第65話 神の殺し方

 ようやくノクティス様が前向きになってくれた。


「いいか人間ども! ティアたんだけは守るんだぞ? お前たちの命に変えても。 それが教える条件だ! 」


 ミア、カイル、セレスティアとそれぞれ目を合わす。

 俺自身セレスティアに傷ついてほしくない。

 しかしそれはミア、カイル、エレナも同様だ。

 だからお互いがお互いを守れるように死力を尽したいと思っている。

 皆、そう思ってくれればいい……いや、目を合わせた時、全員の覚悟が伝わってきた。

 きっと皆気持ちは同じだ。


「はい! 命に変えても守ります 」

 少しの沈黙があってからノクティス様は口を開いた。

「……わかった、なら明日ここに来い 」


「……あ、明日!? 今じゃなくてですか? 」

「ああ、今日はもう眠い。 それに少し気持ちを整理させろ 」

「……気持ちの整理……ですか? 」

「妹を危険な場所に送り込むんだ。 当然だろ? 」


 ノクティス様は大切な家族のことをこんなにも心配している。

 過度な愛情表現をみて引いてしまったことを今更申し訳なく思ってきた。


 それに、もう少し夜も更けてしまいそうだ。

 今聞いたとしても、行動は明日以降になるだろう。


「じゃあみんな、明日の朝ここに来よう! 」

 皆、快く了承してくれたので、ノクティス様に一度別れを告げスカイタワーを後にした。



 ◇



「なんだ、今日は宿をとったのか! 」

「ああ、2日連続でお邪魔するわけには行かないよ 」

「気にするな! 今からでも来ても大丈夫だぞ! 」

「いや、一度宿に泊まってみたかったんだ 」

「そうか? わかった! じゃあ俺とミアは一度実家に帰るぞ! これから少し長旅になると親にも言わないといけないからな! 」

「そうだな、じゃあまた明日。 ミアもまた明日な 」

「おう! 」

「はい、春陽さんもゆっくり休んでください 」


 ……ということで、俺とセレスティアは宿で泊まることになった。


「春陽〜こっち来てさ初めて2人っきりになったんじゃない〜? 」


 セレスティアはルンルンとした表情で擦り寄ってくる。

 いや、ティアも可愛いよ? 嬉しくも思う。

 サイズは違うにしろ顔、スタイル共に群を抜いて素晴らしいことだし。

 ただやっぱり欲を言えば同じサイズの美女に擦り寄られる方が……例えばミアとか……。

 っていやいや、こんなことティアに言ったら傷つけてしまう。

 それにエレナだって今どうしているか……。


「……春陽? どうしたの? 」

 俺に反応がないからか、心配した表情で下から顔を覗いてきた。


「……ん、あぁごめん。 エレナどうしてるかなって…… 」


 セレスティアは少し黙りこくってから、

「きっと大丈夫だよ! 彼女を連れ去ったやつが第八席にするって言ったんなら、何もされてないと思う 」


「そうだよな、きっと大丈夫だ 」

「うん、そうだよ、今日は疲れただろうし、春陽はゆっくり休んで 」

「ありがとう、でも寝る前にティアに聞きたいことがあるんだ 」

「聞きたいこと? 」


 そう、今後のための質問だ。

 きっとこれが分からないとエレナを助けることができない。


「ああ、これから必要になること……神と魔族の殺し方だ 」


「……!? ……春陽、ボクもね、そろそろ話そうと思ってたんだ 」

 彼女も俺の質問に一度はびっくりしたものの、すぐに話を続けた。

 

 魔族に関しては、戦った3体、聖属性魔法で倒した経験がある。

 だからこそ魔族を倒せると自負していた。

 それでも尚、第二席には勝てなかったのだ。

 それに、魔族側にも神がいるというじゃないか。

 あのゾルガンという男より強いとなると、手の施しようがない。

 いや……そもそも神を殺せるものなのだろうか。


 「……魔族に関してはごめん、聖属性魔法しかボクも知らないんだ。 でもね神を殺す魔法がある 」


「そ、それって……? 」

 神様に神様を殺す魔法を聞く、そう思うと口がつぐんでしまう。


「『パージ』っていう魔法。 正確には殺すというよりか成仏させるというほうが正しいんだけどね! これには条件があって、神側が死を受け入れないとダメなんだ。 もちろんこの魔法を使うには才能がいるけど、春陽なら心配ないねっ! 」


「なるほど。 神を成仏させる魔法があるのか。 でもさ、魔族の神は死を受け入れないよな? 」


「……その場合は、神が神を殺すしかない。 神には人の攻撃が当たらないんだ 」


 んん……!?

 魔族の神、倒せないじゃないか……。

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