歩いていくと、ようやく世界に変化がひとつ訪れた。遠くにぼんやりと光る白い色が見えた。わたしはその白い光に向かって歩いて行った。するとそれがだんだんと小さな建物であることがわかった。

 それは教会だった。見覚えのある小さな教会。すぐ近くまで行ってわたしは足を止めた。なんだかすごく懐かしい。あのころのままだ。教会の大きな扉も。白い壁も。小さな階段も。教会の周囲に咲いている花たちも。十字架の上にある鐘も。全部が全部。あのころのままだった。違うのはあなたがわたしのとなりにいないことだけだった。ふと気がつくとわたしは白いドレスを着ていた。真っ白なとてもわたしが買うことができなそうな豪華なドレス。それはわたしたちの思い出のわたしがあの日にきていたウェディングドレスだった。わたしは嬉しくなってその場でひとりくるりと回ってみた。

 綺麗だよ。とても綺麗だ。

 あのときのあなたの声が聞こえる。

 ありがとう。

 わたしはそのままもう一度歩き始めて教会の扉の前まで移動する。履いている白い小さな靴がきつくて少しだけあのときよりも歩きずらいと思った。

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