第8話
一週間後……
「…という訳で魔族退治が完了しました。」
「…!ありがとうございます!」
エルザはケインへと顔を近づける。
「あ、報酬ですよね…。はい…ここに…。」
「……その…一つお聴きしたいんですが…」
「え?」
「あんた…父親殺した?」
「……!」
突如冷酷に言い放ったケインに、エルザは後ずさる。
「ウチには色々と特別なルートやら人脈やらを持ってる魔法医術師がいるんだが…病院のデータを調べさせて貰った。あんたが病院に入室した日と父親の病状が悪化した日を比べると…必ずあんたが入室した日の2日以内に病状が悪化している。余りにも都合が良いと思わないか?」
「そんなのは偶然でしょ?!大体どうやって…」
「君は父親が魔堰蝋症で死んだと言っていた。そしてそれ自体は本当だった。だが…魔堰蝋症は人為的に起こせるんだよ。」
クレアの言葉にエルザは目を見開く。
「魔力神経に大きく影響を及ぼせるようなもの…例えば魔族の魔力なんかを体に直接入れるとかね?君…監視カメラとかの死角をついて注射でもしたんじゃないの?元々君の父が入院した理由は疲労だったし…。疲労からくる病気の一つのこれは違和感を出来るだけ少なくできる。と言うか他の病気じゃ手に入れるルートが難しすぎるしね。魔堰蝋症は発見が難しいから死亡率も高い…発見された時点で重病でも違和感が残りにくいはずだ。」
「そんなのはなんとでも言える!私はやってない!」
「そもそもあんたが案内した工場だって…父親はずっとそこの色々な金を滞納していた。そんな状況で手続きを済ませようと言うのはおかしい。色々片付いてからするだろうに。それに…魔族らしい存在の確認は一切近隣の住民からは確認できなかった。住人から怖がられているとは言え、あれほどの数と魔力だと一般人にも感知できる。それはつまり…つい数日…いや下手したら数時間前に魔族が来たんじゃないか?」
「……」
「俺らが考えたシナリオは…父親の死亡保険及び魔法資格のある人間の死後に出される返礼金を狙って父親を殺そうとした。そこで人為的に起こせて違和感なくできる魔堰蝋症を選んだ。そして魔族に情報をつかんだあんたはあの魔族達に詰め寄り、俺たちを誘き出す事を条件に、魔族たちの魔力を提供してもらった…そう言う感じだ。それと…俺が殺した魔族が『あの女を黙って殺してりゃ』と言ったんだ。あの女ってのはアンタのことなんじゃないかと思うんだけど…。」
「……!……父は家にも帰らず…仕事ばかりで…母は最終的に病を患って死にました。母が死んだ時にさえ父は来なかった……!そして父が入院した時…これはチャンスだと…思いました。経済的にも出てくる金も必要でした。でも…ただただ父が憎かった。」
先程まで話を聞かずにただ立っていたレドは、エルザの話に耳を傾け始めた。
「でも…父は死ぬ瞬間に…愛してるだなんて言ったんです…私に…!私は…もうどうしたら良いのか…」
「俺たちが怒ってるのはな…あんたが嘘をついた事だ。……別にあんたを咎めようなんて思いはしない。俺らだってやってる事は若干グレーだし。もしアンタが償いたいならさ…苦しんで生きろ。父は生きていて欲しい筈だ。ならそれを実行に移せ。それだけだよ。」
「……はい。」
エルザはしばらく泣き続けていた。
国公に連行される中、彼女はケインにお辞儀した。
「…ありがとうございました。また、色々やり直します。」
「……はい。それじゃあまた。」
「ええ。」
エルザは満足げな表情で連行されて行った。
「また連中だ。」
「今度は何をしでかしたんだ…?」
国公の魔道士たちは軽蔑した表情で彼らを見ていた。
「フーッ……寝よ。」
ケインはそれらを無視して扉を閉める。
「私は部屋に戻るよ。シュタイン氏は…帰ったのか。」
エルザは車内でただ呆然と座り込んでいた。自分は確実に重罪だろう。そう考えながら真っ直ぐ前を向いていた。が、その瞬間、彼女の身体中から大量の棘が出現し、車内全てを覆い尽くした。コントロールを失った車は道路で回転し、前の車に追突する。身体中から棘が露出したエルザは既に息をしていていなかった。
「例の女の人間は始末した。……仲間を2人失うとは。」
「ダメよ思い詰めては……ここからよアタシたちは。」
ビルの屋上で2体の魔族はそう会話した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます