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「デートなんてしたことが無い」
ホテルの自分の部屋で、本日の服をどれにしようかばらまきながら、自分が今までいかに女子として、可愛い服というものに縁が無かったのかというのを突き付けられていた。
千春が日本にもってきていた服その者が、着られればいいや、という女子としてそれはどうよ、という服から、一様女子だねと言える、スカートや、ワンピースやブラウスなどといったもの。
「後はこれか・・・・」
そう言いながら手に取ったのは、もはやデートと言うより仕事へ行きます、と言われたほうが分かりやすい、タイトスカートと、ワイシャツに赤のカーディガンだった。
これは無い? でもなぁ、とふと、2日前、真也の部屋で友香が風呂に入り、真也が見ていないすきを見て、真也の絵やを物色していた時に見つけたエロ本、そこには、タイトスカートにオーバーニーソックス(白)をはいた女の子が、上半身のシャツのボタンをはずし、色気のある流し目で写る、まさにこれから襲ってくださいというような、そんな姿をした女の子がいっぱいの、タイスとスカートニーソ特集、とかいうエロ本を見たからである。
オーバーニーソが何ぞやと思った千春は、昨日のうちに学校がいりに洋服屋により、一様購入はしてみたが、今までこんな長めのソックスなどは居たことが無いので、自分に似合うのかすら怪しかった。
なので、店員と相談しつつ、どうしたらよいのか、という話をしているときに、追加でソックタッチも進められ、それも購入した。
そもそもソックタッチとは何ぞや、と千春も思ったので店員に聞くと、少し驚かれもしたが、どうやらはいているソックスを一定の場所や位置に自然に固定でき、ずり落ちたりしないようにする女子必須アイテムとの事だった。
確かに、ソックスは動いていればズレるので、こういう細かいアイテムは見栄えなどを気にする女子としてはもっていて損はないだろう。
なんか微妙に商売の匂いがしなくはないが、そんな事は今は関係ない。
どうしても、彼の好みに合わせ、可愛いと思わせ、自分に意識をさせて、3年前の告白をやり直しとはいかないまでも、私の気持ちを変えに伝えなければならない、それにはやはり雰囲気作りは非常に重要であると言えた。
「よし、決めた」
「何決めたのか知らないけど、何それ、どこのОLなの? 色気は? 可愛さは?」
「お、お母さん?!」
いつから覗いていたのか、春奈が、我が娘ながら情けないと言わんばかりに頭に片手を当てながら、やれやれという様に娘に近ずくと、その長い髪に触れ。
「まずこれからね。それと、なんでソレなの?」
「えっとぉ、シー君の部屋のエロ本でぇ」
まで言ってはっと口を慌てて抑えるが時すでに遅く、春奈の耳には入っていたようなのだが、しかしその顔はいつもの軽い感じはなく、むしろ険しい表情をしていた。
おもむろにワイシャツを手に取ると。
「これが可愛くないのよねぇ。ああ、そうか」
「え、何、ちょっとぉ。きゃぁあああ」
春奈は娘におもむろに近づくと、娘の服をはぎ取った。
「やっぱりぃ・・・ちょっと待ってなさい」
何がやっぱりなのかさっぱりわからない千春だが、大変難しい顔をして部屋を出て行った、そして3分ぐらいで戻ってきた。
「これと、これとぉ・・・・えっとあとこれか」
そう言って並んだのは新品のブラと、ショーツ、さらに少しフリルのついたワイシャツに近そうな白のシャツ、それから緑のチェック柄ミニプリーツスカートだった。
「多分だけど、タイトスカート好きなんだろうが、ニーソだと思うわよお母さん」
「はぁ? って過去の下着なに?」
「え、そらぁ娘の勝負の日よ。見られてもいい白のフリルのついたブラに、花柄の白のショーツよ」
「え、いや、見せないし!」
「なに言ってるの。見えた時に恥ずかしくない下着をつける、女性としてのマナーなのよ、それにもし見えてみなさい、ソレにときめくかもしれないのよ」
「お、お母さんは何を言ってるの?!」
「本気で意中の男性を落としたいなら、全部に気を配るのは当り前よ。お父さんはそうやって私に落とされたんだから!」
ドタドタと何かが倒れる音が、続いて、オイこら娘が誤解するだろ止めないか! という叫びにも似た声がドア越しから聞こえてきた。
どうやら本当に母にそうやって落とされたようだ。
しかし、つまりは実体験で成功例という事になる。
千春は生唾を飲み、母を見ると、母はサイズアップをし満面の笑みと白い歯を娘に見せつけてきた。
自身で考えていてもらちが明かず、現在時刻はすでに9時を少し回っており、駅前に近いホテルに居るとはいえ、そろそろ時間的余裕もなくなってきていた。
「あの、プリーツスカートの色なんだけど・・・なんで緑?」
「正確には少し紺に近いやつね。いくつか買ってあったのだけど、白のオーバーニーソックスだと、これが映えるんじゃないかしら?」
さすがは自分よりも年上、色々配慮がなされている。
そう思いつつ、アレだけ怒った娘にここまでしてくれる母に、嬉しさのあまり泣きそうになった。
「ほらぁ、こんな事で感動して泣いてると、お化粧できないでしょ。髪もあなたは長いのだから、サイドダウンにして、少し大人っぽい感じにするわよ」
言うが早いか、早速着替えるように指示が飛び、千春は、慌てて、母の言うとおりにあれやこれやと、着替えを始めたのだった。
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