【第五章:渡邊哲郎(2)】
フードコートでは、田畑太一郎と真中しずえの二人はランチを買っており、渡邉哲郎が
田畑太一郎は、どこにでもあるようなハンバーガーのチェーン店で、ハンバーガーとポテトフライのセットを
真中しずえは、タイ料理屋のお店でパッタイと
高野恵美子が
「さてと、そろそろ情報も
「
「はい、そうです。細かいことを付け加えるなら、座談会は午後二時に開始する予定だったのですが、
「なるほど。ありがとう」と、言いながら、渡邉哲郎は
田畑太一郎と真中しずえは静かにうなずく。
「それで、坂井さんが高野さんを
「最初に気づいたのは真中さんです。で、真中さんの様子がおかしかったので、真中さんの
「なるほど、ありがとう。」
渡邉哲郎は手帳に何かを書き加え、そして手帳から目を
「その後は、坂井さんが会議室に戻ってきて、彼女もそのタイミングで高野さんが会議室の中で倒れていることに気がついた、と。」
「はい、私たちは、そこで初めて倒れている人が高野さんだと知ったんです。私も田畑さんも、高野さんとはお会いしたことがなかったので。」
「そうか。それは大事なポイントだね。で、君達は三人で
「はい。最初はしずえさんが一人で呼びに行くと言ったんですが、えっと、こういうことを言うのは良くないんですが、ちょっとあの場に残っているのは
「それが普通の
「そうです。あの日は自分たちは一度も階段は使いませんでした。あと、少しだけ付け加えるなら、三人で守衛さんを呼びに行ったとき、会議室のドアは
「ドアを閉めたのは田畑君だったっけ?」
「はい、そうです。ドアを閉めたあとに、ドアノブを
「そうか。でも、守衛と
「そうです。」
「で、守衛が鍵を開けて会議室の中には入ったら、
田畑太一郎と真中しずえはうなづく。
「守衛を呼びに行ってから会議室に戻ってくるまではどのくらいかかったんだっけ?」と、渡邉哲郎が聞くと、「十分はかからなかったと思います」と、真中しずえが答えた。
「下に降りて上に上がってで十分か。エレベーターを使ったんなら、もっと
そして、「ということは、
三十秒ほどの
「
「それは田畑君だったら不可能ではないということ?」
「え?」
「ああ、ごめんごめん。ちょっと
「あ、なるほど、そういう意味ですね。えっと、
「
そう聞かれた真中しずえは、
「いえ、大丈夫です。すみません。お
「そうか。まあ、こんなこと聞くのもなんだけど、彼女の
「いえ、普通っぽい感じでした。
「なるほど。では、大人の男性なら、一人でも
「あの・・・
「僕もそこは
田畑太一郎と真中しずえはお互いの顔を見る。
「守衛と会議室に行ったときも、そこから一階に
「はい。そうだったように思います。田畑さんはどうですか?あのとき、何か気づきました?」と、真中しずえが聞くと、田畑太一郎は首を横に
その場に
「女性でも高野さんを移動するのは可能だっただろうか?」と、バックパックから小さな
「私一人だとちょっと
「そうか・・・。でも、会議室に何か引きずったあとが残っていたかはわからないんだよね?」
「はい、あまり覚えていません。すみません。」
「自分もそこまで注意して見てませんでした。すみません。」と、田畑太一郎も答える。
「いや、そんな
え?という顔をした二人に向かって、「知り合いが日本から遊びにきてね、お
田畑太一郎と真中しずえは
「あ、美味しい」と、真中しずえは一口食べてからそう言った。その
「二人のお口に合ったようで安心したよ。この
そして、「ところで、先ほどの話に戻るんだけど、倒れていた高野さん、あえて高野さんの
「
十五秒ほどの
「そうですね。自分が
「私のところにもありますね。たしか、坂井さんの研究室にもあったし、
そう真中しずえが言ったので、田畑太一郎は真中しずえに、「連絡通路に台車なんかあったっけ?」と聞いた。
「あ、はい。なんか、あの
「そっか、俺は気づかなかった。真中さん
「え?いえ、たまたまです。」
「台車とかがそこら辺に普通に置いてあるということなら、
そのことを口にすべきかどうか田畑太一郎が
「あの、高野さんがあの日いなくなったあとも、彼女のIDリーダーの
「え、そうなの?」と、渡邉哲郎は
真中しずえは、二人がそんなに
「高野さんが実は生きている?いや、高野さんはおそらく
「はい。渡邉さんが今おっしゃった
「
田畑太一郎は「え?」と言ってから少し考えて、ハッと何かに気づいたような表情をした。そして、「犯人が、高野さんが持っている何かを探しに来た、ということは考えられないでしょうか」と言った。
「うーん、どうかな。
しかし、真中しずえは「でも、それが正しかったら、高野さんは
「はじめに高野さんの
「じゃあ、高野さんは、婚約者からその『何か』を預かっていたのかもしれないですね。」
「で、今になって犯人が、いや犯人たちが高野さんがその『何か』を持っていることを
「ま、ちょっと
「でも・・・」と田畑太一郎が何かを言いかけようとしたとき、真中しずえが「もしかして、かなえさんも危ない?」とボソッと言った。
「え、どういう意味?」と田畑太一郎が
しかし、真中しずえは、渡邉哲郎の反応には気づかなかったようで、「昨日の食事の最後の方はかなえさんはかなり
「ガーベラ・・・」と、田畑太一郎がつぶやいた。
「え?」
「真中さん、ガーベラって知ってる?」
「お花のですか?」
「いや、花のガーベラではないんだ。」
「お花じゃないガーベラはちょっとわからないです。それって何ですか?」
「うん、ちょっと
「はあ・・・。そのお話は初めて聞きました。でも、にわかには
「いや、わからない。俺も
「でも、それと今回の高野さんの件は何か関係があったりするんでしょうか?」
「高野さんが狙われた理由の『何か』が、ガーベラが
真中しずえは、あまりの
「渡邉さんは『ガーベラ』のことをご
「え?僕はその『ガーベラ』とかいうのは知らないけど、何で僕が知ってると思ったの?」と、話を
「いえ、渡邉さんは色々なことをご存知なので・・・」と田畑太一郎が話している途中で『ピーン』と
「あ、すみません、お話中に。かなえさんからメッセージが来たみたいなので、ちょっと失礼します」と、真中しずえが
そして、携帯電話から目を離して、二人の方を向いてから「かなえさんが近くにいるようなので、ちょっと
「かなえさんが来てくれるんだね」と、さっきまでは
真中しずえは
***
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