第17話 セーマの才

 こんなに遅れた上で申し訳ないのですが、今後もしばらくは毎日投稿は厳しそうです。最低でも一週間に一回は更新したいと思っているのでこれからもよろしくお願いします!


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(やはり空に逃げようとしましたか…)


 オピスはテンシュカが持っているビームライフルを、バズーカに変える。オピスは再び地面に落ちたクレーエセーマの次の動きを考えていた。


(これで空に逃げても撃ち落とされると思ったはず。ならば次は…)


 オピスの目にこちらへ向かってくる何かを捉えたレーダーが映る。


(やはりセーマ君もまだ子供ですね。彼はアストレアがなければ、戦争に深く関わることのない少年でいられたのでしょうか…)


 テンシュカが、人型のままこちらに来るクレーエにバズーカを放つ。クレーエは手に持ったシールドで受けると負けじとビームライフルを撃ち返し、テンシュカがこれをシールドで受ける。テンシュカとクレーエはにらみ合う形となった。


 クレーエがシールドとビームライフルを手放パージし、ビームソードを両手で構える。


(なるほど。近接戦での真剣勝負というわけですか)


 オピスはテンシュカを操作し、クレーエと同じようにシールドとバズーカを手放パージさせ、ビームソードを構えさせた。


 そのままにらみ合う二機二人




 クレーエが一気に飛び出す。テンシュカは構えたまま、迎え撃つ姿勢だった。


 クレーエとテンシュカのビームソードが交わる。クレーエはその勢いのままテンシュカの背後へ抜けた。オピスは背後に行ったクレーエを撃墜するため後ろへビームソードを薙ぐ。


(いない!?どこに……まさか!)


 テンシュカへと向かってくるミサイル。


(初めからミサイルで攻撃するため?そのためにシールドも捨てさせて…!?)


 ***


(よしっ!うまくいった!)


 セーマはテンシュカの背後へ抜けた後も、クレーエのスピードを殺さずに人型のまま空へ飛び立って振り向き、ミサイルを放つボタンを押した。


 爆発が起きる。


 セーマはふと上を見上げた。


「っ!」


 ビームソードとビームソードがぶつかる。


(さすがはオピスさん…あのミサイルを上に跳んで回避するなんて。さすがに無傷ってわけじゃないけど)


 お互い弾かれるようにして地面に降り立つ。


(多分オピスさんには近距離で勝てない。…ミサイルはあと10秒ぐらいでリロードされる。内蔵ガトリングはテンシュカを撃破しきれないだろうし…変形すれば距離を取れる?いやその前にテンシュカに追いつかれるか…)


 テンシュカが内蔵ガトリングを放つ。


(今だ!)


 クレーエはダメージを受けながらも変形し、テンシュカの反対方向へ進む。


(このまま距離を…)


 クレーエがビームライフルに貫かれる。


「そういえばバズーカしか手放して無いんだった…」


 セーマは暗転したモニターを見ながら思わずそう呟いた。


 ***


(やはり、セーマ君はビームライフルを忘れていたようですね。セーマ君は残り一機ですか。少し張り切りすぎてしまったかもしれませんね)


 オピスはビームライフルの構えを解き、再び岩場へ身を隠す。


(そろそろセーマ君が復活する頃でしょうか…)


 オピスは空を飛んでいるであろうセーマを探す。


(空にクレーエは見えない。地上から?ですがクレーエの人型形態ではここまで来るのにかなり時間がかかる筈…ではポジションを変えましょうか)


 高速で接近してくる反応がレーダーに映る。


(この速度、戦闘機形態?ですがクレーエが空を飛んでいるのは見えなかったはず。見えない状態からここまで近くに?)


 オピスは再び空を見る。


(居ない……まさか!)


 オピスの目に戦闘機形態でクレーエが映る。


(地上付近は岩場のせいで飛行は困難、しかも地上に近付き過ぎれば強制的に人型になる筈。それを全部ギリギリで!?)


 クレーエはミサイルを放ちながら接近する。


(シールドで…)


 しかしテンシュカはもうシールドを持っていない。


 ミサイルの爆発によってバランスを崩したテンシュカは遅れて来るクレーエのビームソードによって真っ二つにされた。




(まさか私がこんな凡ミスをするなんて…ですが同じミスはしません。そしてセーマ君。まさかあんな手段で来るとは、予想を超えてきますね)


 オピスのモニターに風景が映し出される。


(さて。空を飛んでいたら見つけられる。地上ならばこちらが有利。どう出る…)


 空中を旋回していたクレーエがこちらを見つけたのか、地上へ降下する。


(空からの索敵。狙撃警戒の降下。この接近スピードは…)


 再び地上を飛ぶクレーエがミサイルを放つ。テンシュカはバズーカを構えて発射し、爆発を連鎖することでミサイルを無効化する。


 ビームライフルの光が爆煙に穴をあけ、テンシュカに迫る。が、テンシュカはシールドで防ぐ。


(セーマ君は…上っ!)


 テンシュカとクレーエのビームソードがぶつかる。防がれたクレーエは距離を取る。


 再びテンシュカから放たれたバズーカをクレーエは横に転がって回避する。クレーエはテンシュカの方を向くとミサイルをテンシュカとクレーエの中間に向かって放つ。


(煙幕…っ)


 テンシュカに向かって飛んできた何かをビームソードで叩き切る。


(これは…シールド?)


 クレーエがビームソードを構え、全速力でテンシュカに突っ込む。


(っ…狙いが外れましたね。煙幕が効いていたのは私だけではないようです)


 テンシュカはクレーエに押されながらも、ビームソードでクレーエのコックピットを刺し貫く。クレーエはピクリとも動かなくなった。


 ―――――

 ―――

 ―


「いや~負けました!オピスさん強いですね!」


「いえ、セーマ君は初めてなのにあれだけ戦えたのはすごいですよ。負けるかと思いました」


「一機撃破するのが精一杯でしたけどね。そんなことより、まさかオピスさんがテンシュカを使うなんて思いませんでした」


「私は近距離戦もできますので。さて、かなり時間を使ってしまいましたね。本屋へ行きましょうか」


「あ!わすれてた!」


 今度こそセーマはオピスと共に本屋へと行き、“空を飛ぶ英雄”の本と“星の中で眠る王女”の御伽噺が書かれた本を買うことにし、二人そろってナグルファへ帰還するのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 天空の英雄


 空を飛ぶ英雄について書かれた本。この本によると、とある国の王子が力を得て敵国の軍を退け、人知を超える力を持つ存在をも倒したらしい。また、この王子は星の一つを手に入れ、その星で自分の王国を作ったと書かれている。




 星と眠る王女


 今もなお星と共に眠り続けているらしい王女について書かれた本。この本によると、この王女は奇跡を起こすことができ、他人と共感する力も優れ、多くの人に愛されていたらしい。しかし、共感する力が強すぎた結果、星とも共感して星と共に眠りにつくことになったと書かれている。

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