第27話 婚約者の親友とデートする(誰かがチラチラ見ている

「おはようございますっ! アル様っ!」


 午前11時。


 セプテリオン学園の正門前で、俺とリーセリアは待ち合わせた。


 黄色いドレスと、赤いベレー帽を被ったリーセリア。


 桃色の長い巻き髪が、風でふんわりと揺れる。


 (すげえかわいいじゃん……)


 原作でリーセリアは、レギーネの親友キャラとして登場する。


 主人公ジークの攻略対象だ。


 親友のレギーネがジークを好きになって、レギーネの恋愛を応援するが……


 実はリーセリアも、ジークを好きになってしまう。


 だからプレイヤーは、レギーネとリーセリア、どちらを選ぶか迫られる。


 もしもどっちつかずの選択を続ければ、2人(レギーネ、リーセリア)とも病んで、学園を自主退学してしまう。


 つまり、バッドエンドを避けるためには、どちらかを捨てないといけないわけだ。


 だから俺は、レギーネ√もリーセリア√も避けていたのだが……


 このデートは、レギーネ√とリーセリア√の共通イベントだ。

 

 これからの選択次第で、どちらの√に入るか決まってしまう。


「おはよう。リーセリア」

「実はおいしいアムザックのお店があって……アル様と一緒に行きたいんです。アムザック好きですか?」


 アムザックはベンツ伯爵領の郷土料理。


 三角形のパイ生地に、牛肉と野菜とスパイスを詰め込んだ伝統食だ。


 前世の料理で言えば、ミートパイに近い。


「アムザック、好きだよ」

「よかったですっ! さっそく行きましょう!」


 明るく笑うリーセリア。


 学園に来るまでは、レギーネ以外の令嬢とはあまり話せなかったら新鮮だ。


 (レギーネはいつもブスッとしてたからな……)

 

 ★


 俺とリーセリアは学園を出て、王都の街を歩いた。


 王都の南にある、商業地区だ。


 国王公認の商会があり、出店がたくさんある。


 休日は、学園生で賑わっていた。


 ブラント商会通り、という大通りをしばらく歩いて、路地に入る。


「ここにお店があるんです。あんまり知られてないお店だけど、すごくおいしくて」


 こじんまりした店が見えてくる。


 たしかに知る人ぞ知る店、と言った感じだ。


 (肉を焼くいい匂いがするな……)


「あれは……?」


 近くの垣根に、見覚えがある女の子が。


 チラチラチラチラ「…………」


 (めっちゃくちゃこっちをチラチラ見てる……)


「レギーネ……? ここで何してるんだ?」

「…………?!」


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