28
放課後、自宅に帰ってきた真也は、ドット疲れた体をベットに投げ捨てる様に倒れ込んだ。
ドスン、という音ともに、ほこりが舞うのと同時に、友香特有の匂いなのだろうか、あの甘い香りが鼻を付き、心を揺さぶる。
完全に布団に匂いが付いてしまった。一度干さないとなぁと、思うものの、この安心する匂いを捨ててしまうのは酷く惜しい気がして、真也は悩むが、はたと気が付く、自分は今何を考えたんだと。
ヤバいと思い、立ち上がる、すると立ち上がった足元に何か固いものがあったのだろう、転びそうになり、慌てて足元を見る。
幸いにも踏んだものが硬かったのだろう、特に壊れたりしてないと確認はできたが、それは自分の持ち物ではなく、友香のものだという事にすぐに気が付いた。
そこに落ちていたのは慌てて友香がふんだくった巾着袋で、真也としては気になっていたものだった。
まだ彼女は帰ってきてはいない、というか、今日も泊まるのかどうなのかよくわからないが、今朝がた、泊まりの荷物を学校のカバンと一緒に持って、学校に行こうとしていたので真也が慌てて止めたのだ。
流石にそんな大荷物もって学校に登校した日には、あらぬ誤解がたつと。
そんなわけで、彼女の荷物はまだ真也のマンションにそのままである。
おそらく今朝、着替えをしたときにでも落としたのだろう。
悪いとは思いつつ、好奇心に勝てず巾着の口を開け、中のものを取り出す。
「うん、なんか見覚えが・・・」
そこから筒状のソレが出てきて、真也はなんだこれかぁ、と思い次の瞬間固まった。
「は、はぁ?!」
いやいやそんなわけないだろ、アレだぞあれ。なぜここにある、というか自分のじゃないよな?
と慌てて、秘蔵場所を確認し、ある事に安堵するが、それは一瞬で、再び取り乱す。
「な、何かまだあるぞ」
巾着袋の中、まだ何かあたる感触があり、それも取り出そうとして手を突っ込み、その形状を手で確かめた瞬間、分かってしまった。
だが、万が一にもソレではないという事もあるだろう、そう思い、半分取り出したところで、またも見覚えのある、うるお・・、そこでそっと巾着袋に戻し、さらにさきほどの筒状の固いものに無色透明な液体の入った物もそっと戻し、巾着袋を、適当な場所に置いた。
そして、自室に戻りベットに倒れ込んだ次の瞬間、狂ったように枕に頭を打ち付け始めた。
「う、うぉぉぉぉ、くぅぅ、うぉぉ」
もはや言葉になっていない声で、真也は繰り返し頭を打ち続ける。
え、ナニコレ、どういう事、彼女そのつもりで。いやでも、それならなぜ隠した。恥ずかしかったからいや違う、彼女の性格上それは無くはないが、なんか違う気がする。でもなぜ、何故なんだ!
混乱する頭で必死に考えるが、答えを知っている人物はまだ帰ってこず、悶々とした気持ちで、真也はベットに横たわる。
だいぶ暴れたせいで、先ほどよりも友香の香りが部屋に充満してしまい、そのせいで、今朝目覚めた時の友香の寝顔が脳裏をよぎる。
「くぅ、待て俺よ。好きだって言われて、意識し始めて、近くで無防備な姿を見たからほれちゃったなんて、マジで恥ずかしいぞこれ。いや、そもそも俺はまだほれてない・・・と思うけど何、え、何どうなってんの?!」
自分の心情が全く分からず混乱の一途をたどる真也。
胸に抱くこの締め付けられるような、切ないような伊東市異様な感覚には覚えがあり、それが恋であるとは流石に自分でもわかったが、そんな事があるものなのかと、どこかで自分の心境の変化を納得できない自分が居た。
分からない、俺が彼女を・・・好きになったのか?
誰からも答えはなく、ただ、体が熱を帯びるのを肌で感じながら、自分はどうしてしまったのだろうかと、天井を見上げなげる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます