美少女霊能探偵団〜義妹を庇い事故に遭った俺が憑依した小学生女児のママは義妹で、身に覚えないけどパパは俺らしくて、俺はまだ死んでおらず、なぜかTSして美少女になってしまったので、義妹から処女を守りたい〜

めぐすり@『ひきブイ』第2巻発売決定

第1話 天才でツンデレな義妹がヤンデレに至った事故

「この横断歩道はヤバい」


「……また兄さんの霊感ですか。非科学的な」


 毎年行われる家族になった記念日。

 神楽家の両親が再婚のために士道しどう美空みそらを混じえて、顔合わせの食事会の日を記念日にしたのだ。

 毎年この日は家族四人で外食することになっている。

 そのレストランに向かう道中、士道は途中の横断歩道に少女の形をした黒いモヤを見てしまった。

 悪霊だ。

 霊感のない義妹の美空には見えていないみたいだが。


「非科学的で悪いかよ。まだ時間あるし、遠回りしていこうぜ」


「もしかして遠回りが目的ですか? 兄さんはこの可愛くて天才で血の繋がらない義妹である私と少しでも長く一緒に歩きたいと――」


「――そんなわけでねえだろ。ただあの横断歩道は本当にヤバいんだって」


「そんなこと……兄さんのバカッ!」


「あっ! おい待て!」


「ついてこないで! 私と歩きたくないなら兄さんだけ別の道行けばいいじゃない!」


「あーもうっ! なんだよ美空の奴!」


 昔は連れ子同士とは思えないほど仲が良かった兄妹。

 今もこうやって一緒に行動する程度には仲が良い。

 周りから見れば年頃の割で異常なほど仲が良いらしいが、たまに美空が不機嫌になることが士道の悩みの種だった。

 可愛い妹だとは思っているのだが。


 信号は青。

 本来なら安全なはずの横断歩道。

 黒い少女が笑った。

 士道の視界の端で駐車されていたトラックのエンジンがかかる。

 ドライバーは不在なのに。


「美空!」


「なんですか兄さん。一緒に歩きたいなら早く着いてきたらいいんです」


 怒った美空は前しか見ていない。

 そこに急加速しようとして甲高い音を立てるトラックのエンジン音が響く。

 音に反応して美空はトラックに気づき……立ち止まってしまう。

 気がつけば士道の足は駆け出していた。


 美空に迫るトラック。

 そのトラックよりも早く士道の手が届き、美空の背中を突き飛ばした。


「えっ……?」


 ――ギィィィーーーーーバンッ!


「いや……いや! ヤダッ! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」


 そんな悲鳴を聞いて。

 美空が無事だったことに安堵して。

 士道の意識はそこで途絶えた。

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