フレアと魔法の剣

1. 星のように輝くものたち

剣を大きく振り回した。


「ヘル、ごめん、そっちに行ってしまった」


ヘルが自分のところに飛んできたヨツンを斬り捨てながら話した。


「フレア、相変わらず最後がずさんだ」


私はヘルを見ながら両手を合わせて言った。


「ごめん、ごめん」


「ほらー、フレアには剣が似合わないんだって」


「何? 私は剣で有名になろうと決めてるの!」


私に剣が似合わないと言うのは、シードホートの鍛冶屋で働く見習い鍛冶屋だ。

この男は私を見てからまもなく、私の剣の腕前を見てあのように言った。

率直に言って、私の剣の実力はまだ自慢できる水準ではないが、

だからといってあきらめるつもりはない。


「ハハ、そうだ、フレア。剣は捨てて金づちを持った方がいい、君には才能がある」


黒い毛で覆われ、体が丸い大きな石のようなドワーフが

私を通り過ぎ、ヘルの方に大股で歩きながら話した。


遠くから見ると白く輝く目だけが見え、黒い綿の塊のように見える。


彼はシードホートの鍛冶屋で働く鍛冶屋の一人だ。

この二人は最近、私にずっと冒険家を辞めて鍛冶屋の仕事をしろとしつこく話している。


「ふん、そう言っても、私は変えるつもりはないよ」


彼は自分の金づちで死んだヨツンの胴体を軽く叩いた。

ガラスが割れるような音がして、胴体の破片が割れた。


私はドワーフに近づき、不思議そうに見ながら話した。


「へぇ、こうやるんだ。 これで魔法の照明を作るって言ったよね?」


青い光を放つクリスタルのような尖った形のヨツンから

小さなクリスタルのかけらを持ち上げて日光に照らしながらドワーフが話した。


「そう、こいつらは夜になると光を放つ。

その光に惑わされて近くに行ってこいつらの餌食になるから、

こんなに昼にこいつらを探さないといけないんだ。

昼間は隠れていて探すのがとても面倒だ。

それに、早くてよく逃げるんだよ」


「あの、師匠、こいつはどうするんですか?」


「うーん、まだ体に覚えさせてないのかい?」


「できるまで自分でやれ。

台無しにしたら、それはお前の給与から差し引くぞ!」


「えっ!師匠!」


私はその姿を見て『ざまあみろ』と思い、一人で笑った。


ドワーフはヘルが始末したヨツンからもクリスタルのかけらを取り出して言った。


「やっぱりヘルは鋭いね。

こうやってクリスタルに損傷なく処理すれば、私たちも助かるね。 クハハハ」


私たちは現在シードホートの魔法使いの依頼で働いている。

《私たち》と言っても、ローレンは《黒い門》について調べるために

シードホートの図書館にこもっている。

私とヘルが主に依頼を受け、こうしてヨツンたちから様々な材料を収集している。

シャーリンは私たちが滞在しているシードホートの宿舎の厨房で仕事を手伝っている。

私は熱い日差しを照りつける空を眺めながら話した。


「もうこんな季節になったね。 だんだん暑くなる」


私たちは《黒い門》にまつわる一件があった後、【ローズル】方に行く船に乗る為に、【ガングラード】から【港町パルマグド】に向かった。

しかし、パルマグドに到着して知ったのは、西へ行く船がしばらくないという事実だった。


結局、再びガングラードに戻り、バルダーの神殿で世話になり、船が再び来る時を待った。


あれだけ紆余曲折の末に乗った船だったが、ローレンはとても苦労した。


「う~うわぁ!うっー、に、二度と船には乗りたくない」


「ローレン、大丈夫?」


ローレンは青ざめた顔で苦しそうに言った。


「ふぅ、だめだ。

フレア、は、ハーグビルクに着いたら、おー、起こして。

うううぅー。スバフニール」


ローレンは自分に魔法を掛けた。

青ざめた顔は徐々に生気を取り戻し、穏やかな表情で深い眠りについた。


ローズルの港町である【ハーグビルク】に到着しても、

ローレンはすぐに起き上がれなかった。


私が鼻をくすぐったり、頬をつねったりしたが、

ローレンは起きず、変な寝言ばかり言った。


数日後、ローレンが目を覚まし、私たちはシードホートに向かう馬車を探しに出た。


「あーー、私がそんなに長く寝たなんて」


「私はローレンが起きないから心配したよ」


「ごめん、私のせいで時間を遅らせた。早くシードホートに行こう」


宿から出てきた私たちはローレンについて行った。


「あ、そうだ。

その前に立ち寄る所があるんだ」


突然、ローレンはあわてて来た道を曲がり、別の道に入った。


シャーリンが話した。


「あ!いいにおいがしますね」


私も目を閉じて、においをかぎながら話した。


「ふん、本当だ!」


ローレンが話した。


「ふふ、この前、ここに来た時に偶然見つけたお店だよ。

これは絶対ノーブルとトニーおじいさんも喜ぶと思うよ。

だから、これは必ず買っていかないと。私たちはここで食べて行こう?」


「はい、いいですね」


「私もいいよ」


ヘルは何も言わなかった。


小さなお店だったが、人でいっぱいだった。

私たちは中で食べ物を買って出て、歩きながら食べた。


「うわー、美味しい!これは何だ。 このなめらかなクリーム!

私もここを通ってへーニルに行ったけど、こんな店があるとは知らなかったよ」


柔らかいパンの中には、雲のようななめらかなクリームがいっぱい入っていた。


シャーリンも幸せそうな笑みを浮かべて言った。


「私も知りませんでした。 とてもおいしいですね」


ローレンは口いっぱいにクリームのつけたまま話した。


「私はどこに到着しても、そこにおいしいものが何があるのか探し回るんだ。

フフ、あの時もあんなに並んでたから、『あれは絶対おいしい』と思って行ったら、正解だったよ」


しかし、すぐにローレンの顔が少し暗くなり、話を続けた。


「前に、へーニルに行く途中で食べようと思ってたくさん買ったけど、

船に乗って食べたら全部吐いちゃったよ」


昔、ハーグビルクに一人で来て、震える気持ちでへーニルに向かう船に乗ったことを思い出しながら、私は話した。


「初めてここに来た時、とても興奮して船のところまで行って待っていたの。

そうしているうちに他の船を見たり、荷物を運ぶのを手伝ったりしたよ。

また戻ってくるとは思わなかったけど、こうしてあなたたちと一緒に戻って来たね」


シャーリンはあたりを見回して話した。


「ここは初めて来ましたね。

アルダフォードから来た馬車は北の入り口の方に近かったです。

私はそこから下に降りて船に乗りました」


私もやっとあたりを見回しながら話した。


「あーー、そう言われたら私もこっちは初めてだ」


ローレンが話した。


「シードホートはここから西に行かなければならないから、

西の入り口の方に集まっているよ。

それに、アルダフォードと仲も良くないからね」


いつの間にか私たちは大きな広場に出てきた。

広場の前には、ガングラードで見慣れた建物が目の前にあった。


「え、魔法使いギルドなんだよね?」


「そう、ここにギルドがあって、倉庫も全部こっちにあるの」


周りを見回すと、馬車が荷物を積んで出発の準備をしていた。

ローレンは馬車に向かって歩きながら話した。


「ここには商人ギルドも一緒にいて、

魔法使いギルドで整理した品物を商人ギルドの人たちが

馬車を利用してシードホートに移動させるんだ」


ローレンは商人ギルドの人と見られる人に近づいて話した。


「私たちは4人でシードホートに行きたいです」


商人ギルドの人はローレンを見てから私たちを見て微笑みながら言った。


「はい、魔法使い一人に冒険家三人ですね。

ちょうどいい馬車がありますね。 私についてきてください」


私はローレンに追いつき、静かに話した。


「ローレン、あなたが魔法使いだとどうしてわかるの?」


「商人たちは記憶力がいいんだよ。

一度見たことのある魔法使いたちは、

わざわざ魔法使いの帽子や《グレムニル》を見せなくても分かるんだよね」


商人は一つの馬車の後ろで立ち止まり、私たちに話した。


「はい、ローレンさんはシードホートでも有名ですからね。

さて、この馬車です。 冒険家の方はこの馬車の護衛をお願いします。

もちろん、ローレンさんもお願いします」


こうして私たちは馬車に乗ってシードホートへ出発することになった。

冒険家たちは馬車の護衛を頼まれ、シードホートへ行く馬車に無料で乗れるという。

もちろん、魔法使いはいつも無料だそうだ。


商人のおじさんは馬車を走らせながら私たちに話しかけた。


「これは、これは、よろしくお願いします。

私のような商人にこんなにたくさんの方々が護衛でつくなんて、

ありがとうございます。 ハハ」


ローレンは商人を見て話した。


「おじさんは商人ギルドの人ではないようですね」


