2章 魔術学院編
第11話 いざアルカナへ
エレナと出会った次の日。
人間の俺、神セレスティア、魔族エレナと異色トリオはエメラルドヴェールのみんなから盛大に見送りをしてもらって街を後にした。
今から向かうアルカナという街はだいたい徒歩で8時間ほど。
幸い、アルカナはエメラルドヴェールから1番近い街らしい。
もう歩いて何時間経っただろう。
もうそろそろ見えてきてもいいんじゃないだろうか。
歩くだけならいいんだが、一応魔物だって出てくるので戦いながらの旅だ。
疲れが見えてきてもおかしくはない。
「ねぇ〜え、まだですかぁ〜」
最初にそう弱音を吐いたのはやはりエレナだった。
彼女は見た目通りの精神年齢らしい。
「そこの魔族! 文句言うならついてこなくていいんだよ! 」
「え〜っ!
またこの子はくっついてくる。
男女としての距離感を教えてもらっていないのだろうか。
いや、そもそも魔族にそんなものがないのかもしれないな。
「これから旅するんだから仲良くしてくれよ! 」
「そんなこと行って春陽くんニヤニヤしてる! くっつかれてるから庇ってるんだっ! 」
そう言ってぷいっとセレスティアはそっぽを向いている。
はぁ〜先が思いやられる……。
「グルルルッ!」
「待って、なにかいる! 」
俺の合図で皆、戦闘モードに切り替わった。
数えること8匹近く、狼に似た魔物が何かを狙っているように見える。
よく見ると今にも力尽きそうな人が2人その魔物達に囲まれているようだ。
「人だ! 助けよう! 」
またまた俺のかけ声に2人は賛同して動いてくれた。
2人が魔物の囮となり、気を取られている間に重力魔法「ハイ・グラビティ」で押しつぶすのだ。
やはり色々魔法を試したが、今のところはこの魔法が1番使いやすい。
他の魔法だと射程距離やコントロールなどが必要だが、これは決めた的を押しつぶすだけ。
きっと慣れてきたら他の魔法も使いやすくなる……はずだ。
魔物がいなくなったところで、倒れている2人に声をかけた。
意識を失っており、怪我も所々にしている。
ちょっと試してみるか。
「
すると、瞬く間に傷が塞がっていった。
「春陽くん、やっぱりすごいねっ! 治癒なんて、回復魔法の適性がないとできないんだよ 」
「さすが主様♡ もちろん魔族でも使える人はいないよ〜」
神様と魔族がそういうのだから治癒とは難しいものなのだろう。
どうやらイメージするだけで俺はある程度の魔法が使えるみたいだ。
時間があったら色々試してみよう。
傷が治って間もなくまず1人が目を覚ました。
「うーん、ここは……?」
女の子だ。
魔法使いだと言わんばかりところどころに入っている青の縦ラインが特徴的な白いローブを羽織っている。
歳は俺と同じくらいか。
可愛い顔立ち、現実世界でなら流行っていそうであるボブヘアー、緑髪というのも特徴的である。
目が覚めたばかりだからか元の性格なのかオドオドとして不安そうな表情をしている。
「大丈夫? 」
と俺が声をかけると、ビクッと身体を震わせ1歩後ずさった。
そして「ごめんなさい、ごめんなさい」と突然頭を下げたきたが、少し頭の中を整理したのか1人で落ち着き始めた。
「あの……助けてくださってありがとうございます」
頭の中が整理できたのか、さっきまでの状況を思い出したようだ。
「気にしないで! それよりどうして気絶していたんだ? 」
「それが、クエスト中だったんです……」
クエスト?とセレスティアに聞くと、教えてくれたが、この世界には冒険者ギルドというものがあって、そこで冒険者になるとその人にあった難易度のクエストが受けることができるそうだ。
時間があったら冒険者ってのもいいな。
「で、クエスト中にやられたの? 」
「はい、でもこんなはずじゃなかったんです……」
この女の子はミア・ローズ、そこの倒れている男はカイル・ブレイズという名で、魔術学院の生徒らしい。
普段はありえないが、2人に行ってほしいクエストがあると知らない人に声をかけられたそうだ。
それは本来ただの採取クエストで、この近くの古代遺跡アルカニウム内でエーテル原石という素材を取りに行くだけだったのだが、遺跡の奥に見たこともない巨大ゴーレムがいて、歯が立たなかったという。
それで命からがら脱出したものの力が残っておらず、外の魔物にやられる始末……
「なるほどな、それは災難だったな 」
「いえ、本当に助かりました 」
すると、もう1人のカイル・ブレイズも目が覚めたようだ。
「うおぉぉぉ! よく寝た!! 体力が回復してるぞ!! 」
なんだか、起きた瞬間、俺らの周りの温度だけ上昇したんじゃないかと思うほどの暑苦しさを感じる。
まぁ目が覚めてよかったよ。
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