。

 しかも今は私の見た目で、私の声だからとても恥ずかしい。


 (わ、私は絶対そんなやつと契約しないぞっ! )


 そういってまた身体に纏っている闇を放ってくる。

 そして私はというと、その闇すなわちミッドナイトに向かって突っ込んでいった。

 ちょっとイフリート!と思ったが、もちろん全ての闇は私に近づいた時点で燃えていく。


 (ひぃぃっ! )


 ミッドナイトから小さい悲鳴が聞こえた気がしたが、私はすでにミッドナイトを貫通するところまで駆け抜けていた。

 後ろを振り返ると、ミッドナイトの胴体部分が大きく欠損しており、その断面は焼け焦げた後がついている。

 それを見ると、私の身体が彼女を貫いたのだと容易に想像がつく。


 (よし、ご主人終わったぞ! この力、あまりに魔力を使うため5分ともたない。 マナフュージョンが解除される前に力の代償を伝えたかったが、もう時間のようだな。 すまぬ )


 え、ちょっとイフリート!?


 ここで私の記憶は途切れたのだった。

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