花に想いを
平 遊
第1話
「……あれ?」
二学期も終わりに近づいてきたある日。
家に帰ろうと麻里が靴箱を開けると、そこにはあるはずのないものがあった。
それは、可愛らしい押し花の栞。
「おっ、イカリソウじゃん」
ちょうど帰りが同じになった康太が、後ろから覗き込んで驚いたような声をあげる。
「イカリソウ、って言うんだ。さすが花屋の息子!」
「まぁな。で?どうしたんだそれ?」
「えっ?康太がくれたんじゃないの?」
康太は、麻里の幼馴染で花屋の息子だ。
麻里の頭には真っ先に康太の顔が思い浮かんだのだが、
「は?なんで俺がお前に押し花なんてくれてやんなきゃならないんだよ?」
と全否定された。
「日頃の、お礼?」
「なんの礼だよ?別になにもして貰ってねぇけど?」
「じゃあ、いったい誰が……」
呟きながら、麻里はそっと栞を手に取り鞄にしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます