第11話
ようやく厳しいリハビリと
ぼんやり過ごすという苦痛から
解放されて、退院となった。
入院していて気づいたことがあった。
田舎から両親がお見舞いに来た。
大変だろうと小遣いをくれたのもあった。
でもそれ以上にびっくりしたのは、
幼少期から一緒に過ごした祖母が
最近、亡くなっていた。
そろそろ田舎に帰って祖母に会いたいなと
考えていた矢先だった。
共働きの両親に代わって、
兄弟2人を祖母がみてくれた。
公園や児童館に連れてってくれたり、
ぶっ格好だったけど、おやつを一緒に
作ったりして楽しく過ごした。
母親より優しくてなんでもいいよと
受けくれる優しい祖母だった。
俺が、東京に暮らして、
3年は経過していた。
きっと役目は終わったと
思っていたのだろう。
特に大病を患うことなく、
あっという間に亡くなったらしい。
いわゆるピンピンころりというやつか。
元気なうちに介護をされることもなく、
心臓発作で亡くなったらしい。
亡くなる前に会いたかった。
それを聞いて
俺は涙が止まらなかった。
死にたいとか考えている場合じゃなかった。
元気なうちに祖母に会えばよかった。
どうして、会いたい時に会えないんだろう。
どうして、
もう亡くなってしまってるのだろう。
生きているうちにやってあげたいこと
あったのに。
温泉に連れてってあげるとか
大昔に約束した気がした。
祖母に律のお嫁さんは
どんな人かなと言われていた気もした。
まだ小学生だった。
結婚も恋人もなんのことやらと
考える小学生にする話じゃないだろうと
思いながら俺は笑って言っていた。
もういない。
退院してから、
部屋のベッドでぼんやり過ごすことが
多かった。
あんなに病室でぼーとなまけもののように
過ごすのは飽きたというのに、
何をしているんだろう。
仕事は明日から始まるんだ。
窓から差し込む夕陽が綺麗だった。
朝焼けのように良い色していた。
もう、一日が終わってしまう。
猫の鈴の音がどこからか聞こえてくる。
あの猫は、
祖母が可愛がっていた
白い猫じゃないかと思い出す。
さすがに虹色の瞳ではなかった。
鈴の音を頼りに跳ね起きて、
アパートから駆け出した。
やっと重い体を動かすことができた。
裏路地に行くと、
チャリンと鈴だけが聞こえる。
真っ暗な路地を進むと
白く光っている。
別世界に移動したようだ。
後ろを振り返ると来た道と
違う場所だった。
真っ白な空間で
それ以外は、何もない世界だ。
ここはどこだろう。
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