第17話 アリアンサ・アークライト
目の前は学院長室。
ここに来るまでの生徒の数を見るに、1000人規模のマンモス校だと思う。
そんなところの学院長だ、さぞ立派な部屋を用意されていることだろう。
さらには神アーカシス様と唯一話をできる立場にある人間だ。
気に引きしめてこの扉の奥に行こう。
ミアが学院長室をノックした。
すると、返事はないが、ガチャッとオートロックが解除されたような音がした。
入っていいぞということだろうか?
「「……失礼します 」」
ミアの挨拶と重ねるように俺も挨拶をして、学院長室へ入室した。
なんだ、この懐かしい……いやつい最近こんな雰囲気のした部屋を訪れたことがある。
そうだこの現実世界でいう応接室や校長室のようなソファとテーブルの配置、エメラルドヴェールの城内の玉座の間である。
あの部屋とそっくりだ。
「デジャブやんけー! 」
つい自分としたことが、あまりのデジャブ感に柄にもない声で叫んでしまった。
「おー、春陽やっと着いたんだね、ボク待ちくたびれたよー! 」
「春陽ー! 無事でよかったぁー 」
「おお! また会えると思っていたぞぉ! 春陽!! 」
俺の叫び声に反応して、そこにいたセレスティア、エレナ、カイルはそれぞれの声をかけてくれた。
エレナは相変わらずくっついてきた。
それにもだいぶ慣れてきたが。
「みんな無事でよかった。 ……ミアが呼ばれたってことはやっぱりカイルも呼ばれていたんだな! 」
俺とカイルは握手を交わして再会を喜びあった。
暑苦しいやつだが、俺は結構こいつのこと気に入っている。もちろんミアのことも。
だから2人に会えて嬉しく思う。
「感動の再会のところ申し訳ありません。 貴方様がエメラルドヴェールの英雄、春陽様でお間違いありませんか? 」
声をかけてきたのは、20代から30代頃の若い女性である。
彼女の銀色で長くサラサラな髪、紫の瞳は先程まで対峙していたシリウスを連想させる。
さらに彼女が羽織っている白いローブはここの生徒に近しいが、生徒のそれと違って金色の刺繍が入っており、頭には複数の宝石で飾った冠を身にまとっている。
まさしくここの王だと言われても何ら不思議ではない。
「そんな英雄だなんて……。俺はそんな大した人間じゃないですよ 」
「しかしあなたはこの街最強の騎士シリウス・アークライト……私の弟を倒したそうじゃないですか 」
やはり特徴があまりにも似すぎていると思っていた。
だが、さすがに想像してなかったため、驚きが隠せず空いた口が塞がらない状態だ。
「ふふっ驚いてるみたいですね。 私はアリアンサ・アークライト。シリウスの姉であり、ここの学院長であります 」
しかし美形兄妹だな。
2人とも顔立ちがよすぎる。
「うん、自己紹介も終わったかな? 学院長! そろそろアーカシスと話がしたいんだけど 」
セレスティアが待ちくたびれた様子で話に入ってきた。
「そうですね、皆様が揃ってからとのことでしたので。 あそこの魔法陣から彼の領域内に踏み込むことができます 」
指差す方には人3人くらいは同時に乗れそうな幅の魔法陣が円形で床に描かれてある。
「よし、じゃあさっそく……」
「ちょっと待ってください! 話はまだ途中です 」
セレスティアが生き急ぎすぎたのか、話は途中だったようだ。
「アーカシス様の領域に招かれているのはセレスティア様と春陽様になります 」
「えぇぇ、エレナは……? 」
もちろん不服そうなエレナに対して、アリアンサは
「申し訳ありません。 領域内にはアーカシス様独自の魔族用結界が張られておりますので、エレナ様はここでお待ちください。 お茶菓子を用意致しますので 」
「お菓子っ!♡」
まぁお菓子で喜んでるあたり大丈夫だろう。
ミアもカイルもいるしな。
「では学院長、俺たちはどうすればいいんでしょうか?」
どうやらカイル達はまだここに呼ばれた理由を学院長から聞けてないようだ。
たしかに今のところなんの役割もないもんな。
「あなたたち2人は英雄様達と面識もあるようでしたので、ここでエレナ様とお待ち頂いてお2人が帰還後、もう夜も遅いため客間までのご案内をお願いします 」
なるほど、そういうことか。納得だ。
「「わかりました!」」
どうやら2人も納得したようだ。
「エレナもお菓子に夢中みたいだし、俺たちは行くか! 」
「うん、そうだね! 」
エレナのことを2人に任せて俺たちは魔法陣に乗り、転移したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます