【SF短編小説】「未知への憧憬:地球から遠く離れたカロンにて」

藍埜佑(あいのたすく)

1章:深淵からの息吹

 無数の星々が散らばり、星間の空間が文字通り次元をつくり上げるその場所で、宇宙生物学者のアレックスは日常の任務に取り組んでいましたた。

 宇宙から隔離された彼のパーソナルドームは、彼自身の生物学的対話のためのスペース内研究所となっていました。

 彼の眼前には無数の星々が広がり、その一つ一つが小さな生命の家で、途切れることのない探求の道程でありました。

「アレックス、記録もらえる?」

 コンソールから響いたラダの声は、彼の断片的な沈思から彼を現実に引き戻しました。ラダはカロン基地の総指揮官で、そのコミュニケーションラインは常にフランクでした。「もちろん、ラダ。現在までのデータを送信します」

 アレックスは、凝視していた星空に再び視線を戻しました。

 彼の任務は一見すると無性に単純に見えましたが、この使命は彼自身の行動が人類の未来にどれほど影響を及ぼすかをしっかりと理解していました。

 この惑星の生態系に人類が生きることが可能かどうかを判断するという任務は、全ての生命の可能性を評価し、生態系全体のバランスを読み解き、結果を地球に報告するという重大な責任を伴っていました。

 遠く離れた地球の安全と繁栄が、彼の日々の観察と解析にかかっているのです。

「地球へのアップデートは?」

 ラダの再度の問いかけに、アレックスは少し微笑んだ。

「見つけたコロニースペックのデータを更新しました。不定形の生物体を発見し、その中には地球のエコシステムとは全く異なるものもありますが、この地球外のエコシステムが持続可能であるかどうかについては、まだ結論は出ていません」

 彼が話す声は冷静で、慎重な思慮と敬意が表れていました。

 その後何時間もアレックスは観察に没頭し、遠くから見ると無数の星々が彼の視界を満たし、まるで彼がその一部になったかのようでした。それは未知の世界のパズルの一片を解き明かすための旅であり、彼自身が一部となり、周囲の生態系に深く根ざしていく過程でした。

 このタスクは手間がかかり、単純で忍耐がいる試みでしたが、彼の中には新たな驚きと発見の可能性が渦巻いていました。どんな生命が存在しているのか、どんな未来が待ち受けているのか。この一見無骨なデータが語り部に変わり、命の誕生と進化のリズムを形作っていくのです。

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