第20話 裾
ロケット花火に、ネズミ花火、噴火花火……。時間をかけて花火を減らした。残るは線香花火のみ。
「勝負だな。最初に落ちた人はさっきのダンスをもう一回やろう」
「いいねー、
「なんで私の企画が罰ゲームなのよ!」
「僕があたるのはごめんですけどね」
というわけで、始まったわけだけど、20秒行かないくらいだろうか、まだ誰も落ちていない。長い……よね?
ポトッ。
あ!
「ありゃ、由紋さん、誰とダンスするか考えといてくださいねー」
意地悪く愛桜ちゃんが言う。そして全員の火種が落ちた。
「さて、由紋さん誰にします?」
「……」
「決まってなかったら二番目に落ちた雫さんと」
「……くん」
「香くん! お願いしていいかしら?」
へ?
「いいけど、いいの?」
「ええ、もちろん」
由紋ちゃんは美女と野獣の曲をかけた。さっきとは違い、外で音楽が流れている。ネイルで紅くなっている指を気にしながら僕の手を掴む。最後、吸血鬼はその紅い唇で僕の気を吸うように口を塞いだ。それが終わるとまた顔を真っ赤にしている
「ゆ、由紋さん、そろそろ
「愛桜ちゃん、もう帰ってきてるみたいだね」
既に僕の視界には彼がいた。
「泰ちゃん、おいで!」
さっきと同じように腕を開いたが、お腹に飛び込んできたのは小5とは思えない強さのグーパンチだった。
「あの! ごめんなさい、メイドさんにグーパンはダメでしたね。でも、これ以外思いつかなくて」
「そっか。あの子は
僕は頭を
「うん。この後、家で少し遊ぼうかってなって」
「
「うぇっ!? 佳歩、なんでいんの?」
愛桜が反応した。
「なんでって、泰輔くんが言ったでしょ。遊びに来たの」
「そっか……。由紋ちゃん! これで企画終わりだね? 今日はみんなあざした。千円あれば、足りるかな? じゃ、お
「ちょっと……」
愛桜ちゃんは
「えっとー、終わろうか」
由紋ちゃんが悲しそうな顔をして言った。
「じゃあ会計しましょう」
花火と野田くんたちが持ってきた大袋のお菓子を割り勘して終わることにした。
僕は衣装のまま外に出ていた。
中に入ると、彼女のお母さんが出迎えてくれた。毎週毎週来ているので覚えられている。最初、あったのは運動会の前の週末。あのときの少女が男だと伝えたときは動揺していたが、雫の親だからなのか、すぐに受け入れてくれた。
部屋に入ると雫はすぐに抱きついてきた。ぎゅーっと、放さないといつもより力強く。
「ご、ごめん。寂しくなっちゃって」
目元の涙を指で拭いてあげる。
「ずっとこうしていたい」
“寂しい”の言葉がなぜか重くのしかかる。
「少しはいいよ」
こちらからも抱き返す。
「ねぇ香、こっち向いて」
「どした?」
振り向くとすぐに視界は暗転し、先ほどよりも柔らかい彼女の唇が僕の唇にあたった。
教室の本の虫、つついてみたら「愛しい妹」になりました。 玄瀬れい @kaerunouta0312
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