第23話 ミア・ローズの行方
ミアがいるであろう建物まてやってきた。
ここは教会のような見た目の建物である。
神の眼ではここに魔力を感じた。
そして近くまでくると眼を使わずとも肌に感じることができる。
「ここにミアがいるんだな! 2人はここで待って…… 」
「主様! エレナだってミアを助けたい! 」
「春陽、俺だってそうだ。 お前の足を引っ張るのは分かっているが、魔術学院に通っている時点で命を落とす覚悟など、とうにできている! 」
2人に危険な目にあってほしくなかったが、2人の覚悟が充分に伝わってきた。
待っていてくれなんて余計なお世話だったのかもな。
「わかった、3人で行こう 」
俺たち3人で教会の扉を開けた。
扉の向こうに見えたのは、黒いローブにフードを被っている大きな男?が、ミアの華奢な首を掴み持ち上げている姿だった。
「どうやら交渉は決裂したようだな、もうお前に用はない 」
ミアは言葉を発することができず、床から浮いた足をばたつかせている。
どう見ても敵だ。そして魔族と同等の魔力。
やはり魔族は俺のことを腹立たせることが好きらしい。
ここで俺は咄嗟に、試したかったことみっつ目の『魔力による身体強化』を行い、敵の前に瞬間移動したと思わせるほどのスピードで移動し、近距離攻撃を仕掛けた。
すると、やつはミアを掴んだ手を離し、俺から少し距離をとる。
その際、フードが脱げ、顔をあらわにしたが、白い仮面をつけており素顔は見えない。
「お前、魔力がないように見えるが、今の動きはなんだ? 」
俺の体内には魔力器官がないためか、魔力がないように思われているようだ。
これはシリウスと戦ったときもそうだった。
「答える義理はない。 魔族だとしたらここで倒す! 」
「春陽、ミアは俺に任せてくれ!
カイルの魔法は始めてみたが、空間内に立方体状の透明な何かが現れ、ミアを包んだと同時に姿を消したのだ。
空間に閉じ込めたのか?
ミアの気配、魔力を全く感じなくなった。
だが、これでミアが殺される心配がなくなったな。
「空間魔法か、珍しいものをもっているな。 しかし……相変わらず魔族だから殺す、倒すと、昔から人間は決めつける生き物。 変わりはしないものだ。 やはり全員殺してしまう……これが正解なようだ。 だが目の前のこいつが居ては少し分が悪いな、また会おう 」
そう言って魔族は空間に闇のようなものを作り出し、そこに吸い込まれるように消えていく。
「おい、待て!! 」
もちろん身体強化した速度で追いかけるが間に合うわけもなく、魔族は完全に姿を消したのだった。
「空間魔法解除 」
そうカイルが言うと、先程姿を消したミアが横たわった状態で現れた。
「「「ミア!! 」」」
全員声を上げて近づいたが、彼女は意識を失っているだけみたいだ。
みるところ、傷もなさそうだし安心した。
だが、横を見ると座り込んで肩を落としているエレナの姿が視界に入る。
「どうしたエレナ? ミアも助かったんだしもっと喜んでいいんだぞ」
「エレナね、戦闘には慣れてないから今回も足引っ張っちゃったかなって…… 」
「そんなの気にすんなって。 今まで戦ってきたのは魔族が2体もいたし、その他は俺が試したい魔法があるって言って倒しちゃうことが多かっただけで、今後エレナの力に頼ることだって増えてくるんだ。 その時はよろしく頼むよ? それに、エレナが明るくて元気な子だから俺はこの旅、本当は大変なんだろうけど、今はすごく楽しいんだ。 」
実際知り合った期間は短いが、この子がいると場が和やかになる感じがする。
俺は少なくとも仲間になってよかった、そう感じているのだ。
「主様……ありがとう。 ぐすんっ 」
「そうだぞ! エレナお嬢! 人には適材適所があるんだ! 気にするな! 」
カイルもそうエレナを慰めようとしてくれているが、カイルよ、なんだエレナお嬢とは。
「なんだ人間、その呼び方は! 」
やはり呼び方が気に入らなかったらしい。
先程まで泣き言を言っていたのが嘘のように怒りをあらわにしている。
もちろん本気ではないようだが。
「いいじゃないか! 歳下なんだしお嬢で! はっはっはっ! 」
カイルも怒っている魔族を目の前に一歩も譲らず笑い飛ばしている。
ムードメーカーも2人いればやかましいな。
「カッチーン…… 主様、こいつやっちゃっていい? 」
「おい、エレナ待てって…… 」
すると背後から、
「あの…… 」
───!?
ミアが目を覚ましたようだ。
「ミア……ミアァァァッ! 」
最初にエレナが彼女の元へ飛び込んだ。
これは意外だ。
ミアに相当懐いているようだ。
カイルにはあんなにキレていたのに。
「エレナちゃんどうしたのー? 」
と、ミアは泣きべそをかいている彼女をよしよしとなだめている。
その後、俺とカイルが彼女の元へ行き、
「大丈夫か? 」そう聞くと、
何事もなかったかのように「大丈夫ですっ! 」と微笑みかけてきたのであった。
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