第8話 フェミニズムは男性的ゆえに失敗している。

 フェミニズムの歴史は入門書などがいっぱいありますので、そちらで…と言いたいところですが、簡単にまとめると本質的には「家父長制」との戦いの歴史です。


 家父長制とは資本主義的な社会の枠組みの中で、男性が外で働き女性が内で家事・育児・出産を担う構造のことです。そしてそこに権力構造として男性が女性に優越的な立場になることが問題とされています。


 女性が、家事の経済価値の算出にこだわるのは男性の経済的な付加価値を生み出す「労働」に対して女性の労働は「再労働」として搾取されている、という理屈からです。

 また、出産・中絶の権利を握ることにこだわるのは、これが資本主義的な金銭による男性支配に対抗するための、女性の社会構造に対する反乱だからです。


 こういうことを考えると、言っていることはわからなくなないですが、しかしどうでしょう?男性社会というのは男性が作った社会でもあります。それが女性の「搾取の上に」作られているというのであれば、女性が搾取されない社会は資本主義的であってはいけないと思うわけです。


 フェミニズムの言うところの家父長制と同じ構造が現在の社会ではフラクタルのようにどこでも出てくるはずです。それは資本主義が男性社会だからです。その点はフェミニストも認めています。今の社会は男性社会です。つまり資本主義的な民主主義とはイコール男性社会のことです。もっと言えば宗教・言語・思想。すべてが男性の持ち物です。そこをずらさないと勝ち目はありません。だって土俵とルールが男性的なのだから。

 それなのに戦い方が非常に資本主義的なんですよね。そこに疑問があるわけです。というかフェミニズムのゴールイメージが男性社会で女性が男性化すること。悪く言えば「貰い物をどうやってもぎ取るか?」という風に見えます。


 いくつか考える道筋があると思います。女性社会とはなんでしょうか。女性が男性社会=資本主義の中で男性化することでしょうか。女性が女性らしい持続可能な新しい社会制度を提案することでしょうか。共存するための資本主義社会の修正でしょうか。


 性的な快楽の分配の話もありますが、これとてペニス=ファルスという心理学的な概念にいきつけば、資本主義はファルス的です。攻撃的で権力的です。男性そのものとしか言いようがありません。この世界での価値を求めるなら、女性の立場は変わらないでしょう。金銭とペニスの有無で戦う戦い方は男性の戦いかたですので、男性化するしかありません。ジェンダー論を採用してもなぜかその価値観は男性的です。


 で、そもそも本当に資本主義の家父長制では女性は迫害されているのか?に立ち戻る必要があると思います。その迫害とは資本主義的な力関係だけではないでしょうか?

 キリスト教…特にプロテスタントにおける天職・予定説に引っ張られて、労働=権利というのが本当に正しいでしょうか?


 社会システムが資本主義的である以上、その尺度で見れば「ほら、女性が虐げられてきた歴史があるよ」と言うのかもしれません。しかし「多様性」の時代です。多様性を趣味嗜好思想性認識の違いを許容する程度の軽い意味でとらえるから、単なる我儘になるのです。人間的に不自然なのです。失敗するのです。


「多様性」はレヴィストロースまでさかのぼれば様々な「文化」「価値観」を否定しないことです。プロテスタンティズム的な資本の利殖こそすべてという資本主義社会の視点で男女を考えるのが本当に正しいのか。


 そもそもフェミニズムの論客は暴力的で破壊的で非常に男性的ですよね。フェミニズムという闘争がそもそも男性的な方法論なのです。

 戦略を変える必要があるでしょう。ひょっとしたら何百年もかかるかもしれません。だって言語や宗教、社会体制を変革しないといけないのですから。言語とは看護婦を看護士に言い換えるとかそういうことではありません。潜在意識にまで入り込んだ言語構造を変える必要があるでしょう。


 もし次の世代どころか500年、1000年後の人間の幸せを考えるなら、環境をやっている場合ではありません。次の人類の在り方をフェミニストは準備の準備の前の調査研究から始めるべきでしょう。それしか男性社会を打破することはできません。


 その中で女性の良さを再発見する方向に行けないものでしょうか。ファルスに対する子宮であり卵巣です。つまり「母」になれることだと思います。搾取の概念そのものが変わってくる可能性もあります。もともと今の社会を男性の物差しで測らなければ、差別、搾取と思っているものが男女の価値観の位相の差…いや精神構造の差があるのに男性視点で見ているせいでそう見えているだけかもしれませんし。


 そこまで突き詰めて考えたいものです。せめて海外からの思想と価値観の輸入には慎重になりましょう。



追記 それを可能にするのがAIなのかもしれません。無性状態でニュートラルで持続可能な人間像を聞いてみたらどうでしょう。ひょっとしたら「マトリックス」の世界、つまりインナースペースで自分の人生をそれぞれが歩みなさいとなるかもしれません。












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