第1話 

「え...リストラ?」

「ああ、就いてすぐで悪いけど...」


俺、社 大樹 23歳

やっとの思いで就職した会社は経営難で解雇されてしまった。

突如として発生したダンジョンは世界の産業という産業に大きな影響を与えた。元々石油によるエネルギーに各国は頼っていたがダンジョンから取れる魔石が何十倍ものエネルギーを生み出すことが判明、それによってすぐさまエネルギーを石油から魔石へと急に変えたことで石油産業は大打撃を受けた。それは子会社だった俺の会社でも例外ではなかった。

 

「はぁ〜やっと就職できたと思ったのになぁ〜」


トボトボと肩を落として明るい夜道を進んでゆく。


「今日は俺、トロールを狩ってやったぜ!」

「え〜すご〜い」

「一匹で100万!いや〜人生勝ち組や!...うっわ何だあれ」

「え〜そんなこと言っちゃだめだよぉ」

「あんなのは人生負け組だろ!今更会社で働くなんてバカのやることだぜw」


・・・はぁ


俺には探索者なんて無理だ...昔っから何か突発的に来るもんにはトラウマがあって運動はあまりやってこなかった。特にサッカーとかバスケとか。自分には探索者は合わない。そう思っていたから会社で働くことにしていた。安定した収入は危険なことをして大金を得るぐらいだったらいいと思っていた。


そんな感じでふらふらと駅に向かう。時刻は23時59分。残りの電車は後一本。自販機でココアを買って席に座る。甘いココアが失業した暗い心がゆっくりと明るくなっている。


「とりあえずバイトして...できなくなったら社会保障受けるかな...」


今後のことを考えつつ電車を待つ。


『♬〜』


『まもなく二番線に各駅停車取手行きが参ります。危ないですから黄色い線までお下がりください。』


『Your attention please,

The Joban train, bound for Toride, will soon arrive at track No.2.

For your safety, please stand behind the yellow line.』


ガタンゴトンと電車がホームに入線してきた。最終列車の割には人が少ない。金曜日だからだろうか。みんな早く帰っているんだろう。そう思いながらドアに近づく。


『上野、上野。ご乗車ありがとうございます。』


人が出ないことを確認して、すぐそばの席に座った。


『♬〜』


ドアが閉まりゆっくりと電車が進み出す。ガタンゴトンと音を鳴らしゆらゆらと車体が揺れる、まるで揺り籠のように。瞼が重くなってきてゆっくりと目を閉じる。すっと意識を手放して悲しい現実から逃げ出した...


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

作品内に出てきた電車は上野発各駅停車取手行きの常磐線です。

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