第14話 目指せ!エーテル魔術学院
ビィ───ッビィ───ッ
アルカナの街全体に響き渡る警報音。
おそらく誤報は今まであったにしても、本当の意味で音が鳴ったのは200年間で初めてのことなのだろう。
それは街の人々の反応を見れば明白だ。
「おい、誤報じゃないのか」と、疑うもの、「魔族が攻めてきたんだ……」と、慌てふためくものと反応はそれぞれだが、皆の足取りがバラバラであることから今回のように長時間鳴り続けることには慣れていないと分かる。
「ここの兵隊さんは相当訓練されてるのか? 慌てる様子もなくしっかり追いかけてきやがるぞ」
俺たちはエーテル魔術学院の方角へ息を切らしながら全力で走っている。
このような日のために訓練を繰り返してきたであろう兵隊さんは俺たちの後ろを付かず離れずにピッタリと付いてきている。
こんなに街の人々は大慌てしているのに、その姿には感服せざるを得ない。
「おい、エレナ! 学院までがんばれ! 」
「はいぃ……。 主様…… 」
俺はこの走りすぎて精根尽き果てた魔族女子と2人で逃げている。
そう、小さな神様にはエーテル魔術学院学長および神アーカシスに、ここへ来た目的の説明と俺たち3人(主にエレナ)の滞在許可をもらうという重要な任務を与えている。
それが失敗すれば俺たちはここに居場所がなくなることになるだろう。
一方俺たち2人の任務は、無事エーテル魔術学院までたどり着くことである。
「エレナ、こっちだ! 」
大通りを通っていたが、前方からも数人の兵士が来たため、路地へエレナを引っ張って進路変更した。
兵隊が多すぎる……。
魔法でぶっ飛ばしたいところだが、そんなことをすれば本当に居場所がなくなるしな。
別筋の大通りに出ることが出来たので、再び俺たちは魔術学院の向きへ走り出した。
後ろを見るとしっかり路地から出てきた兵隊がついてきている。
しかも人数増えてるし……。
「あぁっもうっ!」
痺れを切らしたエレナは兵隊の方へ身体を向けた。
「おい、攻撃しちゃダメだぞ! 」
「わかってるって、主様! 幻影魔法【シャドウ・ミスト】」
そうエレナが放った魔法は攻撃魔法ではないようだ。
兵隊の通るであろうルートに霧が空から降りかかったと思えば、それ以上ヤツらは進んでこない。
「ん? どうなってんだ? 」
「エレナがね、魔法をかけたんだよ。 兵隊さんにはあそこに大きな壁があるように見えると思うよぉ 」
エレナはふぅ〜ひと仕事したぜと言わんばかりの満足気な顔をしている。
「そんなんできるなら、最初から使ってくれよ……」
「疲れて忘れてたっ! てへっ」
自分の頭をポンッと叩き、片目を瞑ってテヘペロっとしているエレナを見ていると、ついついなんでも許してしまいそうになる。
さて、俺たちも魔術学院に向かおう。
逃げていた間にずいぶん目的地に近づいたようだ。
走ったとして到着まで数分ってところだろう。
「エレナ、もーすぐだ。 行くよ」
「はーい」
進み始めた矢先、後方からとてつもない暴風が襲いかかってきた。
現実世界でいう大型台風が上陸したかと思うほどに。
……なんだ?
暴風の発生地点をみると、剣を構えている剣士?が佇んでいる。
剣士?の彼は銀髪で紫色の瞳が光って見える。
顔立ちも整っており、人間であれば20代といったところか。
他の兵士と服装も違うこと、エレナの幻影魔法を破ったことからも頭一つ抜けている実力であることは間違いなさそうだ。
さらにいえば彼自身からもそうだが、彼が持っている剣にも凄まじい魔力を感じる。
「こりゃ逃げれそうにないな……。エレナ! 何がなんでも魔法学院までたどり着け! 」
「えっ、主様は……? 」
エレナの震えたその声色からは、抱いている不安がひしひしと伝わってくる。
「あいつ、止めてからいくわ。 お前が捕まっちゃ元も子もない 」
「勇気があることはいい。 だが魔力を感じないお前など、この『シリウス・アークライト』の遊び相手にもなり得ぬだろう。死にたくなければそこを退け 」
やはりあのシリウスとやらの魔力からは魔族レベルの何かを感じる。
さすがに手加減をしては止めれそうにない。
「あぁ、忠告ありがとう。 でもこっちも争いたくないんだ。引いちゃくれないか? 」
そう言って自分の周りの魔力を、大量に取り込み、
「創造魔法【⠀セラフィムの聖光剣 】」
そう詠唱して俺は戦う準備をした。
取り込んだ魔力様々だ。
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