花に想いを

平 遊

第1話

「……あれ?」


 二学期も終わりに近づいてきたある日。

 家に帰ろうと麻里が靴箱を開けると、そこにはあるはずのないものがあった。

 それは、可愛らしい押し花の栞。


「おっ、イカリソウじゃん」


 ちょうど帰りが同じになった康太が、後ろから覗き込んで驚いたような声をあげる。


「イカリソウ、って言うんだ。さすが花屋の息子!」

「まぁな。で?どうしたんだそれ?」

「えっ?康太がくれたんじゃないの?」


 康太は、麻里の幼馴染で花屋の息子だ。

 麻里の頭には真っ先に康太の顔が思い浮かんだのだが、


「は?なんで俺がお前に押し花なんてくれてやんなきゃならないんだよ?」


 と全否定された。


「日頃の、お礼?」

「なんの礼だよ?別になにもして貰ってねぇけど?」

「じゃあ、いったい誰が……」


 呟きながら、麻里はそっと栞を手に取り鞄にしまった。

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