第13話 魔力障壁




 俺たちはクエストをこなした後、予定通りミアとカイルにアルカナまで案内してもらうことにした。

 古代遺跡も思ったより早く攻略できて、予定より早く着きそうだ。


「暗くなる前になんとか到着しそうだな、助かったよ、2人とも」


「……いえ、それはこちらのセリフです……」

「案内なんて当然ではないかっ! はっはっは! 」


 控えめで臆病な彼女、なんでもグイグイと暑苦しいノリで押し切ってきそうな彼、よくこの真反対な2人が同じクエストに行ったものだと不思議で仕方ない。


「あれ、何だい?? 」


 セレスティアがそう言って指を指したのは、遠目から見えているアルカナの街であるが、ドーム状の魔法防壁みたいなもので街全体を覆い隠しているようだ。


「……あれですか、200年前の魔力抗争後に神アーカシス様が街全体に張ってくれた魔力障壁らしいですよ。 あれがあるために魔族はアルカナへは入れず、街は安全なんです 」


 ……まじですか。魔族は入れないとなるとこれはマズイ事態だ。

 エレナはどうやら疲れているようで、俯きながら歩いており、おそらく話を聞いていないだろう。

 俺はセレスティアに「どうするよ……」と、小声で耳打ちするも、彼女は「こればっかりは……」と、首を横に振り半ば諦めているような言葉を返してきた。

 一応エメラルドヴェールを出発する前、エレナには着替えてもらっていて良かった。

 流石に黒のドレス、ローブでしっぽも生えているとなるともう見た目からアウトである。

 今は白いワンピースにベージュのローブを羽織っており、普通の女の子に見えている……はずだ。

 ただ魔力障壁という名前だけあって魔族の魔力を感知するんだろうな。


「……っと考えている間にだいぶ近く来ちゃったなぁ」


「……春陽さん、どうかしましたか? 」


 純新無垢な瞳でミアが俺の顔を覗いてきた。

 ……いや、そんな純粋な子を巻き込む訳にはいかない。


「ううん、なんでもないよ。それより2人は先に行っててくれないか? 」


 2人とはもちろんミアとカイルのことだ。


「……どうしたんですか? 」

「どうしたのだ? 」


 ミアもカイルも良い奴だ。

 この短い道のりでも充分伝わった。

 2人にはこれから街や学校生活だってある。

 魔族の仲間となれば周りの目だって変わってしまうだろう。


「ううん、ちょっと3人でこれからの話をしたくてさ」


「……そうですか。 では先に行ってますね」

「わかった! 学院にいるからいつでも頼ってくれよ!! 」


 2人には納得して先に行ってもらえた。

 ミアは何か察して気遣ってくれたようにも感じるが……。

 さて、アルカナまでは目と鼻の先。

 エレナも疲れているみたいだし、少し休んでこれからのプランを考えよう。


 ◇


 2人に聞いた情報によるとアルカナには入口が3つあるという。

 特に門番がいるわけでもなく、持ち物検査などあるわけでもない。

 つまり、誰でも(魔族以外)通れるのだ。


 俺たちは話し合いをし終えて、現在はアルカナの入口まで来ている。

 魔力障壁通過まで距離は目と鼻の先。

 エレナにはもちろん魔族が通れないことを説明している。


 ただ不幸中の幸いがひとつ。

 ミアの話が本当なら、この魔力障壁、魔族は物理的に通れないわけではなく街の騎士団へ魔族が通過したと、どういう形でか伝達されることになっているらしい。


「……よし、みんな準備はいいか?」


 セレスティア、エレナは2人とも俺の一言に首を縦を振った。

 これからどうするかは決めた……。


「強行突破だぁぁ! 」


「「おーーーー!」」


 2人のやる気に満ちた喚声を合図に俺達は通過点である魔力障壁を駆け抜けてやったのだ。

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