ダンジョンカートFREEDOM~凶悪アイテム撃ち合うサバイバルレースを「避ける」だけで勝つのは異端ですか?
ぎざくら
第1章 ソウ VS 一次リーグ
Phase.1 凡庸レーサー・ハシルの戦い
第1話 神隠しレース
――「君の人生の主役は、君自身だ」なんて言葉、どこのバカが考えたんだろう。
狙いは、数十メートル前を飛ぶ
ハシルの機体の発射口から、輝く魔力弾が一直線に飛ぶ。
狙いやすい直線コースだった事が幸いし、“
爆発。
白煙が視界を遮る。ハシルは魔力レーダーを見て、自分と敵機体の状態を確認した。
攻撃を当てたはずの敵機が、速度を落とす事無く、相変わらずハシルの前を飛んでいる。
間も無く煙が晴れた。
ハシルが見ると、敵機体には傷一つ付いていなかった。
「チッ」
無意識に、舌打ちが
衝突の直前、背部から配置型の“
「“
自分以外に誰もいないコックピットで、ハシルが
最終カーブへ差し掛かる。
ここでハシルの機体は、追い上げてきた別の敵機体に抜かれた。
機体の速度がかなり速い。カーブへ入る前に“
「舐めやがって……!」
ハシルは苛立ちに歯ぎしりする。「お前の技量じゃ、カーブで抜き返せないだろ?」と、
「喰らえ!」
ハシルは、追尾型の“
通称“
爆発。と同時に、無数の金属片が飛び散った。
――ビンゴだな。
攻撃の命中した機体が、煙を上げながら落下していくのを見ながら、ハシルはカーブを減速しながら通過した。
――あの様子じゃ、もう飛べないだろうな。可哀想に。
最終カーブを抜ければ、その先はすぐにゴールゲートだ。
ハシルは、1位の機体には追いつけなかった。だが、2位でゴールする事ができた。
ゴールし、機体の速度を落としていると、ゴールゲート脇に機体が停まっているのがハシルの目に入った。
機体の周囲には黒服の男が数人、取り囲むように立っている。
じきに機体の搭乗口から、レーサーとおぼしき男が無理矢理、引っ張り出された。
レーサーは「嫌だ、助けてくれ」と言わんばかりに手足をジタバタさせるが、抵抗虚しく、黒服の男達によってどこかへ連行されていった。
――リタイアした奴は、ああなるのか。
ここは、ダンジョンをコースにしてレースをおこなうイベント「
通称“神隠しレース”。
違法レースの大会だ。
大会一次リーグのルールは、以下の通り。
一つ。8人のレーサーでレースをする。
一つ。4位以上は順位に応じた賞金と、機体改造に使える通貨「リワード」を得られる。
一つ。4位以上を4回獲れば、二次リーグへ進出。
一つ。5位以下、もしくは機体破損等によるリタイアとなった時点で、そのレーサーと機体は「煙のように消える」らしい。
月に三度、レース場の近くで「奴隷オークション」が開催される。
ハシルには、友人に騙されて背負わされた借金がある。
そして豆粒程度の「有名になりたい」という野望もあった。
知人の紹介でアルティメット・カップの配信を見て「ちょうどいい」と思い、軽い気持ちで参加した。
参加したら、もう抜けられない。出場辞退も「リタイア」とみなされる。
ハシルは、自分が生きるために他のレーサーを蹴落とす。
観客は事情も知らず、娯楽としてレースを楽しむ。
ハシルは、リワードを得て少しでも強い機体にするため、他のレーサーを撃墜して自分の順位を上げる。
観客は無様に墜落する機体を見て、笑ったり、興奮したりする。
墜落した機体の主が、どうなるかも知らずに。
そこら中に機体の残骸が転がる、撃墜された機体の白煙が上がるコースを、ハシルは走る。
――「君の人生の主役は、君自身だ」なんて言われても、俺はちっとも嬉しくなんかない。
――俺みたいな情けないクズ野郎が主役だなんて、考えたくもないんだ。
<アルティメット・カップ 一次リーグ第1087試合 レース結果(括弧内は賭けレート)>
1位:高田ルーク圭(1.68倍)
2位:庵堂ハシル(3.56倍)
3位:悪・Easy(2.17倍)
4位:四方ライコネン(1.88倍)
――
5位:鈍器根愚(3.14倍)
6位:R.N.(6.33倍)
リタイア(機体損壊):K.歌論(5.12倍)
リタイア(機体損壊):間裏尾マリオ(1.76倍)
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