犬猿の仲の政略結婚なのに、旦那様が別れてくれません。

屋月 トム伽

第1話 犬猿の仲の政略結婚 1


ルギウィス国の王城。緑豊かな庭園へと続く中庭に面した外廊下で、金髪碧眼のアルフェス殿下と小柄な令嬢が話していた。

娘は今から帰宅するのか、デイドレスに薄いピンクのフード付きのマントを羽織っている。


「アルフェス殿下。これで、縁談をお願いしますね」

「何とか探してみるが……気を付けて帰りなさい」

「はい。旅費も助かります」


そう言って、小柄で可愛らしい癒しの魔法で騎士たちに魔法をかけていた娘が、アルフェス殿下ににこりとして言い去っていった。


その後ろ姿を、殿下がため息交じりの困り顔で手を振り見送っていた。


「……アルフェス殿下。今の娘はお知り合いですか?」

「ああ、ウォルトか。彼女を知らないのか? ウォールヘイト伯爵家のティアナだよ」

「あれが、ウォールヘイト伯爵家の……」

「両親が他界してから、伯爵家を存続させるために何とか一人で頑張っているようだが……あの領地は、お前のところの領地とは違い栄えてないからね……没落寸前で、誰も爵位を継ぎたくなくて困っているそうだ。縁談も、あちこちから断られているようでね……だけど、ウォールヘイト伯爵家は、断絶させられないし……」


当主のいない伯爵家をただ一人で守っているといい、アルフェス殿下が気の毒そうに話した。


「そう言えば、何か用事か?」

「いえ、少し……」

「そろそろ、隣国へと出立の時間だろう。飛竜の準備は整っているはずだぞ」

「そうなのですが……彼女に、縁談を探すので?」

「頼まれたからね。ちょうど登城した時に、回復要員が足りずにお願いしたら、その報酬に縁談を頼まれてしまったのだよ。少ない旅費で来たようだから、帰りには旅費もあげたんだけどね」

「殿下、その縁談ですが……」







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