第43話 取り調べ
メカドの星と国について
元々、“メカド”は星のことを指していた言葉でした。ですが、星の中で戦争が起こり、いくつかの国に割れました。その国の中の一つが自国を“メカド”と名乗ったため、星を指すメカドと国を指すメカドの二つが存在し、他の星にとってややこしい事になっています。
セーマがこれから行くのはメカド(国名)の街です。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「さて、目的を話してもらおうか」
軍のテントの中、セーマは椅子に座った状態で取り調べを受けていた。取り調べを行うのは最初にセーマと会ったのとはまた違う女性である。
「目的と言われましても……僕は遠くから見えた街に行きたかっただけです」
(そういえば、女性しか見てないな。ここは女性しかいない?兵役は女性が担っているのか?)
「嘘は言っていない……ではなぜ街に行きたい?」
「おなかが空いているので食べ物を食べたいです……あと、巨大な歯車とか、煙突が気になるので観光がてら見てみたいです」
「嘘を言ってはいない。……では最後の質問だ。なぜあの山の周辺にいた?」
「えっと……」
(どう答える? どう答えれば嘘だと思われない?)
「答えなければ解放はできん。……嘘はつくなよ? すぐに分かるからな」
「……僕は旅の途中なんです。それで山の上からこの街を見つけて。すごく興味が湧いたので街に行きたかったんです」
「嘘は言っていない。ならば信じよう。ところで、お前はどこから来たんだ?」
「え?」
「旅をする前はどこに居たんだ?」
セーマは必死に頭を回転させる。
(メカドは確か鎖国状態だったはず。「他の星から来ました」なんて言えるわけがない。どう答えれば……そうだ)
「シルトっていう人の所に居ました。その人は軍人なんですが、気を失っているところを助けてくれたんです。それでしばらく一緒に居たんですけど、ぼくだけ別れてここに来ました」
(具体的なことは言わなくても、人の名前を出したら信憑性はある筈。それに、嘘は言っていないから見破られることは無い)
セーマは必死になっていたため、十分怪しい発言をしていることに気が付かなかった。
「…………そうか。観光がしたいのだったな。紹介状を書いてやる。まずはそこでどんな街か聞くがいい」
「ありがとうございます」
やけにあっさりと解放されたことにセーマはどこか釈然としない気持ちになるが、解放されるのであれば文句はない。セーマは紹介状と簡易的な地図を受け取ると、テントから退出して街に向かって歩き始めた。
―――――
―――
―
「あの少年、不思議なことを言うやつだが嘘は言ってなかった。敵ではない。旅の途中で、山の上から街を見た。どこから来たかは答えない。……十中八九あのデカブツの中身だろうな」
「ルメナ様。いかがなさいますか」
「未確認人型飛行物体が飛んでいった方向の山を調べる。山の中に隠してある可能性が高い」
「はっ! では補充が終わり次第捜索に取り掛かります」
「ああ」
(どこの国の物か分からないが、間違いなく兵器。それも機械仕掛けであるのは疑いようがない。あの方も興味を示すだろうが……今は戦時中。街から出ることはできないし、さすがに探そうとはしないだろう)
―――――
―――
―
セーマは街に入る前に、検問を受けていた。
「身分証は?」
「えっと、旅の途中でして……。今は持ってないんです」
「身分証が無いのであれば入れない。今は戦争中だ。出入国は厳しくチェックされる。わかったなら諦めて帰るんだな」
「そこをなんとか……!」
「ダメだ」
セーマはここで思い出す。
「紹介状があるんです。これで入れませんか?」
「紹介状~? 誰のだ、見せてみろ」
セーマは軍の女性からもらった紹介状を渡す。
「なるほど。あれが書いたやつか。門の通行許可申請書もあるな。……ならよし、通っていいぞ」
「ありがとうございます。ところで、この場所ってどんなところですか?」
セーマは地図を指さしながら尋ねる。
「ん?ここは……ジャンク屋だな。と言っても、何でも屋みたいなもんだ。基本的に機械の修理とかしてくれる。だが、その店の奴は変人でな。気に入らねえ奴の物は修理しないって言われてる」
「本当ですか?」
「ああ。何なら修理できないほどに壊されるって噂まである。まあ、機嫌を損ねないように気を付けな」
セーマは門番に礼を言い、不安を抱えたままジャンク屋に向かって歩き始めた。
―――――
―――
―
「うーん、おなかすいたなぁ。一応携行食料は持ってきてるけど変な目で見られそうだし、先に目的地に行った方がいいかな」
香ばしいにおいがセーマの鼻腔をくすぐる。匂ってきた方向に顔を向けると、そこにはパン屋があった。一部がガラス張りであり、おいしそうなパンの数々がそこに並んでいる。
「おいしそうだなぁ……! でもやっぱり、凄い発展してる!って感じは無いなぁ」
セーマは店員がこちらを見ているのに気付いたが、手持ちがないのを思い出し、会釈をしてその場を去る。
「結構活気があるな。……そういえば、ドールってどこにあるんだろ?家の中とかにあるのかな」
「そこのお兄さん! 捕まえてください!」
その声に顔を上げると、セーマに犬が近づいていることに気付く。どうやら声はその後ろから走ってくる女の人が発したようだ。セーマはすぐに姿勢を低くし、抱きしめるようにして犬を捕まえる。
「すみません! ありがとうございます!」
遅れてきた女性は相当走ったのか、息が切れているようだ。
「いえ、これくらい大丈夫ですよ」
セーマは女性に犬を渡す。
「本当にありがとうございました。あ! 良かったらこれどうぞ。ささやかですが、お礼です。……本当にこの子は。一度見てもらった方が良いかしら」
セーマに袋を渡し、女性は去っていく。
(一体何を見てもらうんだろう? けがしてるようには見えなかったけど……。そういえば、お礼って言ってたけど何が入ってるんだろ?中身は……クッキーだ! お腹空いてたし、ちょうどいいや。あの人に感謝しないと)
セーマは少し疑問を覚えたが、クッキーに気を取られ、すぐに忘れてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます