第74話 水の都
「おおっ……すごい、まるで水の都…… 」
「春陽、びっくりしてるねぇ〜! 神アリアの街すごいでしょ? 」
いけない、あまりの綺麗さに心の声が漏れていたようだ。
そしてなぜ飛行船で行く場所だったのかがここに来て明確になった。
「こりゃ飛行船じゃなきゃこれないわけか! 」
「うんうん……そりゃここ海だもんね 」
ミア、カイル2人とも驚きを隠せていないようだが、その気持ち充分に分かる。
何せこの街は海の上に存在しているのだから。
さらには街をぐるりと囲うように霧がかっている。
それによって外の状況や本来の陸とどのくらい離れているのか全く分からない。
まぁ飛行船でここまで来たのだし、物理的に通れるのは間違いないわけだが。
町並みとしてはイタリアのような西洋風という感じか。
そしてここは円状の都市でそれに準えるように水路が通っている。
土地、水路、土地、水路とまるでミルフィーユ鍋のような都市構造だ。
土地間は大きな橋がかかっており、街は石造りの建物が所狭しと並び立っている。
ウォーターグレイスに見惚れながら歩いていると気づけば街の中心部まで来ていた。
ここは1番賑わっている、いわゆる都会というやつだ。
「おおおっ! 都会って感じでワクワクするなぁ! 」
カイルは周りを見渡しながら大声をあげている。
地元であるアークスカイだって立派な都会だろうに。
「カイルくん! そんな走ると迷子になるよぉ…… 」
ミアが呆れた顔で追いかける。
なんか友達というよりか姉と弟みたいだな。
――♪――♪――♪
ん?
どこからメロディが聞こえてくる。
「みんな! 何か聞こえないか? 」
「はい! 綺麗な歌声が聞こえます 」
「ああ、どこからだ……!? みんな、あっちだ! 」
カイルが指差した方には、何かを取り囲んでいる人たちで賑わっている。
おそらくあの中に行くと歌声の正体に辿り着くのだろう。
「……ちょっと行ってみるか? 」
「「行こう!」」
ミアもカイルも即答だ。
歌声の主も気になるし、少し寄り道しよう。
「……ボク、あの声なんか聞いたことあるんだよね〜 」
セレスティアが知っているということはこの世界で有名なアーティストとか?
でも先に駆けて行った2人は知らないようだったしなぁ。
「とりあえずティアも行こうよ! 」
「え〜あぁ、うん…… 」
「行ったらわかるって 」
必死に頭を抱えて思い出そうとしているティアを連れて人溜まりに向かった。
『水の〜波に揺られ〜♪ 』
近づくと、その歌姫なる姿がはっきり見えてきた。
なんという美貌……。
20代のお姉さんフェロモンを醸し出しており、大人の魅力というものが伝わってくる。
そして淡い青色のロングヘアーに、くのいちが着ていそうな着物をオフショル風に着崩している姿と、何より服越しでも分かるスタイルの良さがより一層の色気を感じさせるのだ。
よく見れば、この集団の9割は男だ。
まぁ確かに俺も男、気持ちが分からんでもない。
しかし横で歌に純粋に聴き入っているミアを見ると、やましい気持ちを持った自分が少し恥ずかしくなってきた。
「あーーーーーーーっ!!! 」
突然の大声に場は静寂する。
この声の主は我らが神セレスティアだった。
「おい、みんなびっくりしてるだろ! ちょっと静かに……おおっと! 」
大人しくさせるためティアを掴もうとしたが、容易に避けられ、俺は少しバランスを崩した。
そして彼女は歌姫の元へ行き、
「アリア!!! 」
その声を聞いて歌姫もピンきたのか、ハッとした表情で、
「ティアッ!! 」
お互い名前を呼んだと思えば、次の瞬間、豪快な抱擁を交わした。
ティアが小さい分、ちゃんと抱き合えてはいなかったが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます