ウィッチ・ライブ

天音七日生

第一章前編

第1話 ウィッチライブ #ステライブ

【初配信】人間のみなさん、はじめまして!【黒星ステラ/ウィッチライブ】


 この配信の待機画面には、約4万人の視聴者が集まっている。

 配信が始まれば、確実に5万人を超える勢いだった。


 サムネでは黒髪の女の子が、こちらに笑顔を向けている。

 黒髪の長さはロング。瞳の色は青。

 顔全体が見えやすいように、黒と紫のとんがり帽子を浅くかぶっている。

 女の子のイメージカラーはもちろん黒。キャラクターの設定は〈魔女〉。


 私は配信開始のボタンをクリックする。

 新人VTuber【黒星ステラ】のデビュー配信が今、始まった。


「こ、こんステラ~。人間のみなさん、はじめまして!」


 緊張はしていたけど、声はしっかりと出ていた。

 とりあえず、第一関門はクリア。


「ウィッチライブ所属、闇に魅入られし魔女、黒星くろぼしステラです! 新人デビュー配信のトップを務めさせてもらいます!」


 何度見ても、黒星ステラは可愛かった。

 私が右に動けば右に、左に動けば左に、黒髪の女の子が動いてくれる。

 顔を振れば、髪の先までふんわりとなびいてくれる。ウィンクなどの細かい動きもばっちり。

 ガワママ、モデラパパーともに一切不満はない。私にはもったいないぐらい。


 私は配信中に流れるコメントを確認する。

 全て追えてはいないけど、反応は大体同じだった。


○かわいい!!

○はじめまして!

○声可愛いいいい!

○かわいい

○あらかわいい


 第一印象は悪くない感じ。声もガワも褒められていた。

 声が褒められているのは少し意外だったけど、マネージャーさんからは、


『ステラさんならいけますよ!』


 と言われていたので、それが間違っていなかったのだろう。


 コメントの勢いもすごかった。

 視聴者、言い換えればリスナーからの反応で、私は大手事務所からデビューしたのだと、改めて実感した。


「まず、ステラのプロフィールを公開していこうと思います!」


 リスナーに温かく迎えられつつ、私、黒星ステラは自己紹介を続けた。


       * * *


 緊張と興奮、デビュー配信では当たり前の感情だと思う。

 しかし、それとは別に、私は罪悪感も抱いていた。


 私はある意味で不誠実かもしれない。

 リスナーに対して、大きな【】を付いている。


 リスナーは私が嘘を付いていると思っている。

 私もバレバレの嘘をリスナーに伝えている。

 嘘を嘘だと言って伝え、リスナーはその嘘を暗黙の了解として信じてくれているのだ。


 しかし、その嘘は紛れもない【】。

 リスナーは知らない。私がの魔女ではなく、の魔女だということに。


 私は正真正銘の魔女、この世界での名も【ステラ】。

 黒星ステラの【設定バーチャル】は、もう一人のステラの【現実リアル】だ。

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