19
はぁ、やっと家だぁ。
真也の自宅マンションに付き、心の底から千春はため息をついてた。
真也が自宅に戻り、司書室に残された千春と友香だったが、主に千春は、今回の件でこってりと静流に絞られ、精魂尽き果てていた。
あらかじめ今朝のうちに預かっていた合鍵にて、玄関のドアを開けようと鍵を差し、回す、だがなぜか鍵が開いたままだったのか、右に回しても軽く、スッと半回りしたので、鍵かけ忘れたのかと思い、そのまま抜いて、ドアを開く。
確かにかけ忘れていたようで、あっさりとドアは開いた。
どうやら相当疲れていたのは、自分だけではなかったのだと、失笑する。
もとはと言えば自分が彼の負担になるようなことばかりしているのだ、良くないとはいえ、それでも笑みがこぼれてしまった。
「まだ、寝てるのかなぁ?」
足音に気を付けながら、狭く短い廊下を進み、リビングへ出る、リビングにはだれもおらず、そっと真也の寝室を覗くと、制服姿のまま、ベットで丸まっている真也が目に留まった。
制服を脱ぐことなく、そのままベットに倒れ込んだのだろう。
千春はそっと起こさない様に近寄り、彼のすぐ近くに腰を下ろし、幼馴染の顔を見つめる。
寝たからなのだろうか、朝よりも血色がよく、目の下にあったクマも取れていた。
そのことに安堵し、ほっと胸をなでおろす。
もとはと言えば、千春が考えなしに行動したことによって、真也がこのような状況になったのだと言えなくもない。
「ホント、昔から変わらないわね。私が困ってると、なんよかんよ、文句言いつつもしっかり助けてくれて、守ってくれる」
そっと、千春は真也の頬に手を添える。
少しくすぐったそうにするが、起きる気配はない。
このままキスしてしまいたい、そんな衝動にかられ、頭の中ではすでに、真也の首リルに自身の唇を重ね、心を満たしている妄想がめぐっているが、そんな事、大好きだと言葉にして直接本人に言う事すらできない、そんな臆病な千春にはとても無理だった。
「あったかぁい」
3年間求め続けた温もりがそこにあり、触れているだけで鼓動高鳴り、心を温かい気持ちで満たしていく。
改めて、自分はこの人が好きなのだとそう思った。
「おい、何してる」
「へ? ひゃぁふぁっ!」
気が付くと、彼の目は見開かれており、まっすぐに千春を見ていた。
起きたことに気が付かず、声をかけ垂れたことにより、大慌てで、真也から距離を取った。
夢を見ていた。
幼いころの、幼馴染との甘く楽しい夢を。
そんな夢うつつの中、玄関が開かれ、ドアが閉まる音が聞こえる。
誰か帰ってきたなぁ、とまだ覚醒しきってない頭でぼんやりと思考を開始する。
そんな中、さらに自室のドアが開き誰かが入ってくる。
この気配は、よく知っている、おそらく千春だろう、そう真也は目星をつけ、アイツならヘタレだし、何もすまい、そうたかをくくっていたが、思いがけず、何かが頬に触れる。
一瞬飛び起きそうになるが、それがほんのりと暖かく、夏も終わりのこの時期としては少し心地よく感じてしまい、このままでもいいかという気にさせていた。
「(文句言いつつしっかり助けてくれて、守ってくれる)」
そんな声が聞こえ、真也は思わずうっすらと目を開ける。
そこには、とても愛おしいそうに、自分に手を伸ばし頬を撫でる幼馴染の姿があり。
思わず、胸が高鳴る。
そんな中、目を細め、真也の温もりを感じながら(あったかぁい)などとうるんだ瞳で言われたものだから、これ以上はやばいと思い、完全に目を見開き、声をかけたのだった。
危なかったと思った。このまままたこいつに恋してしまうのではないかと、だが、それは彼の中では、許されるべきものではなかったし、許してはいけないと思っていることの一つでもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます