第63話 魔族の住処
「すみません、失礼します 」
挨拶は大事だ。
一応礼儀として頭を下げ、2人より先にエレベーターを降りた。
そして2人が俺に続く形だ。
フワッ───
「わわわわわわわっ 」
めちゃくちゃビックリした。
何せエレベーターから降りた瞬間、無重力空間のように自分の身体がフワフワと浮いているのだ。
バランスがとりにくいったらありゃしない。
……そういえば、ノクティス様も同じ状態だったな。
そして2人も後に続き宙に浮く形となったが、俺と比べて衝撃は少ないようだ。
むしろ「おおおおっ 」とか言って楽しんでいる。
しかも俺よりバランスがとれているとはどういうことだ。
「おぉきたか! ティアたんの子供達よ 」
先程も聞いたセリフだ。
俺たちが宙に浮いたという事実で頭がいっぱいだったため、ノクティス様の言葉に返事ができなかったからか、もう一度同じセリフを吐いてくれた。
今度こそ返事をせねば。
「はい、そうです 」
「ようやく来たみたいだねぇ、ティアたんっ! 」
「ちょっと! 兄さん、離れてってばぁ! 」
そういえばティアがいないと思っていたが、よく見るとノクティス様の手で全身を掴まれ、頬ずりされている。
セレスティアが手のひらサイズだからこそなせる技だ……いや、成せられる技と言った方が良いか。
「兄さんだなんてもぉぉぉっ! 」
さらに頬ずりが強くなった。
「……グウェェェッ 」
セレスティアは潰れてしまうのかと思うほど、ノクティス様の頬で押し付けられている。
「……す、すごいな 」
「……うん、すごい 」
ミアとカイルも明らかに引いている表情だ。
とりあえず真面目な雰囲気に戻したいところ。
「あの、ノクティス様……お話を聞いて頂きたいのですが 」
俺の言葉を聞いたノクティスは、我に返ったようにハッとして真面目な顔になった。
おそらくその顔が普段している表情なのだろう。
ただの……極度のシスコンという点以外はしっかりしている神様であってくれ。
「そうだ、ティアたんも話があると言うておったな 」
普通にしていればノクティス様はずば抜けて男前だった。
パステルカラーのロングヘアでハイポニーテールになるよう髪を束ねている。
そして白いローブに身を纏い、天使の翼のようなものまでしっかり生えている。
今まで会った神の中で1番神らしい。
「……ったくノクティス……会うといつもこうなんだから! 」
セレスティアは、むくれながら自分の服を整えている。
「……ははっ。 悪い悪い、昔のくせだ 」
とても仲の良い兄妹なんだな。
少しだけ兄のクセが強いが。
ようやく話をする流れとなったので、いよいよ本題だ。
まず先程この街で起きた出来事を細かく伝えた後、魔族について知ってることはないかをノクティス様に確認した。
ちなみに魔族と繋がっている可能性がある神様、即ち裏切り者がいる可能性についてはここでは伏せておいた。
アーカシス様は事前に裏切り者がいると考えていたみたいだから、伏せるも何もなかったが……。
「ふーむ、魔族のことか。 もちろん少しだけだが、情報はある。 その前にこの街を救ってくれてありがとう 」
「いえ、そんな大したことは…… 」
神様にお礼を言われると、なんと返答していいのか分からないため、無難な返しとなってしまった。
「それで話を戻すけど、君たちはどんな情報が知りたいんだい? 」
そりゃ持ってる情報全て欲しいところだがまずは、
「……魔族の居場所についてご存知ですか? 」
これに尽きる。
どんな問題を抱えていたとしてもエレナを救い出す以上に大切なことはない。
すると、ノクティスは頭をポリポリと掻きながら少し難しい表情をしている。
彼は少し黙りこくってから口を開いた。
「……魔族の住処、それは『シャドウバレー』という所だよ。 ここから海を越えてずっと北にある。 普通の人間には渡りきることはできないと言われてるけどね 」
「ノクティス様……どうしてもそのシャドウバレーという所に行きたいのですが、どうにか行く方法はありませんか? 」
もちろんノクティス様の表情からして困っているのは間違いないが、ここまで話をして引き下がるわけにはいかない。
「ナイトフォール……もうすでに滅んだ街、知ってるか? そこのどこかにシャドウバレーに続く転移門があるらしい 」
「ナ、ナイト……フォール? 本当に存在するんですか?」
どうやらミアはその街を知っているらしい。
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