親友を裏切ってしまった村娘は、親友を助け出すついでに世界最強になってしまいます

コンタロ

私、親友を見捨てました

 陽が落ちた村の外れにヒイロと言う少女とアシュと言う少女が二人。親には陽が落ちたら村の外に行ってはならないと口酸っぱく言われていた。

 しかし駄目だと言われたらやりたくなってしまうのが人間の性である。


 これはちょっとした肝試しである。二人で村の近くにある森のへ入り少ししたら家に帰ろうと言うもの。


「ヒーちゃん何だかワクワクするね!」


 ウェーブのかかった栗色の髪を腰の辺りまで伸ばしたアメジストの様な瞳を持つ私の親友アシュは、夏であるにも関わらず肌寒い夜にその身を震わせながら言った。


「シューちゃん、お父さんとお母さんには内緒だからね?」

「大丈夫!ヒーちゃんと遊ぶのに夢中になちゃったって言うから」


 私とアシュは小さく笑い会ってそのまま歩みを進めていく。

 森へ近づくにつれ周りの草木の茂ってくる。それに伴って辺りの不気味さも比例して増していき、それは何か悪い物でも出るのではないかと私達の心を揺さぶって来るのだ。そのスリルが堪らない。


 暫く歩いて森に入った私達はこの辺りで引き返そうと足を止める。

 2人揃って辺りを静かに見渡すと風に揺られ擦れ合う草や木の葉の音、それに鳥の無く声がただ空に響くのみ。


「そろそろ帰ろっか」


 私がそう言った時、ふと私達のものでは無い足音が聞こえた。


「こんな時間にお嬢ちゃん達は何してるのかな?」

「っ……!?」

 

 木の陰から出てきたのは身なりからして盗賊。


 まずいと思った私は咄嗟にアシュの手を引いて逃げようと男と反対の方向に駆け出そうとする。

 しかし駆け出した方向からもまた別の盗賊が現れ、その度方向を変えようとするがその都度木の陰から男が現れる。


 逃げ場を失ってしまった私達に男達はジリジリと距離を詰めてくる。

 恐怖により震えるアシュの手を取りどうにか逃げる作を考えようとするが、恐怖が勝るこの状況では全ての思考が空回りするだけだ。 


 結局捕まってしまった私達はそれぞれ別の獣でも捕らえておくような小さな檻に押し込まれる。


 暫くして盗賊達は焚き火を囲んで酒を飲み始める。


「思いもよらない収穫だな。こいつらいくらで売れるかな?」

「まだ若いし、見た目も申し分ない。相当な額になるんじゃねぇか?」


 幼い私達にはそんな会話の意味は理解出来なかったが、少なくとも良いようになる筈も無さそうな会話である。


 様子を見ていると盗賊達はその場で横になり眠り始めた。


 頃合を見図り私は髪飾りを外してそれに着いている針金を伸ばしていき檻に着いている南京錠の穴に挿し込んだ。


 ピッキングの技術はアシュとイタズラをする為に磨いたスキルだ。まさかこんな時に役に立つなんて思いもしていなかった。


 音を出さないようにゆっくりと丁寧に針金を動かす。するとガチャリと手に鍵が開いた感覚がしっかりと伝わる。

 そして扉もまた音を立てないようにゆっくりと開き次はアシュの番だ。

 アシュには立てた人差し指を口元に運んでジェスチャーで静かにするように訴えかける。

 コクリと首を縦に振るアシュを見てまた南京錠に針金を差し込む。


 無事2人が檻から抜け出し、後は気付かれないようにこの場を去るだけだ。


 足場に気を付けつつ足を動かす私達だったが、焚き火の方からさっきまでいた盗賊達の中には無かった声がする。


「ああ?何だこいつらもう寝ちまったのか」


 その声に焦ったアシュが足元にある小枝を折ってしまう。


「ん?」


 男は音がした方角、私達の方へと視線を動かす。


「おやあ?足の着いた金が逃げようとしてる」


 男はこちらへ走って追いかけてくる。逃げようとアシュを引っ張るが、腰が抜けたのかアシュは動こうとしない。


 あっという間にやってきた男にアシュが捕まってしまう。

 ギリギリの所で男の手を避けた私はまた捕まってしまう事を恐れその場から走り出した。

 アシュを逃がすまいと捕えている男は二人共を逃がしてしまう事を避けて私を追いかけてくる事は無かった。


 走りながらちらりと後ろを振り返ると私に向かって並みだを流しながら手を伸ばすアシュの姿がある。


 私だってアシュを置いていくのは嫌なんだ。助けたい。それでもまた捕まってしまう恐怖の方が大きかった。


 森の広場を抜け山道を駆け下り、村へ向かう。怖くて、悔しくてひたすらに泣きながら。


 そして村へ帰ってきた私はアシュが盗賊に捕えられた事を大人に伝える事が怖かった。本来なら伝えるべき事だ。私が怒られればアシュを救えるかもしれないのに、自分が助かる事しか今は考えられなかった。


 帰るのが遅れた事の良い訳の為に落ちていた岩を自分の足に撃ち付けて怪我をする。


 家に帰った私は両親に嘘をついた。それを信じて両親は私に優しい言葉を投げかけてくる。しかしその温かさも今の私には1ミリすらも届かないのであった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 少年の名はジグー・バロスト。この村の村長の一人息子でいづれは彼も村長になる人間である。


 夏であるにも関わらず身を震わせるようなこの夜、彼は眠れずにいた。


 気を紛れさせようとボーっと窓から外を眺めていた時である。村の外から一人の少女が泣きじゃくりながら走って来る。

 外で暫く右往左往としていた彼女は突然地面に落ちていた拳大の石を持って自分の足に打ち付け始めた。


「な、何を!?」


 ジグーは困惑した。目を凝らしたその先に居る少女はストレートの黒髪を腰まで伸ばした、緋色の瞳をした少女、ヒイロ・フロシスだ。


 しかしジグーは彼女の異様な雰囲気に気付く。何かに怯えている様であり、石を膝へ打ち付けるその表情はどこか自分を戒めるようでもあった。


 そして翌日アシュが行方不明になったと騒ぎが起きる。


 昨日の事を思い出し悟ったジグーはこの村でたった一人、ヒイロの秘密を知る人物となるのであった。



〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 かなり書き直しました。読んでくれてた方はごめんなさい。そして初めて読んでくれた方はありがとう!

 相変わらずマイペースに更新していこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします!!!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る