第18話 アルフォンスこそあたしが求めていた人材 オリヴィア視点

 私はオリヴィア・フォン・アルトリア。


 アルトリア王国の第二王女だ。


「この国は腐っている……」


 貴族は高い地位に胡坐をかき、亜人は差別されている。


「でも、ヴァリエ侯爵は——」


 怪我をしたエルフの女の子を助けた。


 周りの貴族たちが、みんな無視する中で、


 颯爽と現れて、女の子を癒した。


「ヴァリエ侯爵は必要な人材ね……」


 なんとしても引き入れなければならない。


 あたしの「計画」に――


「ふふふ。オリヴィア様、いい人を見つけたようですね」


 あたしの専属メイド兼騎士の、アイシャ。


 犬人族で、頭に白い犬耳と腰からもふもふの尻尾が生えている。


 忠実で絶対に裏切らない、計画のメンバーだ。


「ええ。ヴァリエ侯爵こそ、あたしが求めていた人材」


 ヴァリエ侯爵は新入生であるにもかかわらず、上級治癒魔法のハイヒールを使った。


 レベル50以上の大聖女が使う、高度な魔法。


 何年も魔法の修行をして、やっと習得できるはずなのに……


「尋常ではない、魔力を持っていますね……」

「しかも無詠唱だったわ。規格外の才能よ」


 ヴァリエ侯爵は、上級魔法を無詠唱で発動した。


 複雑な術式を持つ上級魔法を使うには、大量の魔力と、大量の魔力を操るセンスが必要……


「普通はあの若さで、あれだけの才能があれば、もっと傲慢になってもいいのに」


 アルトリア王国は、剣よりも魔法が優遇される。


 魔法は貴族のみが使えて、剣は平民が使うもの。


 魔法至上主義の国で、魔法の才が将来を決まる。


 だから魔力の多い者は、周りが持ち上げまくる結果、どんどん傲慢になっていく。


「女の子の母親が、お礼に銀貨を渡そうとしていたけど……断っていた」

「そうでしたね。【困っている人を助けるのは貴族の義務だから】と言ってました……」


 ノブレス・オブリージュ――高貴なる者の義務。


 ヴァリエ侯爵は、本物の貴族の素質がある。


 今、王国に蔓延っている、傲慢で怠惰な偽貴族たちとは違う……


「ヴァリエ侯爵の能力は凄まじいです。ですが、一度姫様のお誘いを断ったのは不遜です」

「……そうね。たしかに断れたのは少し気になるわ。でも何が理由があってのことよ」

「でしたら——」

「ヴァリエ侯爵を探ってちょうだい。交友関係から趣味、あと……女性関係も」

「? ヴァリエ侯爵の女性関係も、ですか?」


 アイシャがあたしの顔をまじまじと見る。


「あっ……あのね。深い意味はないのよ? ヴァリエ侯爵のことをもっと知りたいからってだけで……ね?」

「はい……そういうことにしておきます」

「もおっ! 本当にそんなじゃないからねっ!」

「ふふ。姫様はわかりやすいですね」


 アイシャにからかわれるあたし。


 (本当に本当に、そんなんじゃないから……っ!)


 お茶会がすっごい楽しみ。

 

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