「はい, そのとおりです」


私は気になって聞いた。


「ローレン、どうしてそんなことがわかるの?」


ローレンは馬車の胴体を指差して話した。


「ギルドの馬車にはギルドの紋様があるの」


「え、そんな商人もいるんだ」


「はい、商人ギルドは魔法使いと緊密な関係を維持して働きます。

魔法使いと関係が良くないアルダフォードは、

自分たちの土地で商品を販売するための条件として、

魔法使いとの関係を切ることを求めました。

結局、アルダフォード側にはギルドの商人たちが入らなくなりましたね。

だから、私たちのような商人たちが入って商売をするんです」


「ふーん、商人たちはどうして魔法使いたちとの関係を切れないの?」


ローレンが話した。


「商人ギルドは《フルナ》【音が聞こえなくなった者】たちが始めたの」


「《フルナ》?何それ?」


商人が言った。


「魔法使いになれなかった者たちです」


ローレンは外を見ながら話した。


「魔法使いたちが何を作ることができ、

それがどれほど価値があるかを見つけ出したのが《フルナ》たちだよ」


「じゃ、魔法使いたちが彼らに何か魔法でもかけたの?

自分たちと契約するように?」


商人が笑いながら話した。


「ハハハ、魔法ですか? 彼らは商人です。

誰と一緒にいるのが自分たちにとってより

利益であるかを考えるなら、当然の選択です」


ローレンが話した。


「その逆だったよ。

《フルナ》は魔法使いたちに自分たちだけに物を供給するよう求めた。

魔法使いたちはお金に興味がないし、管理もできないから、《フルナ》たちに全部任せたよね」


ローレンは商人を見て話した。


「じゃあ、おじさんはなんでシードホートに行くの?」


商人は私たちに話した。


「私はこのように商人ギルドで馬車が足りない時に助ける仕事をします。

そして、代価をもらいます」


そして商人は意味深長なように微笑みながら話した。


「アルダフォードから商人たちが去ったが、

アルダフォードの人々は魔法使いたちが作ったものを欲しがってます。

私のような人たちは、音を聞くことはできませんが、匂いはよく嗅ぎます」


私は気になって聞いてみた。


「何のにおい?」


商人が答えた。


「お金です」


「基本、質のいい物はアルダフォードで売ることはできないです。

私がアルダフォードで売る物は商人ギルドで商品になれなかったものです。

そんな物を代価としてギルドからもらい、売ります。

それでもそこでは高く売れますね。ハハハ」


商人が静かに話した。


「たまに【アルダフォード】のお金持ちは、【ハーグビルク】まで行って、

こっそり商人ギルドで物を買う人もいるらしいです。

アルダフォードの偉い人たちに発覚されたら、大変なことになりますけどね」


いつの間にか私は話を聞く途中に、眠ってしまった。


「フレア、起きろ! もうすぐだ! シードホートだ」


「えっ!びっくりした。 何だよ」


私は驚いて起きた。黒い毛で覆われたまま白い目だけが輝く鍛冶屋が私を眺めて笑った。


「別に何もしていないやつが、そんなに疲れているのか。クハハハ」


「何だよ!私は朝からヘルに剣術も習って、依頼までしてるの。疲れたんだよ!」


見習いの鍛冶屋が外を見ながら叫んだ。


「おぃー、扉を開けてよ!私たちが来たよーー!」


私は眩い光に包まれたシードホートを見ながら言った。


「わぁー、暗くなったシードホートはいつ見てもすばらしいな」

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