第4話
「で、どうだったんだ?」
翌日、朝のホームルームが終わり、1限目が終わったところで、悪友がソワソワした感じで真也に詰め寄ってきた。
ソワソワしていたのは彼だけでなく、クラス全員が、真也が昨日下級生に呼び出されていたことは知られているため、誰もかれもが、その結末に少なからず興味を示していた。
「何が?」
正直あまり答えたくはないとは真也自身思っていたが、和人が気に来たことで、教室が一斉に静寂に包まれた。
おいおい勘弁してくれぇ。心の中で困惑しながらも、表情には出さないように気を付けながら、何でもない事の様に言うが、悪友が見逃してくれないらしく。
「そうかそうかぁ。可愛い下級生を泣かせたかぁ」
「泣かせてない!」
「ならなぜ言えない」
「黙秘権があると思うのだが?」
「いやいやぁ、旦那ぁ。校内放送ですぜ、全員聞いてるんですぜ。あいまいな答えは誰も求めていない」
と言って、和人は手を皆に広げる様に、盛大に真也の視線が向くよう誘導する。
もちろん釣られて見れば、皆、期待と不安、そして何より興奮したように、様々な顔があり、中には聞いていませんよぉ、という振りをしつつも、しっかりと耳と視線をチラチラとこちらに向けているものまでおり、どういうわけだが休み時間にもかかわらず、誰一人としてこの教室から出ていないのが見て取れた。
勘弁して本当に。
「あー。その、お友達から」
「はぁ?え、なに?」
「いや、だからな。俺はそもそも、彼女を知らん。知らん相手とさぁ付き合え。とかできるわけないだろ?」
同意を求める様にそういうが。
やれやれぇ、あきれてものが言えない。と言わんばかりに頭を抱えた悪友が。
「良いか。据え膳だぞ! 食わないのか? 男かお前!」
「言いたいことは分かったぞ馬鹿な親友よ。見ろ」
「はぁ?え・・・」
男とは馬鹿な生き物で、時として時と場合を考えず、思うままを発現する事が多々ある、真也は、そんな親友を好ましいとは思うが、それと同時に愚か者だとも思ったので、和也に周りを見るよう促すと、今の話を聞いていた女子生徒ほぼすべてから軽蔑のまなざしが向けられていた。
「お友達からにしたんだぁ」
話を聞いて、昨日からかかわりがある宮下さんが、安堵した様に胸をなでおろしながら近づいてきた。
「宮下さんか。まぁ、知らんのにいきなりは付き合えないし。本人と話してこういう形に落ち着いた」
「へぇ。案外紳士だね。そこのアホと違って」
宮下さんは、軽蔑のまなざしを和人に向けるが。
「男として当然だろ。女の子が自分に好意を向けてくれてんだぞ、その期待にこたえなくてどうするんだ!」
熱弁を述べる和人の意見も最もだが、だからと言って知り合いでもない相手といきなり恋仲になれというのは、相当にハードルが高い気はする。
「地雷女だったらどうするの。神谷は?」
「それはそれ、これはこれだ!」
「つまり、捨てるんだ?」
「言い方を考えてくれ宮下。それだと俺がクズに認定されるだろ?」
どうやらこれ以上は昨日の事について質問や、問いだたされることはなさそうだと真也は思い、胸をなでおろす。
真也はこれから始まるであろう、彼女候補の女の子との甘いやり取りがあるかもしれないという事に、若干ながら胸躍らせながら、期待に胸を膨らませ、顔に出ない様にしながら内心で割と前向きにこんな青春も良いなぁと思っていた。
「なんでだ、なんで居るんだ」
「ヤッホー、真也久しぶり」
翌日の朝礼で、転校生が居るという話になり、現れた事物を見て、思わず誰の目もはばからず立ち上がり、教団に教師と一緒にたつ女性を見て自然と口が開き、真也は現実のむごさを痛感した。
そこに居たのは、幼馴染であり、真也の初恋の相手であり、初の失恋の相手佐藤 千春がそこに居た。
昨日の余韻はどこへやら、彼の頭には、絶望と過去からの淡い恋心と、失恋の時に感じた胸を締め付けられるような、感情の嵐に襲われており、先生の静止や、クラスメイトのざわめきなど全く耳に入ってこなかった。
ただそこに居る、美少女幼馴染が、悪魔の使いなのではないかと問いだたしたい気分でいっぱいになっていた。
ああ神様よ、覚えてろよ。と、心の中で悪態を苦のが精いっぱいだったのは言うまでもない。
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