第10話 本来の力

 こちらを向いたもう一機のアストレアともいえる敵機体は、確かにセーマの乗るアストレアと似ているが、その外観は大きく変わっていた。


 セーマのアストレアはほかのカークスと比べ細身・長身であり、その背にある翼のように見える大きなスラスターが特徴的などこか華奢な印象を与える銀灰色の機体なのだが、目の前の機体はセーマのアストレアよりも装甲が厚く太いシルエットなため、見る者に力強い印象を与える。また、セーマはシールドとビームソードを装備しているが、正面の機体はビームが展開している斧槍ハルバードのような武器とアストレアと同じ色のライフルを持っていた。


 そんな敵機に向かってオピスのハルモディアからビームが放たれる。が、敵機はその攻撃を簡単に避け、その顔をハルモディアに向ける。


『厄介だな。まずはあちらから対処するとしよう』


 いまだ繋がっていた通信の声がセーマに届く。


 敵機は背中のスラスターを全開にし、高速で接近する。一瞬で接近戦に持ち込まれることを察知したオピスは、ハルモディアの手から有線式の巨大ビームキャノンを放し、ビームキャノンに取り付けられていたビームソードと小型のビームマシンガンを手に持ち、構える。


 もう一機のアストレアはビームハルバードを上段から振り下ろし、ハルモディアはそれに対してビームソードを振るう。ビームのエネルギーによる力場が発生し、ハルモディアが弾き飛ばされる。


「どうやらパワーは圧倒的に相手が優位なようですね」


 ぽつりとオピスのつぶやきが誰にも聞かれないコックピットに漏れる。


 オピスの機体“ハルモディア”はその背後に延びる有線式巨大ビームキャノンによって長距離支援機だと思われがちだが、その認識は少し違う。ハルモディアはあくまで遠距離にいる相手と戦うときはビームキャノンで戦い、接近してきたときにはビームキャノンに内蔵されている近距離戦用装備で戦う全距離対応機体オールラウンダーだ。さらにはビームキャノンは重力下でも単独で空中に浮くことができ、AIに制御を任せることで精度は落ちるものの、本体は近距離で戦いつつビームキャノンによる攻撃をするといった芸当もできた。


 そんなまさしく万能機と言っても過言ではないハルモディアも、自機よりパワーのある機体に接近されるのは不利である。しかしオピスは自身の練度で十分対応可能だと考えていた。


 弾かれたハルモディアが体勢を立て直している隙に本体から離れたビームキャノンが敵機に射撃をする。それは奇襲のような形だったが、敵機はそれも躱した。


 体勢を立て直したハルモディアが手に持つビームマシンガンで攻撃するが相手は意に介する様子もなく突撃。それを見たオピスはハルモディアのスラスターを使って距離を取るが相手はライフルを構え、射撃。頑張って回避行動をとるが、努力空しくハルモディアのビームマシンガンを持つ左肩に敵機の放ったビームが当たり、肩部装甲が溶かされた上、駆動系が熱の負荷に耐え切れずに小さな爆発を起こす。


 もう一機のアストレアのことで頭がいっぱいだったセーマはハルモディアが中破したことで我に返る。


 オピスは体から離れていく左腕を一瞬見たのち、相手に意識を戻す。目の前に迫る敵機。ビームハルバードをビームソードで受け流し、反撃を試みるが防がれる。オピスはビームキャノンに指示を出し、向かい合っている敵機に横からの射撃を仕掛ける。


 敵機に当たるが、ハルモディアへの被害を抑えるように撃ったのに加え、敵機は咄嗟に回避行動をとっていたらしくダメージは浅い。敵機は厄介だと思ったのか、ハルモディアとビームキャノンが繋がるケーブルを断ち切り、ビームキャノンの本体もビームライフルで破壊した。


「オピスさん!」


 セーマはビームソードを振りかぶりもう一機のアストレアに向かう。


 交差する剣と斧槍。

 負けたのは剣だった。


『セーマ君!』


「オピスさんは下がってください!こいつは俺がやります!」


〈ビームソードの力を引き上げます。〉


 一度弾かれたセーマがもう一度向かう。

 再び交差した剣と斧は同じ結果は示さない。


『やはり貴様の機体はだ』


 セーマのもとに敵機の通信が入る。その声色に驚きは見受けられなかった。


『だが貴様は私ではない。久しぶりに楽しめそうだ』


 一度距離が開く二機。敵はビームライフルを構えて射撃する。セーマは盾で防いだ。


〈ビームライフルの攻撃を受けました。ビームライフルのロックを解除。〉


 セーマはその文字を気にすることはできなかった。


 敵が斧槍を振りかぶって構え、接近する。セーマは対応して構えるがいつまでたっても敵は振ってこない。


(しまった…フェイント!?)


 懐に入れすぎた。アストレアの胴に敵のアストレアの足が突き立てられる。


「ぐぅっ…!」


 コックピットに届く衝撃にセーマのうめき声が漏れる。


『カークス同士の戦闘にあまり慣れていないな?運がよかったな。こいつアストレアは並の攻撃では傷さえつかない。だから狙うならパイロットだ』


(まずい…!)


 眼前に迫るアストレア敵機


 セーマの意識は朦朧としていた。どこかに頭をぶつけたのかもしれない。それさえもわからなかった。


『セーマ!そこをどけろ!』


『仲間か。だが邪魔をするなら撃破するまで』


「アレスさん…?」


 セーマの目にアストレアに突っ込んでいくモートが映った。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 機体紹介


 アストレア(敵機)


 機体各所の装甲が厚いこと以外はセーマの乗るアストレアとほとんど同じ見た目をしている。その背のスラスターは敵を一瞬で自身の間合いに入れ、その手に持つライフルは戦艦さえ落とすことが可能であり、その装甲はハルモディアの持つビームマシンガンで傷つかず、ビームキャノンですら撃破まで至らない。


〈武装〉

 ビームハルバード、ビームライフル


 ※カークスが持つ武装はサイズが違ったりしない限りどんなカークスでも持つことができます。(射撃系武装を使用するには機体と武装の紐付け設定が必要。なお、同じ軍の武装は基本一括で紐付けされている)

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