第9話 思わぬ登場人物

俺は高橋 春陽はる

 高校2年生にして異世界転生者であり、このエメラルドヴェールの英雄という扱いだ。

 今俺は応接……じゃなかった、玉座の間つまり王様の部屋にいる。


 対面には王様エルミンが座っており、その横に側近騎士且つ翠影の守護騎士団団長セリオン、さらには目の前のテーブルに神セレスティアがこちらを見ており、なぜか皆、疑惑の目をこちらに向けている。

 そう、なぜか俺は質問責めに合っているのだ。

 その理由は明白。

 

「もぉ〜なんなのぉみんなこっち見てさぁ…… 主様あるじさまが悪いことしたの? 」

 

 おれの隣で能天気に話しているこのお子様のせいだ。

 こいつはエレナ・シャドウウィスパー。

 お名前で察しの通り『魔族』だ。


 こいつが俺の前に現れたのは玉座の間に初めてきた次の日、街を見回っていた時のことだ。


 ◇


 外を見てみたくて城から出てきたけど、やっぱり昨日の今日だな。

 あちらこちらで街の復旧作業をしている。


「大変そうだなぁ」


 そうぼやくと、周りにいた人達は手を止めてこちらを見てきた。

 頑張ってる人達にいらないことを言ったかもしれない……

 申し訳ないなと思っていると、


「あれ、英雄様だ」「ほんとだ」「昨日はありがとよー!」「きみのおかけだ!」


 思っていた反応と違う。

 いつの間にか俺の周りには街の人々で溢れており、数え切れない感謝、尊敬の言葉が舞っていた。

 改めてこの街を守れたこと、心からよかったと思えた。


 少し街の皆と話をした後にその場を去った。


 街をひと回りし、城へ戻っている最中、後ろからずっと視線を感じる。

 振り向いて見ても何もいない。

 わずかに感じる魔力の方を見ても姿は見えない……いや、なんかしっぽだけ浮いてる?

 ちょっと引っ張ってみるか……

 

「い〜やんっ! 」


 おれがわいせつ行為をしたかのような反応をしながら姿を現した。

 どうやら魔法か何かで姿を消していたが、しっぽだけ消せてなかったのだろう。

 その姿はあらかた『魔族』で間違いない。

 この街を襲ったリリスなんとかと似たような黒のドレスにローブを羽織っている。

 それが『魔族』特有の正装というやつなのだろうか。

 ただ比較をすると目の前のこいつは少し幼い。

 見た目だけでいうと15歳くらいだろうか、中学生くらいに見える。


「ちょっと……そんなところ触るってことは責任とってくれるんだよね? 」

 

 と言いながら目の前の『魔族?』はモジモジと照れている素振りをしている。

 え、しっぽ触るって魔族界隈では求婚的な意味だったりするの?困るよ、おれ。

 とりあえず話題を変えよう。


「そ、それより俺の後つけてたってことはなんか用事あるんじゃないの? 仲間の敵討ちとか? 」


「敵討ちだなんてぇそんなことしないよぉ 」


「じゃあなんだ? 」


「聞いてくれるの? やっぱり優しいっ。 実はね、魔族滅ぼしてほしいんだ! 」


「……ん? なんだって? 」

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