いじめて、悪役ムーブをかます友達のイジメが可愛い。〜悪と月とエトセトラ〜

ミコトノリ812

いじめて、悪役ムーブをかます友達のイジメが可愛い。〜悪と月とエトセトラ〜





僕には、友達がいる。

しかし、いじめてくる。


そんな友達。


悪役令嬢ムーブをかまして楽しんでいるようだが、そんな友達が可愛い。

だって……。



やってくるのは少々イマイチないじめだからなのだ。


いつもいじめてくるのは『葉梨 実菜はやし みな

高校で、同じクラスになった女の子。

クラスの中心的人物で、悪役令嬢や、悪役姫というのがいいと思う。

だが、いじめてくる理由や固執する理由は一切わからない。

一つわかるのは……。

やってくるいじめが、言ったら悪いが……。

しょうもなく可愛い簡単ないじめ、だったのだ。



例えば、ある日……。


教科書を朝探していたのだが机に置いておいたのになくなっていたのだ。

机の中を見ると、とても綺麗に整頓されていたのだ。

僕がやった覚えはない。

奥の方に教科書は隠れていたが、犯人がすぐにわかることに。

こちらを実菜がドヤっていたのだ。


わかりやすい……。

なんというドヤ顔、まさに小悪魔のようだった。

ある一種の神様かも知れない。

尊い、とだけ叫びたかった。



いじめの定番。『ノートに落書き』は、最初のページの隅にデフォルメされたネコヌッコが描かれていた。

なぜか心が暖まる、でも一応いじめということらしい。

そのようには到底見えない。

可愛い。

ネコヌッコが、毛繕いをしているのか背中あたりを舐めていた。

目を凝らして見るとハートのマークが毛に描かれていたのだ。

えぇ、えぇな〜。


こんな生活が毎日繰り返される。


今日も教室に入ると実菜が。

やってやったと言わんばかりの、ドヤ顔を披露する。

そろそろ拝もうかなぁ。



そんなことより今日のいじめ? は、どこかな〜。

机は特に変わっている様子はない。

椅子も大丈夫、教科書やノートもOK……?

ホームルームが始まる前に見つけられればよかったのだが、それも過ぎてしまった。


ついには、1校時目の体育の始まる時間に迫ってきた。

今日はなんだったのだろうかと頭を悩ませながら廊下を歩く。

男子更衣室で着替えている時。


気づいてしまった。


いつもより長ズボンの丈が長くなっている。

糸で止めておいた所を解いたようだ。

糸屑も、ちゃんとない。


最近、丈が合わなかったところだったのだ。

しかも幸運なことに長さはピッタリ。

長袖もやってくれるなんてことは誰にも言えない秘密だ。


成長期の自分と、やってくれた実菜に感謝だなぁ。

あと神様かな。



「こんなシュチュエーションありがとう」ってね。

まぁそんな言ったって……。




時間に間に合わないよぉ〜〜!!


急げ!

走れ!

進め!


あの体育の先生が怒ると怖いんだよ!!

怒られるの確定だわ!


中庭を走り、校庭に着く。

まだ先生が来ていないようで怒られるということは無いと思う……、多分。

わからないけど。


遅れて先生が来て点呼を取る。

全員揃ったら今日の新しく始める事を話し始める。


「今日から、持久走をしてもらうぞ!まずは体操しろー!」


そう言って生徒を立たせる。

2グループに分かれて体操を始める。

円になると、目の前に実菜がいた。

実菜はとても柔らかく、体育祭では良い結果を叩き出していた。

テストでも、10位以内に入る腕前。

そのぐらい文武両道なのだ。


僕は、普通って感じの結果。

雲泥の差ってやつだ。


なのにいじめてくる理由がわからない。

顔がいいとかも特にない。


同じ様な人はいっぱいいるはず……。

そんな事を考えながら体操をする。

なんでこんなことを考えているか、そんな事はただ一つ。


目の前の実菜のアソコがタキュンタキュンと揺れていたり、体操着服だから。


男の視線を集めるほどある。

そんなものを見て普通でいられるような人は、いない事だろう。


そのぐらいデカい。

うん。


視線を逸らそうとするがなぜか実菜はこちらをジロジロと見つめるのだ。

やめて、周りの男子からの視線が痛い。

何もしてない。


僕は、無実だ。

そんなムッツリじゃない、あんな関係は無い。

あれ……?


ある意味いじめてくる。

悪い意味では無いが、そういう関係でもある。

ものが違うがドMと、いじめる側。


攻めと受け。

見方を変えてしまうとやばい……。


「何ぼーっとしてんだ? 早く走らないと大変だぞ!」

そんな声が聞こえる。

なんだ?

そんな考えを持っていた。

しかし今気づきました。

みんな走り始めている。

30分の内の3分も過ぎている?!


「やば!? 走れ!!」

今日だけで30周する予定だったのに遅れた!!

自分は一心不乱に走り続けた。

数が途中からわからない。


自分は途中で、ドサッと倒れた。

そんな事も気付かないまま意識を深淵に落とす。




======



あれ?

ここは……?

そう起きて見ると保健室の、布団で寝ている。

窓側のベッドのようで昼なのに空には満月が輝いていた。

隣では椅子に座りながらスヤスヤと寝ている実菜が。

可愛い寝顔に癒されたのも束の間、頭がかち割れるほどの頭痛が襲う。

「痛っ……!」

そんな弱音を吐くと、ガバッと実菜が起きる。


「無理しちゃダメじゃない! ……もう知らない」




少しの沈黙のあとすぐ実菜が部屋から出ようとする。

自分は咄嗟に手を掴む。

「……ごめん」



「いいの……」



イヤな空気だ。

咄嗟に繋いだ手を離す。

「今日は満月らしいよ、空にはもう月がある」

そう言ってわざと話を逸らす。


「月が綺麗だね……」

そう実菜はつぶやく。

コレって『あなたが好きです』って意味じゃなかった?



「ッ!! そんな意味じゃないからね!!」

気づいてくれたか。



「綺麗な月を見れて嬉しいです《僕もです》」


自分もそう言葉を投げようとしたが、やはり心の内側に秘めておく。

でもこんなんでもこのいじめ関係が続くといいな、そう満月に向かって祈る。

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